電遊研の日常
(=ↀωↀ=)<本日七月七日はレイ君こと椋鳥玲二の誕生日ですね
(=ↀωↀ=)<Twitterなどでお誕生日イラストを描いてくださっている方々ありがとうございます
(=ↀωↀ=)<「#デンドロ」で検索して見つかったものはありがたく見させてもらっています
(=ↀωↀ=)<作者も毎年お誕生日に何かできる訳ではありませんが
(=ↀωↀ=)<今年はお誕生日記念に椋鳥玲二の学生時代の一幕を投稿
(=ↀωↀ=)<本編でパレードのパート以外枯渇しているコメディを補充する番外編でもあります
□電遊研について
電遊研。
正式名称、電子遊戯研究会は県立N高等学校にある部活の一つである。
部の設立は二〇四一年。当時一年生だった星空暦と左右田エルモが立ち上げた。
その後、彼女達は部の活動として全国的、そして国際的なeスポーツ大会に出場し、華々しい活躍を収めた。
一年目の功績ゆえに翌年以降は入部を望んでN高校に入学する者もいたほどだ。
しかしながら電遊研は希望者全てが入れる訳ではない。
部長の星空暦の面接を通った者か、彼女が直々にスカウトした者だけが入れる狭き門である。
その方針に異を唱える教師や生徒もいたが、星空暦が『大会に備えて精鋭で活動したい』と言えば一年目の実績からそれが通った。
付け加えるなら、彼女が地元の名士……どころではない名家の令嬢だったこともあるだろう。
なお、設立二年目は『あなた、世界一強いんですって? 私と命懸けでゲームしましょう?』と殴り込みをかけたが返り討ちにあって舎弟になったモーリー・フォレスターと、『面白いし便利そうだからスカウトしたわ』と部長が連れてきた棟上雄武の二名のみが加わった。
棟上自身は『私は面白いことなど何も……』と困惑していたものの、ノーと言えなかったので入部した。後のモヒカン・オメガである。
そして設立三年目、星空暦最後の一年。
電遊研にはまた新たに二人のメンバーが加わった。
それは有名配信者にして屈指のHENTAIであるテイストマンこと加田ひつじ、そして……。
「二年の七月までは部活に入って青春っぽいことしたいな」
呑気なことを言いながら入学し、奇人変人の巣窟に踏み込んだ男……椋鳥玲二である。
◇◇◇
□椋鳥玲二
「あっちぃ……」
夏休みのある日、俺と加田は電遊研の部室に向かっていた。
電遊研も一応はeスポーツの大会に臨む部である。
そのため、こうして夏休みの間も登校して部室に集まり、練習に励んでいる。
まぁ、そう言っても基本的にはみんなで集まってゲームしているだけだが。
各々の得意ジャンルの大会が迫ったら他の部員が練習相手を務める形だ。
……大抵の場合、全ジャンルでセミプロ級な棟上先輩が担当するのだけど。
しかし、そうした大会前でもなければ、遊びたいゲームを遊ぶだけだ。
部長は『様々な経験を経てこそ、自らの得意分野でも新たな道が拓けるのよ』とかそれっぽいこと言っていたし、その理屈で学校側も黙らせていた。
あの人、実績と口三味線と実家パワーで学校に文句言わせないんだもんな……。
「この地域、夏は暑さと山と海、冬は寒さと雪を楽しめるのでお得感ありますな」
「まぁ四季ははっきりしてるよな」
「夏は水分補給するセクシー唇が見放題のワンダフルタイム……素晴らしい」
「緩急なしでHENTAI語録吐くな」
平常運転の加田にツッコミを入れる。
こんなHENTAI言動の加田だが、配信時は普通に喋るし、何かしらの撮れ高が発生する。
偶然なのか、狙っているのか、どちらにせよ見ていて面白いのでパルプンテ感覚で視聴する人が多いらしい。
さて、そんなことを話している間に俺達は部室に到着した。
「おはようございまーす」
「グッドモーニングセクシー」
俺が普通に挨拶し、加田は絶対流行らない挨拶で入室する。
部室には既に先輩方が全員揃っていた。
「あっ、椋鳥と変態も来たわね。二人とも、麻雀やるわよ」
すると、目つきと性格とスタイルの悪いモリモリ先輩(モーリー・フォレスター先輩)がそんなことを宣った。
「へぇ珍しいですね。モリモリ先輩が騙し合い以外のゲームに誘うなんて」
普段は人狼か対戦型トラップゲームか自作クソゲーなのに。
……いや? 麻雀も騙し合いか?
「それで麻雀はどのアプリですかな? 雀魂? 天鳳?」
「んーん。電動卓よ」
モリモリ先輩がそう言って部室の一角を占領しているデカくて四角い箱を指さした。
どうやらあの中に電動麻雀卓が梱包されているらしい。
「なんか見慣れない嵩張るものが置かれてるなと思ったら……どうしたんですか、これ?」
「さっき二、三年でお菓子まとめ買いしたときに部長が商店街の福引で当てたのよ」
……これが賞品だったことと当てたことのどっちに驚けばいいか悩むな。
まぁ、部長ならそういうこともあるか。
「ちなみに担いで運んできたのは棟上ね」
「このデカブツを商店街からここまで!?」
諸々込みで50kgはありませんか!?
