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第90話 麗しき、同胞との共闘(強制)


「〈風門エアロゲート〉からの振撃!!」


風の門を通り抜け、圧倒的加速をもって魔族へと迫る。

視界から消えるほどの速度を持った拳はしかし、ついに魔族へとは至らなかった。


「そいつはもう俺様には当たらんぜ!!」


「チィ……!!」


どうやら〈風門エアロゲート〉から振撃につなげるコンボはその弱点が見破られてしまったらしい。


元々即興で作った技だったから穴も多かったがここまで早くに攻略されるとは思わなかった。

そもそも〈風門エアロゲート〉で加速するには距離が必要だ。

ある程度距離があるから風で加速することができるし、中途半端な距離では普通に殴った方が早い。

とは言え無理に距離を取ろうとすれば、技を使おうとする思惑が相手に筒抜けになる。


そしてこの複合技の最たる欠点として〈風門エアロゲート〉の先端にしか移動できないと言う物がある。

発動した〈風門エアロゲート〉に飛び込んで風に乗り、先端から飛び出して速度の乗った振撃を叩きつけるという技の性質上、急激な方向転換が利かない。

どんなに攻撃が早かろうと、発動の前動作があり攻撃が来る場所が分かるのなら避け様はいくらでもある。


と言うわけで〈風門エアロゲート〉単体で使用してもさしたる効果は望めないだろうな。


「今だ!一斉掃射!!」


「「「火槍ファイアランス!!」」」


睨み合いになったそこに冒険者達が俺もろとも巻き込むように魔法が発動された。

俺はもちろん魔族もこんなわかりやすい攻撃を食らう訳がない。

ので、魔族の足を引っ張ってみた。物理的に。


「〈土腕クレイアーム〉」


魔族の足下から生えてきた一対の土の腕がその両足をガシッと掴む。


「はッ!?ちょ、おま……!?」


「あばよ、とっつぁん」


「このクソ人間がァァァ!!!」


なんと言うことでしょう。哀れ、魔族は避けられる筈の攻撃を受け止めることになるのでした。


「皆さんご協力ありがとう」


魔族が炎に飲まれるのを確認した後、ニッコリ笑って魔法を使った冒険者に感謝の言葉を送った。


「もうやだぁ!!何なのよあいつ!攻撃する度全部利用して!!」


「あのにやけづらが!にやけづらがああああ!!!」


「無理だ!我慢できねえ!!」


「やめろ!!そんなことをしても……!!」


「震撃」


「へぶッ!!?」


「「「ああ……」」」


感謝を告げただけなのに何故か殴りかかってきた冒険者を、とりあえず邪魔にならない程遠くまで吹き飛ばしておく。

冒険者がしてくる妨害を利用することがいろいろな意味で効率的だと気づいた俺は徹底して行動していた。

俺の邪魔をしてくる冒険者を悉く利用するスタイルで戦闘をしてみると、とても楽しい。

精神攻撃は基本です。

直接攻撃してくるヤツは全員吹き飛ばしていたらようやく分かってくれた様で、ついに近寄ってくるヤツはいなくなったのだが、さっきからちょっと復活してきている。

まあ強制的に一方的な共闘態勢に持って行ったのは、俺の気分的には大成功だったので良しとしよう。


それはそうと早くこの魔族を倒さなければいけない。

ライム達に合流するためにもさっさと仕留めたいのだがなにぶん硬い。

障壁を追加で9枚砕いて、現在は残り11枚となっている。

かなり追い詰めている筈なのだが、これ以上は時間を掛けるのはあまり良くない。


「死ねクソ人間がァ!!」


「おっと」


煙の中から飛んできた黒の槍を危なげなく躱す。

考えるまでもなく魔族は無事だったようだ。


「〈黒爪ネイルスライス〉!!」


「〈氷魔剣アイシススパーダ〉」


追撃とばかりに闇魔法の黒爪で切り裂いてきたので黒剣に氷を纏わせ、迎え撃つ。

ぶつかり合った爪と剣から甲高い金属音が鳴り響き、魔族が顔を歪めると爪の方がはじかれた。


「チィ!!」


これ以上の接近は不利だとでも思ったのか魔族は後ろに飛んで逃げようとする。

逃がすかよ。


「〈岩壁ロックウォール〉」


「いてェ!?」


魔族の進行方向に壁を置くと突っ込んでいき、ゴンと言う音とともに頭を押さえて呻くことになった。

その隙を逃がさず肉薄し、振擊を放つ。

魔族の方も慌てて復帰し、咄嗟に上に逃れていった。

どうやら自力で飛べるようで落ちてくる様子はない。

そういえば最初に現れたときも飛んでいたな。


「これでお前の攻撃は届かんぞ!!」


「へぇ?それはどうかな?」


