開始/人を殺す為の覚悟
「何を言っているんですか!」思わず今が面接中であり、店の中であることも忘れて鈴白さんに怒鳴ってしまった。
「もちろん君の言いたい事も分かる。私自身がそうだったからな。」俺の話を聞いて鈴白さんは前もって用意していたかのような答えを瞬時に言った。
俺がその言葉の意味について問う間も与えず鈴白さんは別の事を話し始めた。
「君にある人の話をしようか。誰よりも優しく、誰よりも強く、そして私が殺した人の話をね。
そう前置きして鈴白さんは話し始めた。
『まずは・・そうだね、その人の名前から話すとしようか。
その人の名前は、「佐藤 練{さとう れん}」と言う。この人は私の直属の上司に当たる人でね、私をこの世界に引き込んだ張本人でもある。その話についてはおいおいするとして、当時の私はこの人とコンビを組んで、異世界チート達と戦っていた。私の考え方や技術の殆どはこの人から教わった様な物だ。
すまない、少し話がそれた。それじゃあ本題に入るとしようか。
忘れもしない、あれは3年前の夏のことだ。その頃の私は仕事を始めてから1年ほど立ったということもあり、仕事をこなすことにも慣れてきた。そしてこの頃からだな、佐藤さんとの口論の機会が増えたのも。
口論の原因については察せるかもしれないが、方針の違いでな。私は相手のことを無力化出来ればいいと考えていたが、佐藤さんは相手を必ず殺すべきと考えていた。私達はお互いに話し合ったりもしたが、結局平行線のままだった。
まあそんな状況でも仕事なんかはしなくてはならない。私達はその日も異世界チート達を倒しに行った。。そして倒すことができた。
けれどその後が問題だった。私は今でもあの時の事を夢に見る。彼らはね、「自爆」したんだ。
その時私はたまたま助かったが、彼は巻き込まれて死んでしまった。私がとどめを刺さなかったせいでね。』
そう一息に話し終えると、鈴白さんはすっかり冷めてしまったコーヒーを一息に飲み干した。
「これが私の昔話、そして君の質問への答えさ」
俺の目を見て鈴白さんは言った。それは俺に質問の答えを求めているようだった。
「私も遅くなりましたが先程の質問に答えさせていただこうと思います。」俺は少し緊張しながら自分の選んだ答えを話すことにした。