「少し、疲れた」
椅子に座って項垂れている棟上先輩の額には薄っすらと汗が浮かんでいた。
……『少し』で済むんだからこの人も大概体力オバケだ。
「まぁ、麻雀は望むところですけど面子は?」
麻雀は四人制のゲームなので、二人余ってしまう。
「棟上はまだダウンしてるし、ワタシと一年二人、そして部長よ」
モリモリ先輩の言葉に、――『クスリ』と小さな笑声が返る。
「あら、私を入れていいの?」
声の主は、部長席で優雅にアイスコーヒーを飲んでいた星空部長。
彼女は笑いながら、自身に噛みつく挑戦者に問いかける。
「ふふん。随分と余裕ぶった態度だけど、今日こそは吠え面かかせてあげるわ!」
「うーむ、なんという負け犬的前振り」
「加田ぁ! あんたも覚悟しなさい! 椋鳥もよ!」
「巻き添えかな?」
「実際、部長と運の勝負をする時点で巻き添えでありましょうよ」
……内心、加田の言葉に頷いてしまう。
部長と運が絡む勝負をするのは怖い。エ○ゾディアデッキ使うと二回に一回はワンターンキルしてくるし。
「ふふん。素人ね一年! 麻雀は運ゲーじゃないと教えてあげるわ!」
ともあれ、もう勝負の流れは止まらない。
面子は揃い、第一回電遊研麻雀大会の開幕である。
◇
「あ、そうだ。最下位は一位の言うこと何でも聞くルールにしましょう」
「急に闇のゲーム始めるじゃん……」
「何とでも言いなさい! 今日こそは勝ってみせるから! リーチ!」
「ほう、親のダブリーですか。大したものですね」
「……運ゲーじゃないと言ってましたけどダブリーは十割運ゲーでは?」
「ハッ! 何とでも言いなさい! これなら部長といえどひとたまりも……」
「――ツモ」
「え……?」
「地和字一色大四喜四暗刻。クアドラプル役満で64000-32000。全員トビ終了だけど親被りのモーリーが最下位ね」
「はぁあああああッ!?」
「やっぱり部長のドロー運ってカードゲーム以外にも有効なんですな」
「ソシャゲのガチャはわりと沼ってるけどな」
かくして、電遊研初の麻雀大会は東一局の一巡目で決着した。
◇
「くぅううう…………」
一戦目の後、モリモリ先輩は自分で言い出した罰ゲームを受けていた。
一位の言うことを何でも聞く。
そのルールの下、部長が命じたのは……。
「部長」
「何かしら椋鳥君」
「何で部室にあんなヒモみたいな水着があるんですか?」
「用意したのはモーリーよ。私に着せて写真でも撮るつもりだったみたいね」
……結果として自分が着てるんだから因果応報だなぁ。
ヒモだったお陰でサイズ調節は楽だったっぽいけど。
「部長。あれはいけませぬ」
「あら、どうしてかしら加田さん」
「ああいう水着を水着として美しく魅せるにはある程度の膨らみが必要ですから。フォレスター女史の残念な胸ではただの乳首隠しリボンでは?」
「ぶっ殺すわよ加田ぁ!!」
目つきと性格とスタイルの悪いモリモリ先輩は、加田の正当な指摘にブチ切れていた。
「グヌヌ……! この屈辱は二戦目で叩き返してやるから!」
「まだやるんですか……」
なんて懲りない人なのだろう。今更だけど。
「それなら私は一度抜けさせてもらうわ。さっきみたいな展開じゃみんなが楽しめないものね」
「余裕を……! この二戦目を快勝してまた引きずり出してあげるわ!」
「でも代わりに誰が入るんです? 棟上先輩はもう大丈夫ですか?」
「……(プルプル)」
「決着が早すぎてまだ回復していないようですな」
となると……。
「…………」
「あ、左右田副部長」
部長の代わりに左右田副部長が卓についた。
相も変わらず無言のままだ。
……この人、喋らないまま麻雀するのかな?
