ロボータの冒険 超獣・竜王・ポメラニアン 地上最悪の決戦編 ⑦
(=ↀωↀ=)<本日二話目ですのでまだの方は前話から
■ヴィジャボリオン/【塊竜王】について
適者生存。
弱肉強食。
この二つの言葉こそが、ヴィジャボリオンの生き方だった。
◆
地竜でも屈指の長生を誇る存在、ヴィジャボリオン。
彼は「自分が強かったから生き残れた」などとは考えていない。
「生き残ったから強くなれた」のだと、理解している。
先々期文明崩壊の大戦争当時、彼は土中に埋もれた卵だった。
終結から間もなく産まれた彼を待っていたのは、人智を超越した力によって蹂躙された大地。
しかし彼の誕生と同時期に、それらの破壊と同等の変革が世界を襲う。
天秤の化身……管理AI三号クイーンによるモンスターへの法則付与。
血肉の屍ではなくドロップアイテムを遺す新たな摂理。
それによって巻き起こったのは……自然界全てでの食糧不足。
肉食のモンスターは食らうべき肉が加工品・装備品、あるいは僅かな肉や皮に変わり、生きるにはまるで足りなかった。
他のモンスターを襲い続けても、餓えは癒えない。
ゆえに、モンスターは確実に肉を遺す人間を襲い始めた。
激しく戦い、そして諸共に死んでいく生物達。
全ての生命が糧を探す中で、親兄弟のいなかった彼もまた生きるために必死だった。
そんな日々は、管理AI三号によって摂理への修正パッチ……モンスター間の食料優先ドロップ仕様が当てられるまで続いた。
さほど長くはなかったが、人も獣も多くが死んだ時代だった。
しかし、ヴィジャボリオンは生き延びた。
生まれた環境ゆえか、地竜でもとびきりに小さな体躯だった彼は、僅かな食糧で生き延びることができたからだ。
それは恐竜の大絶滅の後、氷河期を生き延びたネズミに近い在り方だったろう。
また、彼は長期間にわたり、強さを誇らなかった。
文明崩壊後には自然界全体でのリソースの偏りや乱れのために強大なモンスター……今で言うイレギュラーに近い存在が跋扈していた。
だが、それらはいずれも管理AIによって駆逐された。
強さゆえにより強きものに目をつけられ、そして死ぬ。
目をつけられて生き延びたのは【海竜王】や【天竜王】といった例外中の例外達だ。
そして、当時のヴィジャボリオンは目をつけられない程度の存在だったゆえに生き残った。
適者生存。彼が長き生の中で最大の修羅場を生き延びたのは、弱く小さかったからだった。
ヴィジャボリオンが強さを得たのは、そうした動乱の時代が終わった後だ。
生態系が安定し、世界に一定の秩序が保たれた頃。
彼は弱き間に磨いた技巧で他者を殺め、リソースを集め、自らの位階を上昇させていった。
いつしかヴィジャボリオンは、【塊竜王 ドラグランプ】と呼ばれるようになっていた。
【竜王】となれば、弱かった頃の生き方はできない。
自分と同等以下の相手を食らい、下し、強きモノとして君臨する。
そうして自らを鎧わなければ、食われる側に回ると知っていた。
弱肉強食が【竜王】としての彼の生き方だった。
だが、適者生存も捨ててはいない。
元は弱者であったがゆえに、彼は強者を見抜くことを怠らない。
【地竜王 マザードラグランド】の力を見抜き、配下となることで生きながらえている。
より強きモノを前には、従う以外に生存の術はない。
もしも【塊竜王】が神話級の域を超えていたならば……きっと管理AIに恭順して<SUBM>になっていただろうが、彼は古代伝説級だ。
神話級達の領域には、リソースも才能も届かない。
【凍竜王】は無論、【キル・キル・バ】にもだ。
神話級と古代伝説級、比べればどちらが勝るかなど凡人でも簡単に判断できる。
だからといって――脅威度が【キル・キル・バ】に劣るとは限らない。
今の【塊竜王】は……強者なのだから。
◆
今、【塊竜王】は山中で氷の城が砕ける様を見ていた。
「ホッホッホ。おひい様の“氷晶宮”を砕くとは、中々大した者がおりますな。かの神話級か、あるいは他の何かか。面白いですなぁ」
【塊竜王】には、【凍竜王】を心配する様子が微塵もない。
それは不忠ではなく、単に理解しているからだ。
あの程度でどうにかなるようならば、自分は下にはついていない。
むしろ、【凍竜王】にとっては楽しみが増しただけだろう、と。
「おひい様ならば問題あるまい。私は私の役目と獲物を……ホッホッホ」
