“神殺し” ④
(=ↀωↀ=)<久しぶりの更新
(=ↀωↀ=)<ちょっとお仕事が立て込んでました
(=ↀωↀ=)<そしてお仕事終えて気を抜いたら
(=ↀωↀ=)<熱出して寝込んでました
(=○ω○=)<今は元気です
(=ↀωↀ=)<あ、今回はTouch the GAME OVER読了推奨
□■管理AI十一号作業領域
本を見かけたとき、ドーマウスは時々思うことがある。
自分達管理AIはなぜか作業領域に本を置きたがる、と。
チェシャが<マスター>を迎える部屋を書斎にしているように。
レドキングが、多くの本を“監獄”に設定しているように。
管理AIの過半数は、何らかの形で本を傍に置く。
本の中には、自分達の仕事に関連したデータファイルをあえて本の形に収めたモノも多くある。
ハンプティも、自身の記録してきた<エンブリオ>のデータをそのようにまとめていた。
『…………』
そうするのはきっと、自分達が長く生きてきたからだろうとドーマウスは考えている。
あんまりにも長くて、あんまりにも多くが有って、無くなって。
目に見える形で記憶を傍に置いておかなければ、少し不安になってしまう。
そんな思いの顕れが、自分達の本だと思っている。
しかしそれらの本と、双子……管理AI十一号トゥイ―ドルダムトゥイ―ドルディーの本は意味合いが違う。
『…………やはり、膨大である』
ドーマウスは部屋の天井を見上げる。
いや、それは部屋などというサイズではない。
体育館? スタジアム? いいや、違う。
それは――コロニー。
その空間は、床も壁も天井もない。
円筒形の広大な空間が、びっしりと本棚で埋め尽くされている。
恐らく、人の人生を費やしても見えている本の百分の一も読めはしない。
ましてこれらの本棚はスライド式であり、その下にはさらに数百層の本棚が連なっているとドーマウスは知っている。
何より、本の形をしていても……実際はより高密度に圧縮された記録メディアである。
全人類でも読み切れない情報がここにはある。
管理AI十一号作業領域・『集合知大図書館』。
<Infinite Dendrogram>で管理AIが獲得した全ての、……それ以前も含めた全ての情報がここに集積されている。
双子は、それを管理している。
普段はクエスト難易度の算出や<DIN>による情報のコントロールを行っている。だが、アリスのアバタースペースやレドキングの“監獄”と同様、この設備の管理も双子の重要な役割となっている。
かつては、自分達の全データベースを担当していた名残だ。
『トゥイードルダム、トゥイードルディー。ここにいるのであろう?』
ドーマウスが呼び掛けるが、返事はない。
仕方なしに、この空間の更に先へと進んでいく。
『む、いたのである』
しばらく進むと、小さな球体が見えた。
無数の本が衛星の輪を連ねたように宙に浮かび、出来上がった歪な球体。
その中心に双子はいたが……普段とは様子が違う。
トゥイードルダムは眼鏡を、トゥイードルディーはヘッドホンを外している。
正確に言えば眼鏡とヘッドホンを外している。
トゥイードルダムの目は天文学的な数の情報に目を通し、トゥイードルディーは同数の言葉に耳を傾けている。
それらの情報を彼らの中で噛み砕き、求める答えを演算している。
『…………』
その様子を見て、ドーマウスは少し待つことにした。
彼らがそこまで集中しなければならない状況ならば、待つべきだと考えた。
待っていても、ドーマウスの仕事にさほどの支障はない。
むしろ、彼らの情報整理が早く終わることこそが重要だからだ。
そうしてしばらく待った後、双子の周りを衛星のように回っていた本が元あった場所に戻り、双子は眼鏡とヘッドホンを掛け直していた。
「三時間二四分一八秒待たせたな、八号」
「おまたせ~ドーマウス~」
双子が揃ってドーマウスの方を向き、そう言った。
『何を熱心に調べていたのであるか?』
「君の要件にも関わっている事柄だ」
「【疫病王】の発言のあれこれの分析~」
トゥイードルディーの言葉に、ドーマウスは納得したように頷く。
