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第64話 殲滅開始

第64話 殲滅開始



「まずは挨拶代わりだ。〈氷槍アイスランス〉」


剣を手で弄びつつ、肩に乗せた俺は左手を突きだす。

魔力を練り上げ、氷で出来た槍を作り、打ち出した。

その数は現在作れる数で最大の16。

凍てつく程の隠しきれない冷気と共に、それらがオーガ達に襲いかかる。


俺が作り出した氷の槍は時にオーガの頭を貫き、時に体を抉り、時にその余波で氷漬けにした。

避けられた物もあるが、ほとんどが余波を食らっていたので無事なオーガの方が少ない。

8体程を倒し、10体程には怪我を負わせた上に氷漬けで満足に動けない状況だ。

無事なのは7体のみ。


そのなかに1体だけ、色違いの奴がいる。

他のは肌が赤い色なのにそいつはどす黒い血のような赤。

こいつだけ雰囲気が違う。

恐らくこの群れのボスのような存在なのだろう。


「取り合えず止めだ。〈氷刃アイスエッジ〉」


体が凍りついた10体のオーガの頭に〈氷刃アイスエッジ〉を避ける暇も与えずサクリ。

残り6体+1。


残ったオーガが地響きを立てながら走ってくる。

それにしても7体ものオーガがこちらに走ってくるのは中々の圧迫感があるな、とどこか他人事のように考えながらオーガを見据える。


「まず一体」


右側から近づいて来たオーガに瞬歩で接近し、通り抜けざまに踏み出した足を切りつける。

それだけの積もりが勢い余って切断してしまった。

瞬間的に凍りついているので血が吹き出すこともない。


足を切り落とされ、バランスを崩して地面に倒れ伏したオーガの首を刈り取る。


「すごい切れ味だな……。こいつは」


俺が今使っているのはダンジョンで手に入れた剣だ。

片刃の片手直剣。

刀身は薄っすらと青みがかった黒。

それでいて水晶の様にクリアであり、刀身をかざして見ると反対が透けて見える程だ。


「おっと危ない」


横から降ってきた拳をバックステップで避けつつ、追いすがってくる拳をそのまま切り裂く。

右手を後ろに捻り、痛みに呻くオーガの首に向かって剣を突きだす。

だが体格差があるので剣がその首に届くことはない、このままでは。

剣に魔力を流すと刀身が音を立てて凍りついていき、その長さをぐんぐん伸ばしていく。


「2体目。良し、上手くいった」


氷によって伸びた刀身はまるで予定通りの様に、いや予定通りにオーガの首をはね飛ばした。


「今度はこれで……!!」


3体目のオーガに近づき少し離れた位置から袈裟懸けに切りつける。

今度は降り下ろす途中で刀身を伸ばし、オーガの体を真っぷたつに切り裂いた。


「3体目。〈螺旋氷槍スパイラル・アイスランス〉4、5体目」


切り裂いた後砕けた氷を放置し、すぐさま瞬歩を使って斜めに移動。

オーガ2体が一直線に見える位置から貫通力の高い魔法を使って同時に撃破。


「6体目、と」


6体目のオーガに向かって瞬歩を使って飛び蹴りを敢行。

体をくの字に折ったオーガに左足で蹴りつけ、その反動を利用して右足で蹴り倒す。

地面に横たわるオーガの首に剣を振り、止めをさす。


「さて、残りはお前だけだぜ?」


最後まで残った赤黒いオーガに振り返って告げる。

こいつは余程自信があるのか俺が他のオーガと戦っている間も手を出すことなく傍観していた。

そして今動いた。


「ガアアアアァァァァ!!!」


雄叫びを上げてこちらに突撃してくる。

他のオーガと比べて明らかに速い。

先程と同じ感覚でやれば苦戦は免れないだろう。


「まあ、あくまで比べると、だけどな」


そう言うと〈氷刃アイスエッジ〉を牽制に放つ。

だが、オーガはそれをものともせずに進み続ける。

耐久力も他のオーガより大幅に高いようだ。


「これは効かないか。これならどうだ〈閃光フラッシュ〉」


真正面から光を浴びたオーガは悲鳴を上げて顔を押さえる。


「終わりだ」


いまだ呻くオーガの足に向かって、氷で伸ばした剣を横凪ぎに振るう。

振るわれた剣に足を切り裂かれ、体が落ちてくる。


「もういっちょ」


そこに剣を振った勢いを利用して回転しつつもう一度剣を凪ぐ。


「じゃあな」


落ちてきた胴体を達磨落としの要領で切り裂いた俺は、もう一度回転し、オーガに止めをさした。


「お前は群れと一緒に攻めて来るべきだったよ。ま、それでも俺が勝ったけどな」


「お疲れさま」


いつの間にか〈光の盾(ライトシールド)〉の側にデニス達がいた。


「遅かったじゃねぇか」


「シオンが速すぎるんですよ。これでも急いできたんです」


少し怒ったように言うサリーに苦笑してしまった。


「悪い悪い。で、その――」


「ああ、この子はエルフだね。しかも奴隷の」


周囲に冷たい空気が流れていった。


「……いや本当に寒っ!」


「いや、君のせいだから」


氷漬けの周囲を指差された俺は黙り込むことしか出来なかった。


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