第77話 メイドさんマジリスペクトっす
ちょっとペースアップします。
……更新速度じゃないよ?内容の方ですよ?
あと、活動報告の方に予定の作品紹介を載せました。
「何でしょうか、シーラ?」
「お話を遮ってしまい誠に申し訳ございません。実はそちらのフクシアと言う少女の事についてでして……」
話を切出したメイドさんが、自分の名前を出しすとやはりビクリと震えたフクシア。
……あのシーラというメイドさんはフクシアに対して何か気づいたのだろうか。
リリーはメイドさんの真剣な雰囲気を感じ取ったのか、『リリー』としての表情から『王女』としての顔に変わる。
フクシアはすでに俺達の大事な仲間だ。見捨てるなんてあり得ないし、何かあれば全力で守る。
だがそうなったら非常に不味い。この国には真琴や優、その他諸々がいる。
敵対すれば面倒な事になる。
そんなことを考えているとメイドさんは当たり前のように言葉に出した。
「その娘をメイドとして鍛えたいのです」
「「「……は?」」」
心配は全くもって不要だった。と言うよりも王都に魔王が入り浸ってるのと同じくらい杞憂だった。……あれ?まあいいや。
よくわかっていない魔物娘二人と、未だにこちらを睨んでいる爺さん以外は、未確認生物を発見してしまったと言う表情でメイドさんを見つめる。
いや爺さん、こんな時までどんだけ睨んでんの?アホなの?
「それは、この娘を城で雇いたいと言うことですか?」
リリーが笑顔を引きつらせて疑問を投げかけると、メイドさんは手を口元に持って行き、思案するような表情を作った後、
「そういうわけではないのですが……」
と至極まじめな表情で言った。
笑顔を引きつらせたまま表情を変えないリリーは「じゃあどう言う意味だコラァ!」と言う雰囲気をまといはじめる。
そこでメイドさんがもう一言。
「……ですがそれも良いかもしれませんね」
あ、キレそう。
いや、仕方ないと思うよ?
横から口を挟んだんだから、かなり重要な話だと思ったのだろう。
ゴゴゴゴゴと音がしてもおかしくないくらいの雰囲気だよ。
「用事があるので私はこれで失礼します」
あ、逃げた。
サタナルが部屋から出て行き、パタンと音がして扉が閉められると遂に。
――ゴゴゴゴゴ
ほんとに聞こえたよ。
びっくりだよ。これって重い物をずらす音に似てたんだな。
「すみません。これの配置がいまいち気に入らなかったので……」
お前か!紛らわしいわ!
今の音はどうやらメイドさんが観葉植物らしきものが入った鉢をずらした音らしい。
ピンポイントでその音を出すとか狙ってんのかと言いたい。
「……良いです、いつもの事でした」
なんか大変なんだな。
諦めた様にため息をついた王女様はなんだか不憫だった。
「それでどうするんだ、フクシア」
「わ、私は……」
全員の視線が自分に向いたことも相まってか、オロオロとした反応しか返せないフクシア。
どうにも人見知りなところがあるらしく、混乱しているようだ。
このままでは冷静な判断は下せないだろう。いったん話を持ち帰ってゆっくり考えさせた方がいいか。
そう判断を下し口を開こうとしたところでメイドさんが、チョイチョイとフクシアに向かって手招きをする。
リリーの方を見ると、大丈夫ですという風に頷いているので、軽く涙目になってこちらを見上げているフクシアを心を鬼にして送り出す。涙目と上目使いのコンボはかなりの破壊力だったが、かわいい子には旅をさせろと言う。ここは俺も我慢だ。……別に横からの謎の視線の圧力に負けたわけじゃない。良いね?
諦めたようにメイドさんの方へ歩いて行くフクシア。二人で部屋の端まで行くとこちらに背を向けてこそこそと話しだす。
「……………………?」
「――――――――!」
「……………………………………………?」
「―――――――――――――――!?」
「…………………………………………………………………?」
「―――――――――――――――――――――――――!!!?」
どうやらメイドさんが疑問を投げかけている様だが……フクシアがめっさ反応してるんだが。
気になる、とても気になる。……振動操作で声拾えないかな?
いやしかし、小声で話しているということは聞かれたくないということだ。
とはいえ気になるものは気になるのだ。だが……ッ
「シオン様♪」
そんな風に俺の良心と好奇心が戦っているとフクシアの喜色満面の声が聞こえてきた。
……ん?喜色満面?
「お、おう?」
思わず耳を疑って前を見ると周りにお花畑が幻視できそうな笑顔のフクシアが。
「私、メイドやるのです!」
「「「「……え?」」」」
な、何があったーーー!?
え、だってお前さっきまでめっちゃ嫌そうだったじゃん。涙まで浮かべて嫌がってたじゃん!?
ほら、王女様もあまりの変化にビックリしてるよ?
メイドさん、貴女何したの?
いや、何でグッ!ってサムズアップしてんの?別にナイスでも何でも無いよ!?
俺の反応で何か違うとさとったのか何故かテヘペロをしてきた。
いやそういうことじゃないからな?てか無表情じゃん。俺それ無表情でやる奴初めて見たよ?
てか爺さん、ここでも無反応。しかも睨んだままかよ。頭逝ってんじゃないの?
