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<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- Another Episode  作者: 海道 左近


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49/80

18巻発売記念SS 移動式セーブポイントの秘密

(=ↀωↀ=)<18巻発売記念SS


(=ↀωↀ=)<前書きというか注意書き


(=ↀωↀ=)<今回は18巻の読了必須の内容です


(=ↀωↀ=)<18巻(と一部17巻)の書き下ろしパートのネタバレ前提で構成されるので


(=ↀωↀ=)<先に18巻をお読みいただくかこの話を飛ばしてください

 □レイ・スターリング


「うーん……」


 その日、俺は第八闘技場の舞台上で、一軒の小屋を眺めていた。

 地面から浮いている(・・・・・・・・・)その小屋は、【レジェンダリー・キャリッジハウス】。

 俺が<アニバーサリー>で入手したSランク確定ガチャから出てきた代物である。

 大きさは縦横奥行きが三メートル以上、装飾や質感はまるで美術館のようだ。

 内部は空間拡張されているし、備え付けの冷暖房や調理器具、水道までもMPで動くので生活空間としても快適。

 作りは頑丈で、自己修復機能も搭載。何より多くの<マスター>が求めて止まない移動式セーブポイント機能まである。


「…………」


 確定チケットでこれが出たことに不満はない。

 文句を言えばバチが当たるレベルだろうとも分かっている。

 しかし、思うところはある。


「当面のことを考えると、特典武具の方がありがたくはあったんだよな……」


 <アニバーサリー>で同じ賞品を獲得した友人二名が立て続けに特典武具を手に入れていたので自分も、と自然に期待していた部分はあるのだ。

 戦争が近いこともあり、戦力を少しでも増やしたかったという思いもある。


「特典武具も【黒纏套】から暫く入手出来ておらぬしのぅ……」


 まぁ、俺のプレイ期間で三つも持っていることが異常らしいけれど。

 ……初期の【ガルドランダ】や【ゴゥズメイズ】との連戦、クランメンバーで大量の特典武具を持っている兄やフィガロさんの存在など、<UBM>や特典武具に対する基準がおかしくなっている気もする。


『でも持ってる特典武具と装備箇所被るよりよくない?』

「それはそうだな」


 頭上のチビガルの言葉に頷く。

 アジャストした特典武具は――着ぐるみばかりな兄などの例外を除けば――ある程度は既存の特典武具と装備箇所がズレて出てくるらしい。

 だが、ランダム且つ他人にアジャストしたガチャ産の特典武具ではそうもいかない。

 俺の場合、特典武具が出たとしても籠手、ブーツ、外套のどれかが出ていたら単純な戦力アップとはならなかっただろう。


『私は籠手じゃなければなんでもいいけど。モシャモシャ』


 そう言って【瘴焔手甲(チビガル)】は俺の髪を齧り始めた。

 ……最近、髪を食われるのをちょっと諦めてきている俺がいる。


「まぁ、ただの小屋じゃなくて移動式セーブポイントだしな」

「そういえばレイよ、移動式セーブポイントとは実際にどう使うのだ?」

「ああ。調べてみた」


 ガチャからこれを入手した後、ネットや<DIN>で情報を探りはした。

 このアイテム自体の情報はなかったが、移動式セーブポイントの情報は豊富だった。


「Wikiによると、パーティで長期の冒険に出るときに真価を発揮するんだってさ」


 移動式セーブポイントにセーブしていれば、再ログインした際には移動式セーブポイントから始めることができる。

 たとえ移動式セーブポイントの設置個所が変わっていてもそこにログインできる。

 そのため、誰かがリアルの用事でログアウトしていても仲間はその人物の復帰を待たずに移動できるということだ。


「しかし移動式セーブポイントでなくとも、大型の船舶は船舶内の位置をログイン座標に指定できるのではなかったか?」

「ああ。その仕様はグランバロア用の救済措置とか言われてるな」


 そうでなければグランバロアのマスターが活動困難になるため、とも言われている。

 グランバロアは一つの船に大勢で乗り込んでの航海をするし、風や波に流されるので場所基準の座標だと再ログインで海の上に落ちる。

 そのためマップ上の絶対座標ではなく、船内での相対座標がログイン・ログアウトの起点になっている。

 とはいえ、ただの船舶はログアウト時の処理こそあれどセーブポイントではないので、『別の場所に移動してからログアウト・ログインでセーブポイントに帰還』といった小技は使えないし、ログアウト中に船が破壊された場合はやはり海の上にドボンだ。


