ある日の<ロウ・オブ・ザ・ジャングル>
(=ↀωↀ=)<作者が本編のコメディ不足に飢えて書いたSS
(=ↀωↀ=)<戦争編の店舗特典SSにしようかとおもったけど
(=ↀωↀ=)<「それだと再来年になるな」と思ったので取っておかずに出します
(=ↀωↀ=)<なお、製作スケジュールの都合で次巻は十月予定です
■某月某日 皇都・<パレス・ノクターン>
皇国第三位クラン、<LotJ>。
主に遊技派や報酬目当ての傭兵が戦争時の身の置き場として所属するクランであり、皇国で最も多くの超級職を抱えるクランとしても知られている。
彼らの本拠地であるパレスはかつて大貴族の経営する退廃的な遊興の場であったために設備が整っており、中には当然のように大浴場も備えている。
かつてはいかがわしい目的で使われた設備ではあるものの、今はリフォームを経て、男性用女性用に区別されて普通に風呂として使われている。
「やはりこの問題も含めて区別するべきではないのかぁ……?」
「待ってほしいでやんす。それはオーナーの強みを消す形になって、もしものときに……」
さて、そんなリフォーム後の大浴場。その手前に作られた談話室……観光地のホテルなどによくあるマッサージチェアなども置かれたスペースに、今は数人のメンバーが集まっていた。
モヒカン・エリートやドミンゴス、他にも準<超級>としてクランでも有力者として知られた面々が、いずれも真剣な顔で何かを思い悩んでいる。
「コーヒー牛乳って甘さと苦さが混ざってなんか苦手だな……飲むけれど」
その中心にいるのはいつも通り……いつも以上にボンヤリした顔のカタだ。
面倒くささが極まって平常時より思考を閉じているパターンである。
「なんやなんや、こんなところでむさ苦しい顔つき合わせよって」
「ガンドールかぁ……」
そのとき、顔を突き合わせていた幹部達に、大浴場で入浴しようとやってきたガンドールが声を掛けた。
最近加わった傭兵ポジションのガンドールからしてみれば、幹部クラスが相談事をするにしてもこんなところに集まっている理由が分からない。
重要な会議ならちゃんと会議室に類する部屋はあるのだから。
「どないしたんやこの有り様。強面が集まっとるせいでサウナより暑苦しいわ」
「ぬぅぅ……俺達は重大な問題に気づいてしまったのだぁ」
「そうでやんすね、盲点でやした」
「実際今までは気にしてなかったんですよね……」
実力ではオーナーに次ぐと言われるドミンゴスが唸り、クランの知恵者筆頭であるエリートや他の準<超級>もそれを肯定する。
「なんや、深刻そうやな……」
もしやこのクランの運営に関する重大な欠陥でも見つかってしまったのかと、ガンドールは戦々恐々とする。
……まぁ、基本的にどんぶり勘定と大雑把な方針で運営されているクランなので問題だらけではあるのだが。
「さっき、この面子で風呂に入ったんでやんす」
「仲がええんやな。誘えや」
なぜ風呂の話から入るのかは疑問だが、ガンドールはとりあえず聞き続ける。
あとナチュラルに仲間外れにされたことは普通に少し拗ねた。
「アソコの長さを比べて勝ち負けを競ったりしやしたね」
「クックック、男の戦いだったぜぇ」
「修学旅行を思い出しましたよ」
ガンドールは『アバターなんやからサイズ弄れるやろ』と考えたが、わざわざ股間のサイズを弄るプレイヤーを想像したら悲しくなったのでツッコまなかった。
「ちやみにオーナーは我関せずで滝湯に打たれながらぼんやり眺めてましたね」
「オーナーがそこで競い始めてたらビビるわ。キャラ崩壊ひどすぎるやろ」
あまりに想像がつかずにガンドールはツッコミを入れ、他のメンバーも頷く。
エリートだけは内心で『人格は既に一回壊れていますけどね……』と思ったが口には出さなかった。