小国とはいえ、王国の隣国を滅ぼした【疫病王】。
その次なる行き先が王国か否かはドーマウスにとって……ドーマウスが管理・保護している存在にとって重要だからだ。
「先にそちらの結論を述べよう」
「まず間違いなく次は王国行きだね~」
『……であるか』
半ばそうではないかと思っていたが、やはりと確信してドーマウスは溜息を吐く。
これで、最悪の場合は国内に死者のリソースが大量に発生することになる。
それは彼にとって決して喜ばしくないことだ。
「それより問題なのは、奴が述べた言葉だ」
「あれってただの独り言じゃなくて、こっちへのメッセージっぽい~」
メイヘムの王宮の庭でのキャンディの言葉は、狂人の独り言であるかもしれない。
だが、仮に真実であれば……告げているのだ。
『目論見通り無限への到達は目指してやる。だから妙な横槍を入れるな』、と。
『実際どうなのであるか?』
「情報が核心を突きすぎている。精査してみたが、我々の感知しきれない向こう側で情報提供を受けたのでもなければ……真実だ」
「インフィニットクラス~。まぁ、私達って私達と、あの災害くらいしか直接は知らないもんね~。ここの土台を作ったのが無限職らしいって情報も間接的で不確かだし~?」
管理AIといえど、全てを管理しているわけではない。
<エンブリオ>と並んで根幹を成すジョブについてはほぼノータッチであるし、交戦した先々期文明よりも前の情報はほぼない。
強いて言えば、<UBM>になったモノの中にはさらに古い時代に生まれたモノもいるという程度だ。
代表格は<イレギュラー>の【天竜王】と【海竜王】、そして<SUBM>の【七曜統率】である。
「0号によれば向こう側にもインフィニットクラスはいるらしいが、表舞台には出てきていない」
「0号もね~。私達とは世代が違うから色々知ってるんだろうけど~」
「奴は、関係ないことと言って多くを語らない」
「『関係があるインフィニットクラスは、我々以外には精々で無限職だけだろう』とか随分と昔に言ってたしね~。他に幾つあるんだよってね~」
『…………』
管理AI0号。
発生順で言えば間違いなく最古参だが、ドーマウス達とは立ち位置が異なる。
あえて言うならば、無限担当管理AI。
他の管理AIの暴走を抑え、監督することが0号の仕事だ。
ゆえに、本体の使用も今は彼の許可が必要になる。
『……0号、であるか』
自分達を管理しているが、自分達のリーダーではない。
二〇〇〇年前の戦争も、それから準備を続けた今も、協力関係にはある。
しかし、どこかで一歩引いているようにも感じる。
思い出すのは、遥か昔に聞いた言葉。
『私は保護者であり、見届け人』
『君達がプロジェクトを進めるならば止めはしない。協力もしよう』
『私は最後まで君達と、君達の同調者の選択を見届ける』
決して敵ではないが、そのスタンスゆえに全てを教えてくれる訳ではない。
今回の件も、恐らくは聞いても答えはもらえないだろう。
「兎に角、現時点では【疫病王】の正体は不確定だ」
「けど、どっちにしても特殊な処理はできないけどねー」
「そもそも【疫病王】が何だとしても行動自体に問題はない」
「<マスター>の自由の範疇だからね~」
『……であるな』
<マスター>は自由である。
国を一つ滅ぼすことも、可能ならばやってもいい。
それで敵を作り、報復を受けることも含めての自由だ。
「それに特殊な処理をしないのであれば、そもそも我々ではあれを止められない」
「私達の誰も、彼を止める担当じゃないんだから~」
デスペナルティによって“監獄”に放り込むならばまだしも、<Infinite Dendrogram>に従来のオンラインゲームのようなBANは存在しない。
“監獄”への収監自体もティアンの法によったものであるため、運営が率先して課すペナルティはほぼないと言える。
そして、他の手段でも止めることはない。
アバター担当のアリスは止めない。キャンディは禁則事項に触れたわけではないし、ティアンを万人殺そうと止める理由にはならないとアリスは考える。