そうして【塊竜王】は頷き、笑いながら……《竜王気》を発する。
【竜王】特有の赤いオーラだが、彼のそれは他の【竜王】とは少し異なる。
彼自身が纏うだけでなく、地面にもじわじわと染み込んでいく。
そうする間に、【塊竜王】は坂道を転げ落ちた。
体をボールのように丸めて坂道を転がる。
それはともすれば微笑ましい光景だったかもしれない。
自然豊かな坂道を転がるアルマジロ、動画サイトに載せればそれなりに見られもするだろう。
穏やかな笑いも誘うだろう。
だが、すぐに笑えなくなる。
その変化は、見る者が見れば雪だるまを思い出すだろう。
【塊竜王】を中心に、《竜王気》を帯びた周囲の砂が、土が、岩が纏わりついて、巨大化していく。
魔法に詳しいものが見れば、それは瞠目する手際だ。
物質操作……地属性魔法の応用による鉱物の装着が、高速かつ連続で使用されている。
次第に地盤さえもめくれ上がり、その塊を構成するパーツとなる。
『ホッホッホ、良い土だ!』
【塊竜王 ドラグランプ】。
彼は地竜の世界において、重ねた年月以外にもある一点において非常に畏れられている。
それは、彼が地竜において『最も地属性魔法に秀でている』ということ。
【塊竜王】が山の裾野を暫く転がった後には、まるで峡谷のような痕跡が深く刻まれ……。
『――さぁて、街を潰すのは【金竜王】様の南征以来ですなぁ』
――全長二〇〇メテルに達した二足歩行の巨竜が街を見下ろしていた。
自然都市は、踏み潰される恐怖に包まれた。
◇◆◇
□■<自然都市ニッサ>
街からほんの数キロメテルという距離で、巨大なドラゴンが街を見下ろしていた。
かつてギデオンに現れた巨大な<エンブリオ>――パンデモニウムとサンダルフォンに比べれば小さく思えるが、それは単に基準が狂っているだけだ。
そも、あれだけの巨大質量の塊であれば、都市の一つ程度は踏み荒らして壊滅できる。
そんなものが脚を持ち上げ、一歩ずつゆっくりと……しかしあまりにも巨大な歩幅でニッサに迫る。
街の南側で警戒に当たっていた領兵や緊急依頼を受けた<マスター>も、身が竦む。
強大な存在……視覚的にも力量的にも太刀打ちできないのではないかと思える存在を前にした者の、必然だった。
「ッ! 照準、六時方向の巨大ドラゴン! ニッサに近づけるな!」
それでも防衛指揮官は勇気を奮い立たせ、部下達に命じる。
部下達も足を震わせながらも、自分や家族の住む街を護るために動き出す。
彼らが取りついたのは、交流あるレジェンダリアから仕入れた魔力式の砲座だった。
MPを注ぎ込むことで、上級魔法職の奥義と同等の威力を持つ長距離魔力砲撃を行うことができる兵器だ。
南半分の街壁に備え付けられた三十六砲座が、【塊竜王】に向けられる。
「撃ぇ!!」
指揮官の号令と共に、砲座は一斉に火を吹いた。
巨大な火球が外しようがない巨大な的に飛翔する。
三十六発の大威力砲撃。
純竜であれば群れでも落ち、低位の【竜王】であれば痛手を負うだろう。
だが、【塊竜王】は古代伝説級地竜において、最古にして最強の存在。
三十六発の砲撃全て――《竜王気》を纏った土塊の甲殻が防ぎ切った。
パラパラと土の欠片が落ちて、それだけだ。
歩みは僅かにも遅れない。
「あ、あぁ……」
微塵も揺らがない絶望に、領兵達の膝が折れかける。
下級職衛兵のMPでは一回の砲撃で使い切るため一射ごとの交代が必要だが、……それすらできないほど絶望している者も多い。
このまま街が潰されるのだと悲観したとき、
「まだだ! まだ打つ手はある!」
呼びかけたのは、街壁に集まった<マスター>の一人だった。
緊急依頼を受けて集まった、ランカーですらない一般<マスター>に過ぎない。
それでも自分にはできることがあると周囲に呼び掛ける。
「俺の<エンブリオ>は複数の攻撃魔法を集束できる! ここの砲撃と合わせればあいつの防御を破れるかもしれない!」
「! 砲手交代! 次弾用意!」
彼の発言を受けて、指揮官は部下達に指示を飛ばす。
領兵達も、その言葉に希望を見出して指揮官の指示に応じる。
オンリーワンの奇跡を持つ者、<マスター>ならばあるいは……と。
「――《千夜幻想集束砲》!」
呼びかけた<マスター>が自らの<エンブリオ>の必殺スキルを起動する。