「しかしなぁ、そのときにオーナーの視線で気づいてしまったのだぁ」
『え? 何のカミングアウトはじまるん?』とガンドールに謎の緊張が生まれる。
そうして、ドミンゴスは言う。
「――メイデン持ちの<マスター>と一緒に風呂に入ると混浴になるのだろうか、と」
『面白い』/『くだらねえ』。
ガンドールの脳裏に相反するワードが同時に浮かんだ。
「いや、紋章の中におるならセーフやろ……」
「でもそれって覗き見されてるのに近くないですか?」
「どういう自意識過剰や!?」
「女子ならともかく男が見られて困るもんちゃうやろ!」とガンドールは突っ込む。
「ガンドールの旦那、昔は男だから見られてもセーフが通用していやした。……だが、今は違う!(ギュッ)」
「何でK先生の真似しよったん?」
モヒカン・エリートの愛読書は医療系漫画全般であった。
「ああ……。まぁ男でも裸の需要はあんだろうよぉ。この前、皇都の同人サークルでうちのメンバーがカップリングされてたしなぁ……。具体的にはオーナーとエリート」
「初耳なんですが!?」
「食糧危機の割に創作のバイタリティだけ突き抜けてへんかこの国?」
エリートが素の口調で驚愕し、ガンドールは呆れたようにツッコんだ。
なお、それらは主に<叡智の三角>を筆頭とした生産系クランのせいである。
科学技術が発展した国という前振りのせいか開始時点で妙に生産に有利な<エンブリオ>の持ち主が多く集まり、中には出版や製本に関わる者も複数いるのだ。
「ちゅーか、混浴云々言うならメイデン持ちの男よりアポストル持ちの女の方があかんのとちゃうか?」
「「「たしかに」」」
<エンブリオ>とはいえ女湯に男が混ざってしまっている。
余談だが、<デス・ピリオド>のサンダルフォンは普通に外で待つ子である。
「まあ、アポストル持ちはそもそもほとんどいないでやんすしね。うちも一人だけですし」
「ん? <LotJ>におったか?」
「……あー、勘違いしてやした。すいやせん」
そうして、話題が広がってしまったことで徐々に話が横道に逸れ始める。
「そもそも混浴ならまだしもメイデンやアポストルの<マスター>が深いコミュニケーションしたら、それは実質3[警告音]か衆人環視プレイになるのでは?」
「ガードナーの時点で……」
「知能高い従魔連れてる時点で……」
「……今気づいたけど女アバターで始めてたら女湯覗き放題だったじゃん」
「そういやガンドールのワイバーンってよぉ、ドラゴンカー○ックスだとドラゴンとカーのどっちに該当するんだぁ?」
「ハッハッハ、ドタマぶち抜いたろか」
若い男性が多いせいか、シモ方面で益体のない話が広がり始める。
当初の話題から逸れたバカ話が延々と続けられようとしたとき。
「――フフフ。なんだか面白い話をしているねぇ」
――談話室に、新たな人物が姿を現した。
「お、お前はフランクリン!」
現れたのは誰あろう、白衣に身を包んだマッドサイエンティストである。
「どうしてここに!?」
「ここのメンバーに創作モンスターの納品に来たんだけどねぇ。職員に聞いたらこっちにいるって聞いたからさ。あ、いたいた。はい、【ジュエル】」
「あ、どうもお手数お掛けしました……。おお、まるで名探偵のような電気ネズミ……。超嬉しい……夢叶った……」
「毎度ありー」
受け取った準<超級>は目に涙を浮かべて【ジュエル】に頬ずりしている。
こういう客は多いのでフランクリンにとってはボロい商売であった。
「それで君達は混浴がどうとか話してたけどさ。それについてちょっと面白い話があるんだよねぇ」
「面白い話やって?」
ガンドールは『まさかこのマッドサイエンティストがこういう話に乗ってくるんか』と意外に思いつつ、どんなことを言うのかと気になった。他の準<超級>も同様である。