優位性を得たとでも思ったのか、ニヤニヤと鼻高々に飛べることを自慢している魔族めがけて地面を蹴りつけ、飛び上がる。


「馬鹿め!!空中では避けられないだろ!〈黒槍ダークランス〉!!」


いや、できるけど。

迫り来る黒槍に天駆を使って空を蹴り、跳び避ける。


「は?」


全く予想していなかったのか一瞬惚けた顔をしている間に一気に後ろに回り込み、後頭部にかかと落しをたたき込んで地面に蹴り落とした。

残念ながら障壁は割れなかったので、追撃を移ろうとしたところで、ハタとその動きを止める。

即座に〈浮遊フロート〉を使って空中に留まる。


気味の悪い感覚を覚えた。

それは内臓がねじられるような生理的嫌悪だった。

その嫌悪感の方向には森があった。見ればこちらに向かって一直線に木が倒れて来ている。

何か来ている。酷く嫌な物が。

地面に降りていき体を起こした魔族を睨み付ける。


「お前、何を連れてきた?」


「はァ?連れてくる?魔物以外に何かあんのかよ?」


何を言っているのか分からないといった風に顔をしかめている。

かと思ったら目をむいていきなり振り向いた。


「ンだこりゃあ……?なんて気持ちワリィ気配だ……」


今気づいたと言わんばかりのリアクション。

それを見て俺はこの魔族にとってもこれが想定外の事態なのだと悟った。


なぎ倒される木が近づいて行き、そうして遂にたどり着いたそれは酷く醜悪な姿をしていた。

テラテラと黒光りする表皮に、体毛が全く生えていないツルツルの肌。体はぶよぶよしていて、見るからに嫌悪感を誘う。周辺には黒い煙が漂っていて近づくだけで体に悪そうだ。大型トラックほどの大きさがあり、木を薙ぎ倒していた事からも力は強いのだろうと思われる。


「お前はあの黒肉団子とは関係ないのか?」


「タリメーだろうが!誰があんな気持ちワリィのを好き好んで連れてくるかよ!!てか黒肉団子ってなんだよ」


「黒肉団子は黒肉団子だ」


いやそれは良いんだ。

問題なのはあいつが見た目の割には強いと言うことだ。

少なくとも周囲の冒険者はおろか、ダンジョン産の魔物でも太刀打ち出来ないほどの力を感じる。

魔族の出現と合わせて、これ以上のイレギュラーはよろしくないのだが。非常に面倒だ。


「ウボオオオォォォォ……」


「おい嘘だろ!?テメエ何やってんだ!!」


少し目を離している隙に黒肉団子は、偶々近くにいた戦闘中の魔物と冒険者の方へ向かっていた。

黒肉団子に背を向ける格好で戦っていたオーガは接近に気づいた様子はなかった。

逆に冒険者パーティーの方は危険を敏感に察知したようで、全員が緊迫した面持ちで、撤退の機会を伺っている。


そして遂には気づかれないまま近づいた黒肉団子がオーガに組み付いた。

いや、それは抱き付いたと表現した方が適切かもしれない。

ともかく冒険者パーティーの方はその隙に乗じて逃げ出せたが、オーガの方は勿論そうは行かなかった。

黒肉団子から逃げだそうともがくが力で押さえつけられ逃げることを許されない。


「……食ってやがる」


悲痛な叫び声を上げるオーガのことは気にする素振りも見せずに一心に喰らい続ける。

それは自然の中では当たり前の事の筈なのに、どこか生命そのものを冒涜しているようにも見えた。


「離れやがれ団子野郎!!」


いつの間にか黒肉団子まで飛んで行っていた魔族が、黒槍を投げつけている様だが相手に堪えた様子は無い。

それどころかまるで面倒な虫でも現れたかのごとく、緩慢な動作で腕を振って払おうとしている。

腕を避け続けていた魔族だったがやがて避けきれずに掠ってしまった。

すると冷や汗を流しながら過剰とも思えるほどに距離を取った。

何かされたのか?障壁の方は健在のようだしダメージを受けた様子も無いが、さっきとは打って変わって動きが消極的になっている。


考えていても埒が明かないか。

兎にも角にも情報が必要だ。


「鑑定」



ステータス

イビルクリーチャー

レベル:138

HP :14652/25473

MP :8762/16529

筋力 :24523

耐久 :13563

魔力 :8698

魔耐 :12563

敏捷 :6987

運  :1

スキル:ユニーク―悪食・再構築・殺意の衝動


     戦闘術―暴力


     身体術―身体強化Lv10・身体硬化Lv8


    能力強化―軟体


      耐性―物理耐性Lv8・暗黒耐性Lv7


   エクストラ―超再生・回復速度上昇Lv8・回復効果上昇Lv7


 魔法:-


???:???