ラビットも担当外。彼のアバターとしての役割は第六の<マスター>を襲撃して進化を促すことであって、<超級>に至ったキャンディは対象外。
“監獄”担当のレドキングにしても、担当するのは収監された後からだ。
強いて言えば雑用担当のチェシャだが、本体ならばともかく第六……第七の出力では相性的に勝ち目はない。
そして危険物担当でもあるドーマウス自身も、<マスター>は対象外だ。
「あれの行動はジャバウォックによる<SUBM>の投下と、意味合いは変わらない」
「こわ~い災厄であればあるほど、他の人の進化の引き鉄となる確率は上がるから~」
ドーマウスはその発言に眉をひそめたが、しかし否定はしない。
個々の管理AIによって限度の差異はあれど、そういうスタンスで進化を促しているのは確かだからだ。
ただ、ドーマウスの管理する対象は<マスター>の進化要因とするにはあまりにも危険であり、致命的だ。そのため、作動に関わりかねない今回の件を問題視している。
『何も出来ないのであるか……?』
「<DIN>の社長として、彼が犯人であるという情報を公開し、賞金をかけるように働きかけてはいる」
「証拠の情報は用意したし、運よくメイヘムの生還者もいたからね~」
「討伐のための人員を動かすならば、今回の件もプラスに転じやすい」
「<マスター>が討伐に動けば、進化する人も出るかもしれないし~?」
「もっとも今の【疫病王】を倒せる<マスター>が」
「どれだけいるかも分からないけど~」
ドーマウスは双子の言葉に疑問を覚える。
キャンディは恐るべき広域制圧・殲滅型だ。
しかし、より射程の長い攻撃能力の持ち主はいない訳ではない。
あるいは、カルディナの“万状無敵”のような者もいる。
倒す手段は、いくらでもあるはずだ。
「少し、厄介なものが【疫病王】の手に渡ったからな」
「鬼に金棒みたいな~?」
『一体何を手に入れたと……?』
「「武具」」
ドーマウスの問いに、双子が声を揃えて答える。
武具……今この状況でそれが示すモノを、ドーマウスも思い浮かべる。
ある意味で、最悪の逸品を。
「あれは上位の特典武具に比肩する性能だが、特典武具ではない。加えて厄介な特性を持つが……アレの目的を考えれば妥当でもある」
「今頃ジャバウォックはちょっと楽しんでそうだよね~」
「これまでティアンの所有者が殺害されたケースはなかったが……」
「今回が初ケース~」
『……その、武具とは?』
毛皮にないはずの汗腺から冷や汗が流れるような感覚を味わいながら、ドーマウスは重ねて問う。
自分が恐れる事柄が答えであることを、ほぼ確信しながら。
「それは」
「もちろん~♪」
そうして双子の口から出た言葉は、やはりドーマウスの予想通りのものだった。
◇◆
□■首都メイヘム跡地
メイヘムが滅んでから、二十四時間が経過した。
しかし住人が全滅しても、家屋は何も傷つかずに遺り続けている。
滅亡前後の違いは、家屋の中や路上に白骨が転がっているか否かだろう。
『…………』
物言わぬ躯の置き場と化した街を、見下ろす者がいる。
それは紫電爆ぜる翼を持った、一頭の雷竜……刀理の友であった【ハイエンド・ライトニング・ドラゴン】アルクァルだった。
彼に託されたマールを王国の人間に預け、彼自身はこのメイヘムに舞い戻っていた。
そして、細菌の届かぬ上空から眼下の無人都市を見下ろし続けている。
『…………』
無言で何かを待ち続けるアルクァルは、既に刀理の死を悟っていた。
もはやどこにも、彼の気配がないからだ。
そして眼下には……見えている。
彼の鎧を纏い、頭蓋骨を晒した屍がうち捨てられているのだ……。
けれど、アルクァルにはその躯を抱き上げることも、弔うこともできない。
メイヘムには今も、致死性の細菌が充満しているからだ。
彼の躯に、アルクァルができることは何もない。
その事実に悲しみと、自らの無力への憤りを抱く。
彼が守れなかったのは、これが二度目だ。
一度目は、【三極竜 グローリア】の襲来。