「王国のレイ・スターリングって知ってる?」
「それはもちろん知ってやすが……」
その名を聞いた準<超級>達は『ルーキーの』、『破壊王の弟の』、『悪魔喰いの』、『あのファッションがヤバい……』、など各々が様々なワードで思い浮かべる。
だが、混浴の前振りで何故その名前が出てくるのかと皆が疑問に思ったとき。
「――あいつ、前に自分のメイデンや第一王女と一緒に混浴の温泉入ってたよ」
――フランクリンが爆弾発言をぶちかました。
「「「な、なにぃ!?」」」
その衝撃の暴露に、<LotJ>のサロンが揺れる。
《真偽判定》を持ち、その発言が真実であると理解した者も多い。
いや、持っていない者でも無視できない発言だ。
「ば、バカなぁ!? そんな暴挙が許されていいのかぁ!?」
「おお、神よ! 寝ているのですか!」
「マジで何しとんのや!?」
「……そもそも何で知ってるんでやんすか?」
サロンは一瞬にして阿鼻叫喚となり、嫉妬が渦巻く。
「そ、そういえば! あいつ、前に参加権方式イベントで美少女二人と組んでた!」
「俺もだ! ていうか二人どころか五人くらいと一緒に話してなかったか!?」
「俺はトルネ村で眼鏡美人とお祭りデートしてるの見たぞ!」
「美少女召喚獣呼んでるの動画で見た!」
「……うわ、遍歴えっぐぅ」
次々に寄せられる目撃情報。高まるヘイト。
この瞬間、多くの<LotJ>メンバーにとってレイは『戦場で見かけたら殺す』リストに入ったのである。
「フフフ」
その原因であるフランクリンはいつものニヤニヤとした笑みをロールしながら、内心でも『狙い通り』と笑う。
今回の暴露で無駄にレイへのヘイトを高めたのは、戦争を見越してのことだ。
他の誰よりもレイのしぶとさを知っているのがフランクリンだ。
<LotJ>の準<超級>達に襲われたところで死にはしないだろうと確信している。
しかしながら、襲撃によって彼の周りの戦力……クランは削られるとは踏んでいる。
そうなれば、自分が戦争でレイを完全敗北させる際の邪魔者も減るという算段だ。
なお、ここ数日間のフランクリンはレイのリアルに気づいてしまった影響で考え込み、ろくに寝ていない。
そんな頭で考えた算段であり、ここからさらに考えすぎた結果として発生するのが睡眠薬入り手作りシチュー事件だ。
さらに言えば、ヘイトを高めた<LotJ>のほとんどがレイと交戦することがなく、この目論見は特に効果を発揮しない。
むしろ<超級>に襲われ続けるのもフランクリンの想定外であっただろう。
ゆえに、これ自体は空回りの無駄工作であった。
◆
「…………」
そんな大騒ぎする面々の中、カタはいつの間にか議題の中心から外れていた。
シモの話にもレイの話にも、彼は興味を持てない。
強いて思ったことは『うちのクラン、戦闘中以外は中学生男子の集まりみたいだなぁ……』程度のことだ。
カタは学校に通ったことがないので実際に見たことはないが、創作物を通して見たシチュエーションを連想した。
何だかんだで楽しそうなクランメンバー達と、自分とは違うメイデンの<マスター>であるレイ・スターリングの話。
それについて、カタが何かを言うことはなかったが。
少しだけ――心の内側に波が立った。
その理由も、心の動きの意味も、……カタ自身には自覚できないものだっただろう。
To be continued
( ꒪|勅|꒪)<コメディっていうわりになんか前振りしてねーカ?
(=ↀωↀ=)<♪~
○フランクリン
(=ↀωↀ=)<ちなみに七月七日はフランクリンも誕生日でした
(=ↀωↀ=)<計算するとちょうど今年誕生ですね
(=ↀωↀ=)<おめでとう




