第62話 晴れ、時々拳、まれにノウミソ
第62話 晴れ、時々拳、まれにノウミソ
「オーガね……で、どうすんだ?もう気づかれるぞ」
戦闘音に引き寄せられたのか、首を巡らし周囲を確認しているオーガ。
ゆっくりと、だが着実に近づいてくるその数は1体ではなく3体。
それを見てシオンはその対処法をデニスとサリーの2人に相談する。
だがそれは「コンビニ寄る?」とでも言うような気軽な物だった。
理由?なんのことは無い。
見た瞬間勝てる、そう思っただけ。
戦ったことがある訳じゃない。
でも、迷宮で鍛えられた勘なのか、なんとなく分かった。
こいつらには勝てると。
だがまあここは異世界だ。
不可思議な事が起こりうる世界。
もしも何て事が起こるかもしれない。
だから、詳しく知っているだろう2人に聞く方が安全だと判断した。
「そうだね……。普通の新米冒険者だときついんじゃないかな?」
「じゃあ大丈夫だな」
俺達の戦闘力は新米冒険者よりは高い。
ガザルも言ってたし大丈夫だろう。
「それは私たちが普通ではないと言うことですか?なら私はその枠から外しておいて下さいね?」
笑顔のまま辛辣な言葉を浴びせられた。
「僕も遠慮しておくよ」
楽しそうにデニスが。
「そうだな。混ぜられるのは誠に遺憾だ」
腕を組み、頷きながらフィラムが。
「ご主人は普通じゃない強さだもんね!」
最後に輝くような笑顔でライムが。
…………。
さんざん貶されたがライムが褒めてくれたから良しとしよう。
まさに俺のオアシスだな。
……褒めてるよね?
貶してないよね?
「グアアアアァァァァァ!!」
オーガの咆哮が辺りに響き渡る。
どうやら見つかったようだ。
見つかったからもう、やるしかないよな。
別に逃げる選択肢を潰すために話していた訳ではない。
無いったらない。
「ライムとデニスが左のやつ。フィラムとサリーで右のやつを頼む。俺は余った真ん中のやつだ」
「一人で大丈夫ですか?」
「ああ、問題ないよ。じゃあ戦闘開始」
俺の合図で割り当てられた仕事をこなしに向かう。
指示通りに動いてくれるので安心だ。
分け方としては高レベルの2人に対し、遠近反対の距離で分けた。
なんとかなるだろ。
左ではデニスが矢を放ち、それを避けさせようとすることでオーガの動きを止める。
「せいっ!」
そこにライムが輝く手甲で突きを叩き込む。
その威力にたまらずオーガは体勢を崩した。
「はあっ!」
「雷纏飛刃」
右では降り下ろされたオーガのこん棒をサリーが斧で左に弾き、流れた上体にフィラムが糸の刃を放っていた。
どうやらこちらも問題は無さそうだ。
正面にはこん棒を構えたオーガ。
さて、俺がダンジョンで手にいれた力が外でどのくらいか通用するか試させて貰おうか。
ゴブリン程度では弱すぎて何も分からない。
オーガを正面に見据え、素手で構える。
素手でどこまでできるか……。
「ゴアアアアァァァァァァ!!」
嘗めているとでも思ったのだろうか。
雄叫びを上げ、こん棒を降り下ろしてくる。
そこに俺は気負うこと無く拳を振るう。
「振撃」
はたから見れば象と蟻、とまではいかないがそこには明確な体格差か存在している。
当たれば、それこそ潰されてしまうように見えただろう。
しかし――
バキバキバキ、と拳が触れた部分からこん棒が……裂けた。
自分の武器を壊されたオーガが驚きに目を見張った……様な気がした。
うん、表情なんかわかんない。
「……んー、少し荒いかな」
呟いた俺に、気を取り直したのかオーガが拳を振り下ろしてくる。
自身の拳を見つめて棒立ちする俺に、その体格も相成って圧力を感じさせる拳が迫る――が。
「ああ、もういいよ。お疲れ――さまっと」