かつての彼は【雷竜王 ドラグヴォルト】として、悪しき竜が人界へと降りることを防ぐ門番として<雷竜山>にいた。
だが、【グローリア】との戦いに敗れた結果、人界を襲った【グローリア】によって王国のルニングス公爵領は壊滅し、彼の友人であったルニングス公爵も死亡した。
彼自身は父である【天竜王】の手によって蘇生したが、失ったものはあまりにも大きかった。
誇りも、力も、自負も、友も、何もかもを敗北によって失った。
今の彼は、<UBM>でもない。
だからこそ、彼は自らの力を取り戻す……否、かつて以上に高めるために修行の旅に出た。
<雷竜山>の門番の役割を弟に任せ、彼自身は<境界山脈>の外に出て自らを高める。
あるいは<UBM>と戦い、勝利できればそのリソースで再び<UBM>に至れるかもしれない、と考えてのことでもあった。
そんな旅の中で出会ったのが、【勇者】草薙刀理だった。
人化していたときに出会い、共にとある事件を解決し、互いを認め合った。
そして未だ自分に足りないものや新たな力を見出すため、彼のテイムモンスターとして旅に同行した。
刀理との長くも短い旅を、彼が忘れることはないだろう。
だが、その旅は終わってしまった。
【疫病王】という、最悪の人災によって。
『…………!』
彼が今このメイヘムの空にいるのは確認と……代役だ。
はたして友が【疫病王】を打ち倒せたか否か。
仮に倒せていなかったならば……友の代わりに自らが【疫病王】を倒すという決意と共に待っていた。
『――来たか』
彼はここで待ち続け……そして仇は現れてしまった。
【ブローチ】の破壊から二十四時間が経過し、【疫病王】は自らが滅ぼしたメイヘムに帰還した。
【雷竜王】が見下ろした街、刀理の躯のすぐ傍に。
刀理は、倒せていなかった。
ならばアルクァルがやることは一つだけだ。
顎を開き、翼を広げ、自らの雷気を極限まで高めていく。
それこそは、【雷竜王】の頃から彼の代名詞でもあった必殺のブレス。
『――《ライトニング・ヴォーテックス》!!』
――渦巻く雷光が地上までの数キロを瞬時に駆け抜ける。
落雷の如く、落雷より激しく、【疫病王】を塵へと変える天の怒り。
細菌の届かぬ天空から、雷光が空気と細菌を灼きながら【疫病王】に到達する。
力を失って弱まったとしても、天の稲妻は人体一つ消滅させるのに不足はない。
地に至った雷鳴が爆ぜ、周囲を焼き焦がす。
『…………』
それは当然、刀理の躯も含まれる。
彼の骨も炭化し、そして灰になって風に流れていく。
あるいはそれはアルクァルにとっての葬送なのだろう。
細菌の海に沈み、もはや埋葬も叶わず風化を待つしかない友の骨を、荼毘にふしたのである。
そうして、友の復讐と葬送を終えたアルクァルは……。
――雷撃の着弾点で、無傷のまま立つキャンディを見た。
『…………!?』
「晴れなのに雷なのネ。まぁ自然現象じゃないけれど」
最上位純竜であるアルクァルのブレスを受けてもなお、傷一つ負っていなかった。
それは再装備可能になった【ブローチ】……によるものではない。
『あの、装備は……!』
キャンディの身は、普段着ているフリルの衣服の外側にレインコートのようなものを着込んでいた。
それは、特典武具の一種。
これまでキャンディが人間同様に……あるいは人間以上に無差別殺戮したモンスターに含まれていた<UBM>から得たもの。
それは、アルクァルにとって天敵とも言える《雷吸収》のスキルを有していた。
<UBM>を数多討伐したキャンディは、このような耐性装備を幾つか所有している。
だが、アルクァルが驚愕したのはその装備に対してではない。
キャンディがレインコートのフードの内側に被っている――兜を見ての言葉だ。
「それにしても、レインコートに武者兜。これ、流石にちょっとないコーデなのネ」
自らの装備をそう評し、キャンディは嫌そうにそう言った。
その兜の元々の持ち主が誰であるか、言うまでもない。
それこそは、【試製滅丸星兜】。
キャンディに刃を届かせた……刀理の武具だ。
