第66話 無責任な正義より先を見据えた偽善を
説明回です
ストーリーが進まない!!
第66話 無責任な正義より先を見据えた偽善を
オーガをしまった後、元来た道を歩きながら、倒した別の魔物もアイテムボックスにしまい、契約について尋ねる。
エルフの少女は怪我もなく疲労だという判断だ。
「そうだね。契約者が主人と奴隷を血の契約によって繋げ、奴隷が主人に従うようになる。それが契約だよ」
「ん?それなら首輪でも良いんじゃないのか?」
背負ったエルフの少女をちらりと見てデニスに尋ねる。
言うことを聞かせたいのなら首輪をつけていれば良いし、わざわざ契約とやらをする必要性が見受けられない。
「そんなことはないよ。いくつか理由はあるし、さっき、首輪は借り物だって聞いたよね?
首輪は返さなきゃいけないから、着けたまま売りに出すことは出来ない。だからこその契約さ」
「さっきから首輪は借り物だって言ってるが何処から借りてるんだ?」
奴隷に関するギルド的な組織だろうか。
だが、俺の予想は最悪な形で外れる事になる。
「国だよ」
「なッ!?」
国が首輪を貸している?
つまりそれは国が奴隷制度を認可してるって事じゃないか。
あの王族達がか?
彼らが奴隷制度を許すとは思えない。
少なくとも王女、リリーがそんなことを平然とで出来るようには見えなかった。
となると王、王女のどちらか、もしくは国の上層部か。
あいつらが城にいても大丈夫なのか、置いていって大丈夫なのかという考えが頭の中をぐるぐると回る。
そんな思考を遮るように、声がかけられる。
「シオンは奴隷制度はキライかい?」
「まあ……な。人の命を売り買いしている訳だからな」
「僕もその点では同意だよ。でもね、僕は肯定的かな」
「私も少なからず必要だと思います」
「そう……なのか」
驚いた。
てっきり2人とも奴隷制には反対だと思っていたのだが。
「まあ、一昔前だったら僕もサリーも反対だったけどね」
「……どういうことだ?」
「変わったんだよ、奴隷制度は。この国の王の働きかけでね。今ではどの国の奴隷制度も驚くほど人道的になったよ」
デニスがそう言うからには前の制度は酷く、そして今の制度は大きく良くなったのだろう。
それに少なからず、この国の王が悪人では無いことが伺える。
だけど……人道的ね。
「奴隷制度が無くなって一番困るのは奴隷達なんだよ。仕事も住む場所もない。放り出されただけの彼らが行き着く先のほとんどは、恐らく野垂れ死にだろうね」
「……」
なるほどな。
そう意味では人道的と言えるだろう。
デニスの話ぶりから奴隷制は昔からあったと推測できる。
その責任を今の時代に追求するのはお門違いだ。
「新しい奴隷制の法律では奴隷に対する様々な行動が規制されている。
暴行は勿論の事、長時間の労働、食事の不足、無理に性的に迫る等ね。
それを見張るのがこの首輪さ。奴隷商に法律で使うことを定められたこれは着けた本人に異常があれば管理所に報告が行くようになっている。
だから首輪が普及した後の検挙率は凄まじかったらしいよ。奴隷に着けるまでに一週間は猶予があったのにね」
一週間の猶予、と言うのは奴隷に対する認識を改める為の時間でもあり、奴隷達の状態を健康なものに戻すための時間でもあったのだろう。
だか、それでも違反者は多かった。
新しい流れに適応できなかったと言うことだ。
適応力の無いものは消えていく。
昔から変わらないの自然の摂理だ。
「まあ、だからこその偽の首輪なんだけど」
エルフの少女を見ながらの最後の言葉には、押さえられたながらも強い怒りがあった。
常に笑顔を浮かべ、飄々としている彼にも仲間思いの部分があるのをしっかりと感じとることが出来た。
「はい、ご主人」
「持ってきたぞ、主よ」
「おう、ありがとうな」
手の届かない場所に落ちてある魔物を持ってきてくれた2人の頭を感謝を込めて撫でる。
ライムは「えへへ~」嬉しそうにはにかんで、フィラムは照れているのか、ぷいっとそっぽを向いて。
まあ、2人とも持って来る方法が独特だが。
ライムは手だけをスライムの状態に戻し、海賊の王様を目指す何処かのゴムの人のように手をうにょ~んと伸ばして。
フィラムは手から糸を伸ばしてくっ付け、糸を操りながら引っ張り、補助に風魔法を使って楽々持ってきている。
2人とも無駄な移動は全くしていない。
