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第81話 泊めてくださ~い


「よう、おっちゃん」


「出やがったな!さっさと帰れ!」


おいおい、手を挙げて親しげに挨拶をしたと言うのに酷いじゃないか。


「随分な言いぐさだな。せっかく客として来たって言うのに」


「チッ!じゃあさっさと飯頼んで帰るんだな!」


「ふっふっふ、悪いな。今日は飯を頼むために来たんじゃないんだよ」


「はあ?何言ってんだ?客として来たってさっき……まさか!?」


「そう、そのまさかだ」


恐らく選択肢にも入れてなかったであろう、その考えに思い至ったらしく、目を剥いて愕然としたおっちゃん。

その姿に上手く行ったと俺はニヤリと笑う。


「ここに泊めてもらうぞ」


「……ああ、その、なんだ……、それくっつけたまんまだと格好つかんぞ?」


……ライムさん、そろそろほんとに離れてくれません?



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


くっついたままだったライムをなんとか離すことに成功した俺は、カウンターでおっちゃんと向き合っていた。


「それで本当にギルドマスターから聞いたんだな?」


「ああ、ガザルからここならほぼ確実に空いているだろうてっな」


実はここ、入り組んだ裏路地という地形もあってか、お客がほとんど来ない。

迷い込んできた時に運良く常連になってくれた人からしか収益はないんだそうだ。まあその確率もお察しレベルだからな。

そしてその客すらほとんど知らない衝撃の事実がある。

実はここ、宿屋なのだ。

飯屋ではない。宿屋なのだ。

大事な事だから二回言ってみたがもう一度言おう。

飯屋ではない、宿屋なんだ。

聞いたときは俺も驚いたものだ。

宵闇亭って完全に飯屋の名前じゃねえか。

名付け失敗にも程があるだろ。

……よく考えると宿屋に飯食いに来るって新しいな。


まあ、それを置いておいても、道に迷ったあげく店に入ってみたら、こんな凶悪な顔つきのおっちゃんと出会でくわすとか大抵のヤツは逃げ出すだろ。

森で熊さんに会うより怖いぞ?

どうにも何かを感じ取ったらしく、こちらを見ていたおっちゃんの目付きがどんどん鋭くなっていく。


「そんなに見つめるなって。……照れるだろ?」


「ぶっ殺すぞ……?」


今のちょっと本気マジじゃなかった?



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「はぁ……。と言うわけで今日からここが活動拠点になりました」


「はーい!」


「了解だ」


「わかりました!」


三者三様の返事を聞き、少しげんなりとした気分になってくる。

なにせここが活動拠点。

つまり一室しかない訳であるからして、必然的に彼女達と同室になるわけだ。

俺も健全な男としては色々と厳しいものがあるわけで。


「なんでお前ら同室にしたんだよ……」


「まあ……」「それは……」「あはは……」


俺の質問に答えるでも無く3人全員が視線を逸らす。

もちろん最初から全員が同じ部屋に泊まるつもりではなく、俺だけ一人部屋で悪いなぁ、等と考えながらおっちゃんに部屋の数を言おうとしていた訳なんだが……。


「おっちゃん、部屋2……」


「「「1部屋でお願い(頼む)(お願いします)!!」」」


俺の声に被せるようにして言われ、あれよあれよという間に一部屋借りる事になっていたわけだ。

なんとなく分かっていただろう癖に、ニヤリと笑いながらそのまま登録して、「キャンセルは違約金な」とか言いやがったおっちゃんにはイラッとした。

変に金はあるので払うことはできたが、登録し直すだけで金を払うのも馬鹿らしいので、今度会った時に優を殴ることで溜飲を下げることにしよう。


この時、王城の優は寒気を覚えたとか覚えなかったとか。



バイトキツいです……

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