第76話 餞別
久しぶりの二日連続投稿じゃ!
「−−という訳で、あいつらは多少ほっといても死なないから、程々に気をつける感じで良いと思う」
「程々……ですか」
「そうそう。リリーは既に十分頑張ってると思うから、少しくらい手を抜いても罰は当たら無いと思うぜ?」
取り敢えず日本でのエピソードを交え、あいつらが存外にしぶとい事を伝えた。
だってな、学校行事でスキーに行ったら遭難して、一週間後助けだされたと思ったら普通にサバイバルを楽しんでたからな?
俺?……遭難した班にいましたが何か?
いや、せっかくなんだから楽しまないとほら、もったいなくない?
「……ふふっ」
「どうしたの?」
そんなことを考えていると、笑い声を漏らしたリリーに、ライムが首を傾げて問いかけた。
ちなみにダンジョンから脱出して城に帰ってきたときにリリー、ライム、フィラムは自己紹介を済ませている。今回が初対面になるフクシアとの自己紹介もさっき済ませた。至って普通の感性を持つであろうフクシアは、ガチガチに緊張していたが。……いや、普通だったらあったばかりの奴の奴隷になろうとはしないか。
「いえ、ライムさん。彼の言うことがサタナルと同じだったので、つい」
「それはこの国で最強と言われているあのサタナルのことなのか?」
「その通りです、フィラムさん。『お前は十分頑張ってるんだからちょっとは休め』って。ふふ、認めてもらえるのって、やっぱりうれしいものですね。あ、ちなみにシオンが初めて会った時のサタナルの口調は猫をかぶってたんですよ?普段はもっと雑なんです」
「へぇ、そうなん……あ」
「あ」
「あ」
「……何でしょうか、その不穏を感じさせる反応は」
そう言ったリリーは、ギギギと壊れたブリキの人形のように振り返る。
そして――見ているこちらが気の毒になるくらい悲壮な表情になった。
「おはようございます……王女様」
「お、おはようございます、サタナル。な、なぜここに?」
「いえ、彼が今日城から出立すると聞いたので挨拶にと思いまして。すると面白い話が聞こえたのですよ」
「そうなんですか。それで……どこから?」
「『あ、ちなみに』からです」
「なぜそんな中途半端な所から……いえ聞かれても恥ずかしいんですが!ですが!」
サタナルの答えを聞いたリリーは、顔を覆って何事か呟いていたが、声が小さかったので聞こえなかった。
「それと後でオハナシがありますので」
「あ、あはははははは……はぁ」
サタナルが仮面をかぶったまま、ニッコリと笑ったような雰囲気でそう告げると、リリーは頬を引きつらせて笑っていたがやがてガックリと肩を落とした。
「ふふ……。コホン、それでは気を取り直して」
うん、なんかご苦労様です。
「シオン。あなたはこれから冒険者として世界を見ていく事でしょう。時として様々な困難に巡り合うことがあるかもしれません。
しかし、そんなときは私たちの事を思い出してください。私たちはできうる限りの全力を持って貴方を助けることを誓いましょう。
旅立つ貴方にこんなことしかできない私たちを許してください」
「ありがとう。正直それだけで十分すぎる程だ。それに俺は自分の都合でここを出る。リリーや皆が気に病む事は何もない」
「ふふ、ありがとうございます。それではせめてもの餞別としてこれを受け取ってください。じい」
「ハッ」
俺の答えにうれしそうに微笑んだリリーは、後ろに立っていた爺さんに袋を持ってこさせた。
何で渡す時まで睨んでんの?デフォなの?
「しめて金貨10枚です。」
金貨10枚って……約1000万円じゃないか!?
フクシアもポカンと口を開けたまま惚けている。
驚いて声も出ないようだ。
ライムとフィラムは……うん、よくわかっていないから声を出していないようだ。
仕方ないよな。お金とか最近知ったばっかりで金銭感覚ないもんな。
「流石に多すぎると思うかなー」
「いえ、これは私たちの都合で勝手にやってることなので気にしないでください。それにそのお金は、仕事でここに来られないお父様とお母様がお詫びにと、ポケットマネーから出した物ですので」
「……これは一本取られたな」
なるほど、あの二人か。
現状、この国は支援などで資源が少なくなっていると聞いている。
その中での1000万だ。けして少ない額ではない。
「……わかった。大切に使わさせて貰う」
ダンジョンで手に入れた資金と合わせるとかなりの額になる。
……小市民に過ぎない俺には胃が痛い話だ。
「それでは王子と私からはこれを」
そう言ってサタナルが差し出してきたのは縦長のアタッシュケースのような箱だ。
「これは?」
「これは私がダンジョン探索時に見つけた剣です。あいにく私はすでに持っておりましたので、貴方にちょうど良いかと思ったのですが」
そこでチラリと俺の腰の辺りに目をやる。いつもなら剣を刺している場所だ。今は仕舞っているが。
「すでに上等な物を持っている様ですので予備にでもお使いください。あ、ここでは開けないでくださいね?」
サタナルの言葉に俺は頷いて肯定の意を表す。
王女様と会うためには剣を仕舞わなければいけなかったのだ。
それぐらいは俺でもわかる。
「お嬢様。少しよろしいでしょうか」
そこで、視線を下げることで視界の正面に捕らえる事なく器用にフクシアを凝視していたメイドさんが声を出した。
そのメイドさんに凝視されていたフクシアがビクッとした。
……小動物みたいだな。
書いてる途中、主人公が一人と話し始めると他が空気になってつらいです。