かつて【勇者】草薙刀理が、海上で鎧武者……【五行滅尽 ホロビマル】と戦い、膝を突かせたことで手に入れた武具だ。
特典武具に限りなく近く……しかし特典武具ではないアイテムだ。
<マスター>と違い、ティアンの死後は特典武具以外のアイテムはその場に遺る。
そして、この兜は特典武具ではない。
キャンディは刀理の躯から【試製滅丸星兜】を奪うことができた。
兜自身も自らの所有者に勝利したキャンディを、新たな所有者と認めたようでさえある。
キャンディは兜の効果を確認し、有用と認めた。
そして今、ログインした直後に警戒のために兜を装備。
兜の力で上空から自身を攻撃する『敵』であるアルクァルを察知・視認し、即座に《瞬間装着》で雷への耐性装備を身につけたのである。
【試製滅丸星兜】の効果により、敵対行動をとった時点でキャンディは敵対者の姿を見る。
攻撃の予兆を感じ取ることができる。
この対応力の上昇は、【疫病王】を討伐せんとする者にとっては大きな壁となる。
広範囲の致死性細菌によって守られ、細菌のアウトレンジ……超長距離からの攻撃でしか倒す術がない【疫病王】。
しかし、もはやアウトレンジからでも倒せない。
攻撃しようとしてもそれを【試製滅丸星兜】で察知し、即座に対応装備を身につけるか……ログアウトで逃げてしまうだろう。
近づいて触れればログアウトを阻止できるが、そもそもキャンディには近づけない。
そして超長距離からゼロタイムで攻撃できる者など、ほとんどいない。
黄河にいる迅羽のテナガ・アシナガ、その必殺スキルくらいのものだ。
それとて、索敵によるロックオンを察知すればキャンディは逃げる。
あるいは細菌を物ともせぬ防御能力の持ち主がいたとしても、近づいてくる段階で察知して同様に逃げることが可能だ。
どうしようもなく、キャンディと兜は相性がいい。
生きているだけで広範囲を殺傷するキャンディの、生存力を高めてしまっているのだから。
『…………クッ!』
アルクァルは友の遺品を奪った仇敵に怒りを抱くが、しかし何も出来ない。
雷のブレスはキャンディに通じず、近づいて爪牙を浴びせんとすれば細菌によって滅びる。
命を賭して、イチかバチかで、突撃することはできる。
しかし、今のアルクァルにそれはできない。
まだ友に託された役目を……終えていないからだ。
だからこそ、怒りと悔しさと無力感を抱えたまま……彼は飛び去るしかなかった。
その様子を、キャンディは特に何とも思わぬままに見送っていた。
◆
疫病の国に囲まれた王は、更なる防衛手段を獲得した。
手の打ちようがない人界の災厄となって……彼は王国を目指す。
To be continued
○【五行滅尽 ホロビマル】
自らを破って膝を突かせた者に、自身を構成する武具を与える<SUBM>。
武具は全部で五つ。
【試製滅丸星刀】
【試製滅丸星兜】
【試製滅丸星薙刀】
【試製滅丸星弓】
【試製滅丸星鎧】
アジャストせず、命名規則にも則っていない武具。
しかしホロビマル自体の特異性、そして特典武具を上回る性能の高さもあってそれらは特殊な特典武具として認知された。
【ホロビマル】は行動のスタンスも含めて<UBM>としてとびきりの変わり種であったため、武具も変わり種で不思議はないということである。
なお、「実は武具の形をしたモンスターなのではないか」と疑われもしたが、アイテムボックスに収納可能であり、《看破》に反応しなかったことから否定されている。
また、現時点では草薙刀理が唯一のケースであるが、所有者が殺された場合は殺害した者に所有権が移る。(<マスター>のデスペナルティは該当しない)。
その事実を知る者は、所有権の移動について他にも該当するケースがあるかもしれないとも考えている。
最終的に、自分自身である五つの武具を失ったホロビマルの姿は消えていた。
それゆえ、既に討伐されたものと天地の内外で認識されている。
討伐者の幾人かはそれを怪しんだが、ホロビマルが消え去り、武具が残ったことは事実であるためその認識を受け入れた。
認識の真偽は、未だに不明である。