SS 〈童話分隊〉の日常
(=ↀωↀ=)<インフィニット・デンドログラムEX.1 <童話分隊>
(=ↀωↀ=)<電子オンリーで本日発売!
(=ↀωↀ=)<なお、これは「ツイッターキャンペーン用にいるかな?」と思って書いて
(=ↀωↀ=)<「今回やらないのでなろうの方でどうぞ」と言われたSSである
(=ↀωↀ=)<読了後推奨!
(=ↀωↀ=)<それと本日発売のブルーレイ三巻もよろしくね!
□彼らの日常について
<童話分隊>のメンバー、アスマの<エンブリオ>の銘は【超獣母神 ガイア】。
<エンブリオ>の中でも強烈なネーミングと、乳母車という外見のギャップが特徴の<エンブリオ>である。
ガイアの能力はモンスターの卵の創出と孵化。乳母車を押していると一週間ほどでモンスターが孵化し、その後は新たな卵がセットされる。
卵から産まれるモンスターはランダムだが、総じてアスマによく懐く。
つまりは毎週、自分によく懐くモンスターが増える<エンブリオ>である。
それ自体は喜ばしいかもしれない。
しかし、『ペットが毎週増える』と言えばどうだろう?
「………………」
その日も、アスマはキオーラの食料品店で大量に食料を買い込んでいた。
そして財布代わりのアイテムボックスを見て、静かに溜息を吐く。
キオーラは港街なので魚介類は新鮮で安いが、野菜は高い。
飼っているモンスターには草食のものも多いため、地味に出費が増えている。
そう、ガイアでモンスターが増えるほどに……彼の家計は圧迫されるのだ。
レベルアップに伴って収入は増えるが、モンスターも増えるので鼬ごっこである。
無論、ジミニーやビーンスターク、カーペットなどの有用なモンスターを除いて手放してしまうという手もある。生まれた後は普通のモンスターと同じなので、売買もできる。
だがしかし、『自分によく懐く動物』をあっさり売り払えるだろうか?
アスマにはできなかった。
というか、それができる人物ならこんな<エンブリオ>になっていない。
【ジュエル】の状態停止機能も、「なんだか可哀そうだから」という理由で使えなかった。
結果として、今日もアスマは食費に追われている。
なお、一番食費が掛かるのは最大戦力のビーンスタークである。
植物だが、最も金が掛かる。
なぜなら、ガーデニング同様、環境を整えるのに金が必要だからだ。
ビーンスタークの種族である【フォレストギガス】は本来レジェンダリアの奥地……自然魔力が豊富な環境に生息している。
そうした環境ならば根からの魔力吸収と日光浴だけであの巨体を賄えるが、王国はレジェンダリアほど自然魔力が豊富ではない。
そのため、足りない魔力を補ってやる必要があるのである。
具体的には、根を下ろして日光浴する際に魔法の【ジェム】を埋めておく必要がある。
……【ジェム】の値段はピンからキリまであるが、純竜級である【フォレストギガス】を『満腹』にするため、コストが掛かる。
ルーキーの内に純竜級戦力を得られたことは大きいが、ランニングコストはルーキーには大変厳しいものであった。
ビーンスタークも普段は粗食(光合成のみ)で我慢してくれているが、アスマも時々は腹いっぱい食べさせてやりたいと考えている。
そこに他の出費も重なってくるので、アスマはやりくりに苦労していた。
「…………」
「『クエストを受けないとね』。はい、頑張って稼ぎましょう! 私も頑張ります!」
残金の減った財布を見て悲しい目になって歩いていたアスマは、傍らのジミニーに慰められた。
ともあれ、パーティとして受けるクエストは成功しているし、稼げてもいる。
頑張って家計を上向きにしようと考えながら、パーティの集合場所に着いたとき……。
「『あ』」
そこには満足そうに置物を撫でながら財布を空にしたソニアと、見るからにギャンブルで身包み剥がされたグリムズの姿があった。
「…………」
「『……また?』。はい、またみたいです創造主様」
継続的に金銭を消費するアスマと違い、突発的に全財産を失うパーティメンバーに、アスマは乾いた笑いをするしかないのだった。
とりあえず、グリムズに自分の前の装備を贈ることにした。
それから金欠解決のためのクエストを今日も探し始める。
<童話分隊>の日常だった。
◇
なお、完全に余談だが……とあるメイデンの食費はアスマのモンスターの食費を上回るらしい。
To be continued