いや、便利なんだけどね。
なんかこう、釈然としない。
「契約と同時に首輪は外されて、返却されるんだけどそれにもいくつか理由はある。
首輪が高価であると言うのも理由の1つなんだけど、奴隷と配られた首輪のセットで、奴隷商は国に奴隷を登録する。だからそのまま使い回されると困る訳だ。
それに、首輪にはステータス封印も付けられているから、着けたままだと本来の力も発揮出来ないから買う意味も無い。
これも首輪のままじゃなくて、契約をしなくてはならない大きな要因になっているんだ」
つまり、この制度は契約に重きをおいて、それに持っていきたい訳だな。
「もう1つあるんだけどこれが酷くてね。首輪を奴隷以外に着ける奴がいたのさ。
奴隷から首輪を外して、こっそりと他の人に着けて奴隷にしたりするね。今でこそ奴隷の意志も尊重されるけど、昔の奴隷は主人に絶対服従。自分が無理矢理奴隷にされたことを訴えることも禁じられ、一生を終えるっていう寸法さ。
勿論こんなことをする人は少なかったけどね」
それは酷い。
気がついたら奴隷で、訳もわからず主人に絶対服従か。
腐ってるな、そいつは。
「だからこその契約なわけさ。契約は契約者しか使えない特殊な方法でね、他人は書き換えられない上に、既定として主人、奴隷双方に危害を加えられないようになっている」
なるほど、俺の考えは間違っていなかった訳だ。
契約によって主人と奴隷、そして市民を守っている訳か。
そして首輪で奴隷商と奴隷、国を繋げる。
かなり考えてあるな。
確かに人道的であると認めざるを得ない。
奴隷だけでなく、その周りの事まで配慮してある。
2人が奴隷制が必要だと認めているのも頷ける話だ。
「大前提として、奴隷になるのは大きな借金をした家から出ているか、犯罪者かだ。
借金の場合も、一家で野垂れ死になるよりかは幾分かマシだと言えるかな。
奴隷に出された子は少なくとも飢える事は無いんだから。
まあ、犯罪者の場合はもっと厳しいけれどね。罰な訳だから」
これで奴隷制に関する暗い部分は無くなったと言っても過言では無い。
敢えて言うなら命をお金で売買する事だろうが、やはりそれよりも利点が勝る。
一時の正義感で奴隷を解放する事は出来る。
だが、それだけでは奴隷を助けた事にはならない。
デニスが言ったように野垂死に一直線だ。
衝動的な行動ではなく、先を見据えて計画したのだろう。
偽善だと言うかもしれないが無責任よりマシだ。
自己顕示欲を満たすのではなく、相手を思いやるからこそ逆に、出来る。
奴隷が幸せかどうかはわからないが、少なくとも不幸のどん底で無いことは確かだ。
これ以上を望むのなら奴隷を全員解放して、国が養う事ぐらいだろうか。
だが現実的に考えてそれは不可能。
だからこそのベストではなく、ベター。
2人の『肯定的かな』『必要と認めざるを得ない』という断言で無い言葉もここに起因するのだろう。
「これでだいたいの説明は終わりかな」
「わかった、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
礼を言ったら何故かデニスが黒い笑みを浮かべた。
絶対こいつ悪巧みしてるわ。
【ーーーーーーーーーー】
「……ん?」
なんだ今のは。
「どうしたのですか。シオン」
目ざとく俺の異変に気付いたサリーにそのまま問う。
「なにか聞こえなかったか?」
「……いえ、何も。デニスはどうでしたか?」
「僕も何も聞こえなかったよ」
「私もだ」「ぼくもだよ」
「そうか……。ま、いいや」
その後、再び音のようなものは聞こえる事は無く、獣耳を持っているサリーにも聞こえなかったという事で、俺は気のせいだという事にし、あっけらかんとした態度で進み続けた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「所で」とデニスが俺の腰に下げてある剣に目を向けて言う。
「……その剣凄かったね」
「まあな、ダンジョンで手に入れたんだ。簡単に説明すると切れ味も良いし、水魔法、というよりも氷系の場合の補助もしてくれる。他にも能力はあるけどな……。
名前は夜断頭・氷華だ」
「……なんだか危ない名前だね」
「私もそう思います……」
「落ち着いたらまた説明するよ」
剣の説明は後程。
まだ、まとまってないので