「それもある程度大きな船や砂上艇のみの仕様だからな。やっぱり竜車サイズで再ログイン地点に指定できる移動式セーブポイントの利点は大きい」

「それはそうだのぅ」

「何よりこいつは家だけど移動もできるしな」


 【レジェンダリー・キャリッジハウス】は浮遊している見た目と裏腹に安定しているが、持ち主なら簡単に動かせる。

 試してみたが、シルバーでも牽けた。

 キャリッジという名前だが一種のトレーラー・ホームであり、浮いているのでシルバーならやろうと思えば空飛ぶ家にもなる。

 ……まぁめちゃくちゃ目立つから実際にやるとギデオンに戻るときみたいに空飛ぶモンスターに狙われそうだけど。

 とはいえ、いつか皇国とのゴタゴタが片付いて、みんなで冒険の旅にでも出るときが来たらこれ以上ないアイテムになるだろう。

 移動式セーブポイントだからティアンの友人達とも一緒に旅ができる。


「……ん?」


 そんなことを考えていると、新たな疑問点に気づいてしまった。


「どうしたのだ、レイ?」

「ああ、うん。この小屋は大昔の【建造王】が作ったものだけどさ」

「アイテムの説明にそう書いてあったのぅ」

「でも移動式セーブポイントの利点はマスターのためのものだろ? ログアウトしないティアンには意味がない。これを作ったのが大昔のティアンなら、どうしてセーブポイントの機能を盛り込んだんだ?」

「言われてみれば……」


 <マスター>の需要が生まれたのはサービス開始以降、<Infinite Dendrogram>の内部時間でもほんの四、五年前だ。

 では、どうしてそれ以前に移動式セーブポイントの製法があり、尚且つ超高級アイテムとしての地位を誇っているのか。

 需要がないのに供給とブランドがあるような状態はいささか奇妙だった。


 ◇


 そんな疑問を抱いた少し後。

 トムさんが「引っ越し祝い持ってきたよー」と菓子折りを片手に本拠地を訪れた。


「いやー。煌玉馬といい斧といい、君って変なものに縁があるよねー」


 サービス開始前から決闘王者の座についていた謎の<マスター>。正体は運営サイドという噂もあるトムさんは、闘技場の隅に置かれていた小屋を見てそう述べた。


「トムさんはあれについて知ってるんですね」

「まーねー。移動式セーブポイントの中でも特に古い奴だよ。それでどうかしたのー?」

「はい、ちょっと疑問に思っていたことがあって……」


 そうしてトムさんに先ほどの疑問を話すと、「あー……」となぜか遠い目をしていた。


「需要がない頃からどうして供給とブランドがあるのか、ねー。供給というか作成に関しては運営の匙加減だねー」


 いきなりぶっちゃけられた。

 いやまぁ、セーブポイントって時点でティアン発のアイテムじゃないとは思ってたけど。

 ログイン・ログアウト処理を、運営に関係なくどうこうできる方がむしろ問題だ。


「居住性があって、竜車や小型船以上のサイズがあって、一定以上のリソースと技術的完成度のある高級マジックアイテムにランダムでおまけ(・・・)される感じ? 素材の時点でリソースを盛りまくってセーブポイント化を狙うパターンも増えたけど、それだって確定じゃないねー」