「それでは話は通しておきますので明日から来て下さい」
「はいです」
こうして話し合いの最後はメイドさんのペースで終わった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それにしてもあのメイドさん凄かったな。
俺はシーラと呼ばれていたあのメイドさんについて戦々恐々としながらも足を進める。
あの後話し合いはなし崩し的に終わったものの、遂に城から出ることができた訳だ。
――が、ガザルからの話で疑問に思ったことを王女様に聞く筈だったのだが、それを忘れてしまっていた事実にさっき気づいた。
話してみた結果、やはり悪い人ではなさそうだった事もあり、とりあえず今日の宿を探そうと言うことになったわけだ。今から戻って話そうにも、相手は仮にも一国の王女だし、アポなしでいきなり乗り込んでもスケジュール的に無理だったりしたら迷惑になるだけだ。
最悪ここを出て行くまでに聞ければ良いわけだし、スタンピードがあればそこでも会えるだろ。
「ごめんなさい、シオン様。勝手に決めちゃって……」
とまあ理論武装していると、ちょっと沈んだ様子のフクシアが謝ってきた。
一瞬何のことだろうと思ったのだが、メイドとして働くことだろうと気づいた。
今は『メイドさんと話してテンション上がってたけど、冷静になって考えると勝手に決めちゃってたよどうしよう』ってとこだろうか。
「その件ね。別に問題無いって。パーティーの行動に支障はなさそうだし、フクシアがしたいようにすれば良い。ただ、なんかあったらすぐ相談しろよ?遠慮はしなくて良い」
「はいです」
俺の言葉にほっとしたように胸をなで下ろすフクシア。
気にしてないと返した訳だが別にこれは耳障りの良い言葉を選んだわけでは決して無い。
いやマジあのメイドさん訳わかんねぇ。
なんと雇用期間は俺達が王都を出るまで。しかもフクシアの給料は自分のポケットマネーから出すと言っている。
これは、雇う側の王城からしてみれば『一ヶ月くらいしたらいなくなるのに1からの教育に時間をかけてまで雇う意味無いから』ってのをつぶすための措置らしい。
そしてメイドさんはリリーに事後承諾を頼んでいた。
『教育による遅れは自分が必死になることで取り返します』と言って、いや今までは手を抜いていたのかと突っ込んだら、『今までは全力でしたが死を覚悟して頑張ります』と返しながら頼んでいた。
最終的にはyes以外の言葉に『お願いします』とかぶせて頼んでいた。
全ての言葉を封殺して頼んでいた。
いやもう頼んでないだろ強制じゃんって位頼んでいた。
まあ流石に死を覚悟して頑張るってのは嘘だろうけど。……嘘だよな?
つまり俺が言いたいのは一言だけ。
あのメイドさん訳わかんねぇ。
「シオン様って何者なんですか……?」
メイドさんの行為を思い出し、常識の範囲外の存在だと結論を出したところでそんな声がかけられた。
何も言わずに城に連れていたり、王女に会わせたりしたので流石に疑われたかと思ったが、森のような柔らかな緑色の瞳の中にあったのは純粋な好奇心だけだったので拍子抜けしてしまった。
だからか俺はポロッとこぼしてしまったのだ、「勇者の卵……?」と。
俺自身言葉が疑問系なのは置いておくとして……。
フクシアの目が、まるで自分が傾倒しているスターでも見たかのようにキラキラし出した。
「卵だからな!?本物じゃないって!」
焦ったのがいけなかった。ここでの最善の選択は、冗談だと笑い飛ばして騙して悪かったと謝る事だったのだ。
卵。それは孵り、成長するものだ。つまり――
「でも!それならがんばれば勇者に!英雄に!なれるって事ですよ!?十分凄いです!ぅわぁぁ……!!」
簡単にこの結論に至れる。
力説したフクシアは瞳の中の輝きを一切陰らせていない。むしろ感嘆の声さえ上げている。
できればもう少し声を抑えて欲しい。だれかに聞かれでもしたら面倒な事になる。
それに勝手な都合で他の奴らを置いていった身としては、疑いのない尊敬はこの身に重い。
少なくとも俺はそんな人間じゃない。
「わかったから押さえろって」
そこの二人。私のご主人すごいでしょみたいに頷いてないで良いから止めて。
俺はちょっと考えてた後、ポスッとフクシアの頭に手を乗せ、なでる事で沈静化した。
「まあなんだ……。まだ秘密にしてることはまだあるけど、ちょっと聞かれると不味いことだから旅に出たときに話そうと思う。そのときにフクシアの事も教えて欲しい。旅に出るまでが、心の準備期間ってやつだ。外なら聞いてるのは俺達だけだしな」
「ぼくも話すよ!」
「私も話そう」
安心してとばかりに二人も追従する。
それを見て覚悟を決めたのか。真剣な表情をして頷くフクシア。
「ま、そのとき無理なら無茶してまで話そうとしなくて良い。秘密なんて誰しも持ってるものだからな」
俺の言葉に首を横に振り、しっかりと俺達を見て決して大きくない声で、しかし力強く宣言する。
「大丈夫です。いつまでも隠してるっていうのは嫌ですから、必ずその機会に」
もう一度、しかし今回はクシャッと少しだけ強めにフクシアの頭をなでて歩き出す。
「じゃあ、行こうか」
「見つけたぞ!!」
そんな無粋な声が聞こえてきたのはそのときだった。
というわけで、メイドさんです。
ついでに17.5話読んでない人は読んでバリバリヘイト稼いでて下さい。
奴が出ます。




