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第5話 旅に出ます。探さないでっ!

第5話 旅に出ます。探さないでっ!


やっちまった……!

俺は今やっちまったポーズ(両手両膝を床につき、項垂れて暗いオーラを出す)をしていた。

別名orz

そんな俺が低いステータスに落ち込んでいると思ったのであろう真琴は、慰めの言葉をかけてくる。


「大丈夫だよ!市民の人と同じくらいステータスが低くても、私と優が絶対に守るよ!」


痛いです、真琴さん。

その優しさが痛いです。

悪気なく純粋な優しさで言われたであろう一言が、グサッと突き刺さるんです。


自分の都合でステータスを隠して騙し、挙句それを慰められている。

そしてこのままステータスを隠し続けていくと、真琴と優に気を使わせたうえに足手まといになるであろうこと。


そして無意識にステータスが低いと言われたこと。

俺がホントにあのステータスだったら再起不能だったことだろう。


「そうですよ、シオンさん。ここにいる皆様のステータスが高いだけでこれが普通なのです。気に病むことはありません」


金髪の王女サマも気を遣ってくれたのだろう、慰めてくれる。

あぁ、その優しさが今は辛い……。

俺の自業自得なのに、それを知らずに気を遣ってくれると言うのは、罪悪感として容赦なく突き刺さってくる。


「私たちが、自分達の都合で召喚したのですから無論責任は取ります。ステータスが低いからといって邪険にしたりはしません。だから、安心してください」


俺を安心させようというのだろうか、そう言って包み込むような笑顔を浮かべる。


もうやめて!俺のライフはもう0よ!


はは……。こうなったらいっその事、俺のステータスをばらしてしまえば良い……。

そうすれば、高いステータスと能力を偽ったことで制限を受けるかも知れないがこの罪悪感からは解放される……。

行動しづらくなるかもしれないがなんとかなるさ……。


「いえ、俺は足手まといにはなりたくありません!」


しかし俺は全く違うことを言ってしまった。

なんてことを……!!

今すぐ撤回を!


「足手まといのニートなどごめんです!俺は旅に出ます!探さないでくださいっ!」


俺の意思に反して言葉が飛び出す。

なぜだ!


くっ!こうなったら自棄だ!

腕で目を覆いながら部屋から飛び出そうとするが、生暖かい目のクラスメイトに取り押さえられる。

こんな時だけ団結力を発揮してんじゃねーよ!

おい!そんな目で俺をみるな!


俺がひとしきり暴れたが結局逃げられず、逃走を諦めるとリリーが説得しようとしてきた。

しかし、なぜか俺の決意は固かった。

もう後に引けないというのもある。

ここまで来たらもう意地だ。

結局は王女サマの説得も効果は無く、俺は旅に出ることになった。

ただし、条件付きで。


その条件とは。

まず、7日はこの城の部屋に留まること。

冒険者ギルドで冒険者の登録をして、訓練を受けること。

(訓練が城でなく冒険者ギルドであるのは、他の奴等との差を感じなくても良いような配慮とのこと。後で優に聞いた。チクショウ!心に突き刺さる!)

そして、8日目の旅立ちの日に餞別を受けとること。

この3つだ。


ギルドは、F(仮入門)・E(新入り)・D(初心者)・C(普通)・B(中堅)・A(上級者)・S(強者)・SS(人外)らしい。


他の詳しいことはギルドで聞くことにした。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「本当に旅にでるの?」


「まあな、もう決めたんだ」


「そっか……」


城門の前に幼なじみ3人でいるのだが、会話が続かない。

空はどんよりと曇り、どこか息苦しさを感じる。


「真琴、こいつはもう決めたんだ。笑顔で送り出してやれよ」


優がなんかカッコつけている。

無性に腹立ってきたな。


「おい!何で俺を殴るんだよ!」


「なんとなくだ!」


「理不尽!」


なぜか文句を言ってきた。

優の癖に生意気だな……。


「でも、ここは日本じゃないんだよ?危険な事だってたくさんあるんだよ?」


そう言った真琴はどこか怒ったような表情をしている。

日本で俺が無茶をしたときはよくこの表情をしていた。

たぶん心配してくれてるんだろうな……。

だからもう心配しなくても良いように、真琴に一言伝える。


「大丈夫だ。俺が今まで負けたことがあったか?次会うときはお前らより強いからな。覚悟しとけよ!」


そう言って二人に笑いかける。

こういうときは不安を見せてはいけない。


「そうだったね。そんな気がするけど……私も負けないよ!」


やっと明るい笑顔を見せてくれた。

やっぱこいつには笑顔が似合ってるよな。


「あり得るが、まあ、負けないのは〝俺達〟だけどな」


どや顔で言ってくる。

ウザい。


「おい!酷いな!」


なんか言ってくるが無視だな。


「じゃあ、また会おう」


「うん。またね!」


「ああ、またな」


こうして俺達は別れた。


……既に俺が二人より強く、あと7日はこの城に滞在することを考えると空気が壊れそうなので、頭から閉め出した。


……帰ったら鉢合わせないようにしないとな。


俺はなんだか締まらないまま城を出た。


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