「あー……」


 最初は作成したティアンの意図に関係なく、セーブポイント化していたということか。

 そして移動式セーブポイントは高級品だが、そもそも高級品しかセーブポイントにならない、と。

 『高いマジックアイテム』が『超高いマジックアイテム』になるおまけ要素な訳だ。


「黄河とレジェンダリアは素材やマジックアイテムの技術的にもできやすいねー」

「なるほど。だからその二ヶ国が移動式セーブポイントの生産元なんですね。でも、ランダムなおまけ要素だとしてもやっぱりサービス開始前のティアンには無価値じゃないですか?」


 供給の話は分かったが、まだ疑問はある。

 移動式セーブポイントになったところで、意図しない効果が付与しただけだ。

 アイテムのスキルが増えると言えば聞こえはいいが、それが役に立たなければ価値には繋がらない。

 だというのに、サービス開始前から『移動式セーブポイント』効果の有無で価値は桁違いになっていたらしい。


「ブランドの話だねー……」


 ただ、それを尋ねるとトムさんがなぜか遠い目をした。


「……『移動式セーブポイントは<マスター>に高く売れる』ってブランドさ。どうやったら作れると思う?」

「どうやってってそれは、…………あー」


 聞かれて、察しがついた。


「……『<マスター(・・・・)が高く買えばいい(・・・・・・・・)』」


 需要自体を、無理やりにでも作るということだ。


「せいかーい」


 どこか疲れたような顔でトムさんはそう述べた。

 サービス開始前(ずっと昔)から<マスター>はいて、サービス開始後(数年前)にそれが増えた(・・・)というのがこの世界での常識だ。

 そして以前からいた<マスター>というのは、まぁ運営サイドなのだろう。

 トムさんのように。


「無駄に高く買うために金策に走る日々……」


 トムさんは遠い目をして小声で漏らしていたが、聞こえてしまった。

 トムさん自身が言っていたが、【レジェンダリー・キャリッジハウス】は移動式セーブポイントの中でも古いものらしい。

 それが運営の用意したガチャの中に入っていた。

 もしかしなくても、運営サイドが製作者の【建造王】から買い取ったものなんだろう。

 おいくらだったのかは……聞かないでおこう。


 その後、何だか来たときよりも疲れた顔でトムさんは帰っていった。


 ◇


 そして俺とトムさんが話している間、ネメシスは「どこかで食べた気がするのぅ」とか言いながらトムさんの持ってきたクッキーをモシャモシャと食べ尽くしていた。


 Episode End

○移動式セーブポイント


(=ↀωↀ=)←口の軽い猫


(=ↀωↀ=)<まぁ、勘の良い人は概ね察してる話ではあるし……


(=ↀωↀ=)<<IF>のラスカル&マキナとかそれでいくつも砂上艇作って


(=ↀωↀ=)<セーブポイント付きを引けるまで粘ってたし


( ̄(エ) ̄)<船舶ガチャ……


○ネメシス


(=ↀωↀ=)<「SSはネメシスが食べてるとオチが安定する」


(=ↀωↀ=)<とは作者の談


(=ↀωↀ=)<「ネメシス喋らないけど今何してるの」→「ごはん食べてる」とかもやりやすい


(=ↀωↀ=)<そのせいかアニメはネメシスの背景食事音が頻出することになったけれど

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― 新着の感想 ―
コレがあるって事は、遠征の話があるってことか。 戦争の後になるのかな?多分黄河かレジェンダリア、グランバロアか、リリアーナの妹が攫われて?グランバロア 迅羽の誘いを思い出して、あとうらら(輝麗)との話…
[良い点] つまりこれはトムさんに買ってもらったようなもの…? 需要を作るために別人のフリをして既に持っている物を何度も高額購入……疲れた顔にもなるか。 [一言] またSSでネメシスがHP食ってる、と…
[良い点] なるほど、書籍を読んだ際にはスッと受け入れていたけれど、言われてみれば謎の多いアイテムでしたね、移動式セーブポイント 腑に落ちる説明で、デンドロのことが更に好きになりました [一言] 書籍…
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