ニッサの南、【塊竜王】と街壁の中間地点に楕円系の光幕が浮かび上がる。
「あの光幕に、砲撃を!」
「照準合わせ……撃ぇ!!」
二人の呼びかけと共に、領兵達の魔力式砲座から火球が放たれる。
三十六発の魔力砲撃が光幕に吸い込まれるように命中し、光幕が紅く輝く。
「発射ァ!!」
<マスター>の号令と共に、紅い光幕自体が巨大な砲弾となって【塊竜王】に飛ぶ。
《千夜幻想集束砲》は攻撃魔法を束ね、合計威力を六倍化した超魔力砲撃に変換する。
今放たれた砲弾は、使用者である<マスター>にとっても未知の威力。
本来はパーティ六人分が限度の魔法、それも上級職奥義クラスを三十六発収束したのだ。その威力は超級職の奥義魔法をも凌駕する。
間違いなく、この街に在る戦力が発揮できる最大火力だ。
「いっけぇえええ!!」
超魔力砲弾は【塊竜王】に命中し、
――《竜王気》の護りを突破し、
――――【塊竜王】の胸部から上を爆砕した。
初めて、巨大ドラゴンの歩みが止まる。
まるで雨のように、土塊と石がニッサの南のフィールドにばら撒かれる。
その只中で、胸部も頭部も失った竜は動かず、……やがて地面に倒れ込んだ
ニッサの街全体が揺れるほどの地響きと共に、巨大な屍を晒す。
「倒、した……?」
それが誰の口から零れた言葉だったか。
<マスター>かもしれないし、指揮官かもしれない。あるいは、領兵の一人であったかもしれない。
誰もが、自分達があの強大な存在を……街に迫る絶望を討ち滅ぼしたのかと、周囲の仲間と顔を見合わせる。
『光の塵になっていない』と思う者もいたが、そもそもあの巨体はニッサの山の鉱物であるため残っても不思議はない。
そして一分ほどの静寂を経て、誰もが安堵と歓喜を堪えきれなくなって……。
「やった――」
『――ホッホッホ。中々ですなぁ』
――歓喜の瞬間に水を差すように、竜の声が響いた。
再びの、地鳴り。
倒れたはずの、死んだはずの巨竜が身を起こす。
両腕を踏ん張って起き上がったその体には――頭部も胸部も揃っている。
代わりに、直下の地面が深く抉れていた。
これぞ【塊竜王】の固有スキル、《黒城地獄》。
変質した《竜王気》により、土塊を自らの鎧……城と化す。
本体が倒されない限り、鉱物のある場所なら何度でも再構成できる不滅の護り。
倒れたのは、補修のため直下の鉱物に《竜王気》を流していただけだ。
それだけではない。
「あ、あれは……!」
「砕け散った、破片が……!?」
砲撃によってバラバラに砕かれ、地面に降り注いだ鎧の残骸。
『――GOGAGAGAGA』
――それらが四肢を持つ竜となって動き出す。
それもまた、《黒城地獄》の効果の一つ。
彼が《竜王気》を通わせた鉱物は、彼から離れても一定時間は独立して行動する。
土塊の鎧を砕けば砕くほどに、【塊竜王】の軍団が増えていく。
滅びぬ城、際限ない軍団。
終わりなき地獄と絶望こそが【塊竜王】。
『ふぅむ……』
【塊竜王】に先んじて城壁を這い上がろうとする土塊の軍団。
純竜相当の軍団を相手にして必死に抗ってはいるが、半ば心折れている人間達。
街壁よりも巨大な【塊竜王】の姿に、街の住人もパニックに陥っている。
『――おりましたな』
その中に、目当ての存在がいた。
商人風の男に抱えられた白犬が、怯えた目で【塊竜王】を見上げている。
それは……とても弱い生き物だった。
『では、いただきましょうか』
ゆえに、【塊竜王】は弱肉強食をなす。
To be continued
(=ↀωↀ=)<次回更新日はおそらく活動報告のコメント返しです
〇【塊竜王 ドラグランプ】
(=ↀωↀ=)<塊魂系ドラゴン
(=ↀωↀ=)<別に転がらなくても巨体形成できるが鉱物集めが楽だから転がってる
(=ↀωↀ=)<サイズ的には地竜系【竜王】の中だけでもまだ上に何体もいる
(=ↀωↀ=)<サイズが真価じゃないからね
(=ↀωↀ=)<ちなみに《竜王気》でバフしてるので元が土でも強度が高い
(=ↀωↀ=)<分かる人には分かりやすいたとえだと「周」(念能力)
〇アラビアン・ナイトの<マスター>
(=ↀωↀ=)<とあるパーティのリーダーでメンバーは全員【紅蓮術師】
(=ↀωↀ=)<大火力砲による必殺を狙う構成
(=ↀωↀ=)<強いときと弱いときが凄くハッキリしてる
(=ↀωↀ=)<ランカーには入ってないくらいの実力者