振り下ろされた拳を、半身になり左手で腕ごとオーガの内側に流す。
ずれた重心が戻される前に腕を伝って上へ。
驚愕の眼差しとでも言うのか、それを俺に向けている顔を殴り付ける。
「振撃」
瞬間、頭が内側から爆ぜた。
「うおっ!?汚ねぇ!?」
とっさにオーガの体を蹴ることで離れ、飛び散る様々なものを強めの〈風〉で吹き飛ばす。
もう少しでかかるところだった。
出来れば頭から被るのはごめん被りたかったので良かった。
地面に降りたって改めて見ると悲惨の一言だ。
崩れ落ちたオーガの首からは血が吹き出し、周囲には頭の中身だったものが飛散している。
スプラッタ……。
「ご主人!終わったよ~」
ライムののんびりとした声に首を向けると、そこのオーガは矢が体に突き刺さっていた。
それまでならまだわかる。
手足が明らかにおかしな方向にねじ曲がった哀れなオーガの亡骸があるのはどういう理由なのか。
…………。
「こちらも終わったぞ、主」
フィラムも終わったようで掛けられた声に振り返ると、手足が根本から切り取られ、オーガが倒れ伏している。
止めに首を切られたのか、転がり落ちたオーガの首がこちらを見つめている。
…………。
怖いです。
「シオン、すごいねライムは。オーガの攻撃を軽々と避けて、攻撃。まさにタコ殴り状態。思わずオーガが気の毒になったよ」
「フィラムもすごかったですよ。どこからか鞭を取り出して、離れた場所から体を切り刻んでいました。オーガは近づく事も出来ずに首を落とされて、私の出番がなかったですよ。刃物でなくてもこんな事が出来るんですね」
はい、犯人はうちの子達でしたよ。
いや、なんとなくそんな気はしてたよ?
でもさフィラムの方はもしもって事もあるじゃん?
サリー斧使ってるし。
ライム?
弓であんな風にはなりません。
「ご主人もすごかったよね。こう、ガッてしたらドパンッて!」
目をキラキラさせながら俺の真似をするライム。
オーガの拳より重いの入りました。
だがしかし、そこに悪意は感じられない。
「そうですね。あれは凄まじかったです」
お願いします!言わないで!
自分が一番酷かったことは自覚してるから!
必死に現実逃避してた所だから。
そこで何か感じ取ったのかデニスがにっこりと笑って追い打ちを。
「スプラッタ大賞なんてのがあれば授与されたかもしれないね?」
ぐはっ!?
こいつ、的確に傷を抉ってきた。
実はドSだろこいつ。
デニス、恐ろしい子!!
「それで、さっきのはどうやったんですか?」
「まあ、あれだ。スキルを使ってちょっとな」
原理としてはそんなに難しいものじゃない。
魔装の応用で手に魔力を纏う。
その魔力を振動操作で高速振動させて叩き込み内部に流すと、振動に耐えきれず相手が内部から爆ぜる。
相手は死ぬ。
「そんなことは良いんだ。それでオーガはどうする?」
「そうだね。オーガの討伐報酬はゴブリンと同じで耳だからね。それを取ったら焼くことになるかな。肉は不味いらしいから」
「あ、火魔法は私に任せてください」
「キャアアアアァァァァァアアア!!!」
周囲には叫び声が木霊した。
……どうやら火魔法は後になりそうだ。
気がつくと俺は声がする方に駆けていた。
……はあ、俺はこんなキャラじゃないのにな。
ここに来て少し丸くなったかな……。
「ご主人!?」
「待ってくれシオン!!……くッ、追いかけるよ!」
後ろから聞こえる声を振り切って声を目指す。
間に合ってくれよ……。
後味が悪くなるのは嫌だから。
テンプレテンプレ。
そろそろ本格的にテスト勉強が危ないので更に遅れそうです。
あと、主人公の名前は七星 紫苑にする予定です。