ともあれ再び面子は揃い、第二回電遊研麻雀大会の開幕である。
◇
「白ポン! 中ポン! 發ポン! 大三元テンパイ! これで責任払いよ椋鳥!」
「あ、その捨て牌ロンです」
「ぐぁあああああああ……!」
「カン! カン! もひとつカン! 三暗刻三槓子ドラ4確定! これで決まりね!」
「…………」
「あ、左右田副部長が牌を倒して……ツモですね。自風のみでドラは……12?」
「なんでぇえええええ……!」
◇
第二回、電遊研麻雀大会終了。
結果は……。
「…………」
「何で、何でこんなことに……」
一位左右田副部長、二位が俺、三位が加田。
そして左右田副部長の数え役満にまたも親被りしてトビ終了した最下位がモリモリ先輩だ。
「迂闊にカンとかするから……」
暗槓だから俺でもやったかもしれないが。
しかしこの人、なぜか部内で競うときはよく自滅するよな……。
「しかし一回も放銃しなかったのが実に左右田氏ですな」
「鳴きやリーチを一度もせずにダマのツモ上がりだったしな……」
あまりにもキャラがブレない。
まさか麻雀回ですら声を聴かずに終わるとは……。
「…………」
あ、左右田副部長が何かメモを書いている。
そこにはドリンクの名前がリストのように……あっ(察し)。
「…………」
左右田副部長はモリモリ先輩にメモを手渡し、親指で部室の外を指し示した。
無言だが、そのジェスチャーが何を言わんとしているかは俺でもわかる。
『ジュース買ってこい』である。
「くぅぅうううう……次こそは、次こそはリベンジしてやるんだからあああ!!」
モリモリ先輩はメモを握りしめ、泣きながら部室を飛び出して行った。
……乳首隠しリボンのままで。
「暑いからあの格好は涼しくていいですな」
「メリットとデメリットが釣り合ってなくない?」
まぁ、急に罰ゲーム足したのモリモリ先輩だから同情はできないけど。
「それにしてもフォレスター女史は身内相手だとクソ雑魚ナメクジと言わざるを得ない」
加田はもうちょっと言い方をさぁ……。
「そこが可愛いのよ。懲りずに何度も挑んでくることも含めてね」
部長はそう言って、とても愉快そうに笑っている。
「ふふ、やっぱり仲間内で遊ぶのは楽しいわね」
「……そうですね」
俺も、間違いなくこの日常は楽しい。
仲間達でバカみたいに遊んで騒ぐ。
きっと高校生らしい夏の一幕とはこういうものなのだろう。
◇
なお、モリモリ先輩が乳首隠しリボンで校内を爆走パシリした件は普通に学校から怒られた。
To be continued
○電遊研
星空暦が『面白くなりそう』だと思ったメンバーを集めたら面白くなりすぎた集団。
学園物ラノベ書けそう。
○星空暦
得意ゲームジャンルはカードゲーム。
色々見えている占い()が得意な部長。
なお、存在がジャンル違いに片足突っ込んでいる。
権力とマネーと天運とよく分からない何かを併せ持つ。
後の“決闘者”、【召喚姫】天空院翼神子。
(=ↀωↀ=)<彼女が三年のときの電遊研が最も個性的なメンバーです
○左右田エルモ
得意ゲームジャンルは疑似VRFPS(視覚と聴覚に限定したVR)。
サイレント系変人。
喋れないわけではないのに喋らない。
縛りプレイのはずなのに結果がヤバい。
謎多きクール系。
後の“射撃否定”、【銃神】ザウエル・ウルガウル。
(=ↀωↀ=)<作者的にはいつかアルベルトと対面させたい
○棟上雄武
得意ゲームジャンルは全て。
苦労人枠。
趣味はボランティア活動。
『何で運動系の部活にいないんですか全国行きましょうよ』な体格と『学べば大体何でもできる』器用さで色んなことを任されてしまう。
翌年度の部長。
後の<モヒカン・リーグ>オーナー、【大教導者】モヒカン・オメガ。
(=ↀωↀ=)<【教導王】と迷ったけどカタカナ読みでどっちがいいか考えてこっち
( ̄(エ) ̄)<グレイト・ティーチャー・オメガ……
○モーリー・フォレスター
得意ゲームジャンルは対人頭脳戦。
部内勝負の被害者枠。
大体自分から仕掛けては返り討ちにあう。
部内の人間と部外の人間で受ける印象が全く異なる人物。
後の“地獄遊戯”、【罠姫】守森。
(=ↀωↀ=)<レイ君が変な呼び方してる時点で人格はお察し
(=ↀωↀ=)<あと二つ名が被ってたので修正しました
○加田ひつじ
得意ゲームジャンルは不定。撮れ高の塊系配信者。
部内の毒舌&HENTAI担当
デンドロ系の動画では『妖精女王のカップいただきにまいり〼』と『監獄喫茶店』シリーズが有名。
後の怪人フチ舐め男、【大怪盗】テイストマン。
(=ↀωↀ=)<ちなみに予告状は出した
○椋鳥玲二
得意ゲームジャンルは2D格闘ゲーム。
『部の中では俺が一番普通だな……』などと思い込んでいる一年生。
なお、リアル事件遭遇率はコイツが一番高く、九死に一生とみたらしを反復横跳びする主人公属性。
そもそもの基準が姉と兄のせいでバグっている。
二年の夏からは娯楽を絶って受験勉強に集中するため、籍を置いたまま幽霊部員になる。
しかし結局、ゲーム以外のトラブルには関わり続けた。
後の“不屈”、【聖騎士】レイ・スターリング。
(=ↀωↀ=)<どこ行っても変な奴らと縁が結ばれる模様
○余談
夏休みが終わった後、一年に謎の美少女転校生がやってきて電遊研に入部する。
玲二が三年のときの部長は彼女である。




