星空の国の話
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内容を少し訂正しました
昔々、小さな島国がありました。
その国は極地に近い所だったので大変寒く、それに加え陽の当たりも悪かったので、
土地はとても痩せていて植物は苔のようなものしか育ちませんでした。
良いところがあるとすればたった一つ、星空がとても美しいことくらいでした。
周りには何もないので、晴れた時はいつでも満天の星を眺めることが出来ました。
また、陽光が弱いので、昼間でも星が見える時もありました。
特徴がそれくらいしか無かったので、星空の国とみんなで呼ぶことにしました。
昼はとても短く、反対に夜が長いので、住人たちは昼夜逆転した生活を送っていました。
みんな星を観ることがとても好きでしたし、大変目が良く、光に弱かったので暗くとも何も問題はありませんでした。
寒さは、魔法を使えば平気でした。
この国の人々は、強力な魔法が使えました。
王様に至っては、出来ないことはないくらいでした。
彼らは争うことを嫌ったので、こんな辺鄙な場所に追いやられてしまいました。
ですがその力のお陰で、そんな場所でもとても高度な文明を築くことが出来ました。
そんなある時、へんてこな服を着た人達が大きな船に乗ってやって来ました。
みんなは好奇心でその人達を見に海岸へ集まりました。
その人達は唇を紫色にして、震えていたのがあまりにも可哀想だったので、防寒着を提供しました。
コートや耳あて、ブーツには凍えないように暖かくなる魔法がかかっていて、
手袋には手がかじかんだり指先が冷えたりしない魔法がかかっていました。
そして、この辺りで一番大きく、保温性のある物置きをそれなりに整え、そこに招いて暖を取らせることにしました。
唇の色が戻り、充分に口がきけるようになると、一番へんてこな格好をしていた人が言いました。へんてこ集団の代表者のようでした。
『この国はどうして、今は昼の筈なのに太陽が見当たらないのか』
円盤状のものを取り出して見せました。それは時を計る道具のようでした。
上手く説明できるのは王様だったので、みんなは王様を呼ぶことにしました。
この国での王様というのは、国一番の物知りで何でもできる頼れる人という存在でした。
特に身分差というものはありませんでしたので、困れば王様を呼ぶのが当たり前でした。
呼ばれた王様は、
太陽はちゃんと存在していて、
緯度や経度の関係で昼がとても短いことや寒いこと、
時差でこの国は今、夜である事を教えます。
が、相手の方は
『何を訳の分からん事を言っている』
『太陽は神が私たちのために同一に与えたものだ』
『お前が太陽を独り占めしているんじゃないのか』
『あるなら今すぐ出せばいいのではないか』
と言い、話を聞いてくれません。
それこそ訳の分からない事でした。
太陽を今すぐ出すことは流石の王様でも出来ない事でした。それはつまり、この星の環境を変えてしまうことに繋がるのですから。
断ると、疑ったような顔をした代表者は首飾りを取り出し、掲げました。
すると、それは鋭い光を放ちました。
王様は突然の強烈なそれに、目を手で覆います。
目に走った激痛に、思わずうめき声をあげました。
全くわけが解らず混乱している王様をよそに、代表者の声が《あくま》だと叫びます。
そして王様はへんてこな人たちに捕らえられ、十字に組んだ木の柱にかけられました。
両手は錆びた杭で柱に打ちつけられ、両足は錘のついた拘束具で柱に固定されました。
こんな事をされる理由はないと訴える王様を彼らは一瞥して、集まっていた人たちに言いました。
『彼の正体は悪魔だ』と。
首を傾げる彼らに言います。
『奴は太陽を隠していたのだ。まあ君達はそのことすら理解できていないようだがね』
『太陽は神が私たちのために同一に与えた恩恵。それを私欲で隠してしまうとは。何という大罪人、まさに悪魔』
『悪魔に支配されていた無知な善良なる国民達よ、喜ぶといい』
『神が愚鈍なお前達を救うために我々を遣わしてくださったのだから』
怪訝な顔をしている人々にへんてこな人たちは、
『使徒様のお言葉が分からないなんて、なんて可哀想なんだ』
と哀れみの目を向けました。
『目を覚ましなさい。奴の正体を暴いて差し上げましょう』
そう言うと代表者は小瓶を取り出し、中身の液体を王様にかけました。
それは、ハーブの匂いに加えて、かすかに油の臭いがしました。
火をつけると液体は勢いよく燃え上がり、代表者は叫びます。
『見よ、聖なる水が燃え上がる。これが悪魔である証だ』と。
油が入っているのなら燃えるのは当たり前です。驚いた人達は王様を助けるため魔法を使いました。
しかし、何故か魔法が発動されません。
王様を助けようとした人達は、悪魔の協力者だとして鉛玉を心臓に食らい、動かなくなりました。
動揺する彼らを他所に、代表者は
『悪魔に支配されていたこの場所は、浄化する為今から我々が管理する』
と宣言しました。
『さあ、悪魔どもを狩って、この土地を清浄するのだ』
『これは神の命令だ』
気付いた時にはもう遅すぎました。
彼らはこの土地を手に入れる為侵略してきたのでした。
神の名を借りて。
侵略者達は国民を次々と捕らえられ、抵抗する者には鉛玉を喰らわせました。
全身に大火傷を負った王様は、自分の命を保つことに精一杯で国民達を救うこともできません。
王様は、ただ惨状を見ていることしかできませんでした。
このままではみんな死んでしまう。
王様は哀しみ、侵略者達を憎みました。
そして己が無力であることを何よりも怨みました。
それは呪詛として王様から溢れ出し、彼を焼いていた炎と混ざりました。
呪いとなった炎は地を駆け、国土を覆いました。
それは国民達を眠らせ、侵略者達を消し炭にしました。
呪いから逃れた侵略者達は、捕らえたわずかな国民を連れて自国へ逃げるように帰って行きました。
残ったのは、深い眠りについた国民達と、
侵略者の残骸だけでした。
平和だった国は、もう戻って来ません。
王様は慟哭しました。
国中に響くほどに、
涙が枯れ果てるまで。