 称号:醜悪なる者・喪われし者




『悪食』……あらゆる物を食し、HP・MPへと変換する。変換上限はない。


『再構築』……失われた体を再び作り直す。


『殺意の衝動』……あらゆる生物に対して止めどない殺意を抱く。自ら制御することは不可能。


『暴力』……もはや戦闘方法とも呼べない力任せの攻撃。


『身体硬化』……体を一時的に硬化させる。硬化中は動きづらくなり全体的な行動速度が減少する。


『軟体』……種族の枠組みを越えて体の稼働範囲が広がる。生き物では不可能な挙動が可能になる。


『物理耐性』……物理的な攻撃全てに耐性を持つ。


『暗黒耐性』……闇に強い耐性を持つ。


『超再生』……再生能力が生物の枠組みを越える。生きてさえいればどのような状況からでも再生できる。


『回復速度上昇』……自身が行う、回復に該当する事象の速度が上昇する。


『回復効果上昇』……自身が行う、回復に該当する事象の効果量が上昇する。


『醜悪なる者』……存在自体が禁忌的な者に与えられる。あらゆる存在から無条件に嫌悪される。


『喪われし者』……不可欠な何かが喪われた者に与えられる。取り戻すことはもうできない。



強い。

ステータスとしては単純明快に物理方面に特化したものだ。

そこに四つもある回復系スキル、防御系統を強化するスキルを三つも持っている事で生存能力が格段に向上している。

『悪食』で回復し、『再構築』で部位欠損をも修復、『超再生』で生存確率を上げ、『回復効果上昇』でそれら全ての効果を底上げするとともに『回復速度上昇』でその速度を上げる。さらに『暗黒耐性』で闇系の魔法に強い耐性を持ち、『物理耐性』で魔法以外の攻撃を減少させ、『身体硬化』で瞬間的に防御能力を更に高める徹底ぶり。


魔族の攻撃が利いていないように見えるのも『暗黒耐性』が原因だろう。

ステータスを見たところではHP、MP共に減少しているが、そもそも魔族の攻撃がダメージを与えられていない。正確にはダメージを回復量が勝り、回復している状況となる。

しかも積極性に欠けてからは、回復している量が増えてきている。今も恐ろしい速度でぐんぐん回復していっている。

それにしても、ダメージを与えられていないのにHPが減っていると言うことは、どこかで傷を負ってここに来たと言ったところなのだろうか。

それとも別の理由でもあるのだろうか?


ともかく魔法の下にある???の項目が酷く不気味だ。

名前さえ分からないのは俺の『上級鑑定』のレベルが足りないせいだと思われる。

もうちょっと積極的に鑑定してレベルを上げておくんだったか。


考えていてもしょうが無い。何もしなければ黒肉団子が回復していくだけだ。

俺は攻撃して様子を見ることにした。


「〈螺旋氷槍スパイラルアイスランス〉」


高速回転する青の槍を4つ同時に黒肉団子に投げつける。

氷槍は深々と突き刺さると同時に炸裂し、体の内部で氷の花を咲かせた。

黒肉団子は痛みからかうめき声を上げるが、やがてそのえぐれた部分も目に見える形で修復されていき、遂には見えなくなってしまった。張り付いていた氷もすぐに割れてしまった。


効いてはいる。効いてはいるが……回復するのが早すぎる。

HPが減っている様子は見られたので連打していれば倒せるだろうが、回復によって攻撃の大半が打ち消されるので多大な時間がかかることが安易に予想できる。

何より俺の魔力の方が持たない可能性の方が高い。さらなるイレギュラーが起こった場合、そちらに魔力を割かなければいけなくなると、攻撃の中止によるこいつの回復と俺の魔力不足によるダブルパンチで現実的な討伐は不可能になる。

つまり――


「ワンパンで倒すしかないか」


「ウボオオオォォォォ…………」


そのとき状況が動いた。



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