第48話 得たもの
難産でした。
説明回きつい……。
第48話 得たもの
「まずは謝らせて欲しい。すまなかった」
そう言っていきなり俺達に向かって頭を下げるジーバ。
「ん?どうして謝るのだ?」
「そうだよ。どういうことなの?」
いきなりの謝罪に困惑を露にする2人。
対して紫苑は――
「―――取り敢えず頭を上げてくれ。説明がないと何の事だかわからない」
至っていつも通りでの対応。
そこには動揺の影は無かった。
「……わかった。お前たちに謝りたいことは3つある」
そう言って指を3本立てるジーバ。
「1つ目はダンジョンの転移の罠のことだ」
「あれか。人から聞いた話によると長距離の移動は無いと聞いていたんだが」
「その通りだ。規定された階層内でランダムに転移させるはずが、誰かが手を加えたせいでダンジョン以外の何処かに転移するようになってな。更にそれを大量にばらまきおった。それを修正した瞬間、お前たちが罠に乗ったのだ」
「じゃあ、予想もつかない何処かに転移させられる所だったのが、ダンジョンの何処かに転移したってことか?」
「そう言うことになるな。直後ならまだ良かったのだが、途中でな。魔法を書き換えていたから、それがめちゃくちゃになったのだ」
そこで紫苑は少し考えるそぶりを見せ、
「………外に飛んだ方がよかった可能性は?」
「無いとは言えないが限りなく低い。何処かはまだ判らないが転移先の指定は1つだった。恐らくそこで何かをしていたのだろう………っとわかったぞ」
「………ん?何がだ?」
「転移の罠をいじった奴だ。ダンジョンのログを調べていたのだが、やっと見つかった。どうやら魔族の女らしい」
「魔族……」
ここで魔族の影か。
俺たち被召喚組が呼ばれた原因の1つでもある魔族。
それが目に見える形で初めて現れた。
「ほれ、こいつだ」
ジーバが指を振るとホログラムのような立体映像が現れた。
その映像には確かに女性が写っていた。
「こいつが………」
女性は紫の髪をしている。
顔も覚えた。
ダンジョンに介入するくらいなんだ。
きっと強い。
会ってみたいものだ。
「魔族っていうか髪が紫なだけの人間に見えるんだが」
「そうだ。見た目はほぼ人間と変わりない。この映像だと翼を隠しているようだがのぅ。あと、瞳が紫だな」
「魔族ってのは紫ずくめなのか?」
「そうだ。魔族はな」
「そうか」
ん?何か今………
「2つ目が重金属恐竜についてだ」
そこで話題について、紫苑がピクッと目元を動かしたがジーバは無視した。
理由がわかっているからだ。
「あれもお前たちと同じ理由だ。魔法を書き換えていた瞬間に転移したのだ。基本的に魔物は転移しない設定なのだが、魔族の女は転移の罠で魔物まで転移させていた。2つともこちらの不手際だ本当に申し訳ない」
そう言って再び頭を下げるジーバ。
対して
「俺は別に問題外無い。結果として強くなれたしな。ただ、1ヶ月以上も外のことがわからなかったのは痛いな」
「ぼくも問題ないよ。このダンジョンのお陰で人の姿になれたし、人の生活を体験してみたいって目標も出来たしね」
そこで3人とも一斉に振り返ってフィラムを見る。
「ッ!ゴホッ!ゴホッ!な、なんだ!?」
紅茶を飲んでいたのに、いきなりの注目を浴びたフィラムはビックリしてむせてしまったようだ。
そんなフィラムの様子に軽く呆れぎみに紫苑が言う。
「ぶっちゃけ、この問題に一番関係あるのはお前なんだぞ?俺達は得るものばかりだったが、お前は失ったものもあるだろう?」
その言葉を聞いたフィラムはゆっくりと紅茶のカップを置いた。
なぜか「お嬢様」と言う言葉が浮かんでドキッとしたのは秘密だ。
なんせフィラムだからな。
「そうだな…………。私も別に問題は無い」
「………良いのか?わしの不手際でお前の家族を失ったんだぞ?」
フィラムの返答にジーバも意外そうな表情をする。
正直、俺は話を聞いたタイミングで怒るかと思っていた。
それが静かだったので不思議だったんだ。
「確かにお前を恨む気持ちもある。だが、不思議と心は静かなんだ。既に仇討ちはした。多分あいつを殺したことで十分満足したんだと思う」
それに、とこちらをちらりと見て続ける。
「主自身が言ったように新しい家族も得た。あいつらが私の中から消えてしまったわけでは無いしな。元々ダンジョンの中では良くあったことだ。弱ければ負ける。それが最初は私達であり、次いであいつになっただけの事だ。お前もわざとでは無いようだしな」
言葉にしてスッキリしたのか満足げな表情で再び紅茶を飲み始めるフィラム。
そして横では、凄い速度でライムがケーキを消化していく。
シリアスの横ではなんかシュールだな。
ライムは少し天然かもしれない。
「…………そうか。ならば―――」
そう言ったジーバの前のテーブルに光が集まり始める。
光が収まるとそこには黒い物体が置いてあった。
それを見たフィラムが表情を変える。
「これは………この感覚は………!!」
この黒い物体がどうしたのだろうか?
「わかったか」
フィラムの反応にジーバがニヤリと笑う。
「これはダンジョンが吸収したお前の仲間達の力を集めて作った装備だ。少し、わしも手を加えさせて貰った」
フィラムが目を見開いてジーバから装備を受け取る。
なるほどな。
蜘蛛達の力が宿っているのか。
恐竜に倒された蜘蛛達は素材に成らず、再び見に行ったときは消えてしまっていた。
彼のときは恐竜が居たせいで剥ぎ取ることも出来なかったし、何となくしたなかった。
「これは………ありがとう………」
「なに、礼を言うのはこちらの方だ」
「着ても良いか?」
「勿論だとも」
え?ここで着るの?
それっていろいろ不味いんじゃね?と思ったら―――
「これは良いな。あいつらが近くに感じられる」
コートでした。
なんか悔しい。
白いフィラムに黒のコートが良く似合っている。
でもそれ夏は暑いんじゃ……。
「コートは気温の調整機能も完備しておる。暑い所でも寒い所でもきっちり守ってくれるぞ。勿論、防御力も折り紙つきだ」
こいつ、絶対タイミング合わせて来ただろ。
「全くもって違うな」
こいつ………。
フィラムは嬉しそうにコートに指を這わせている。
まあ、フィラムが満足そうなら良いか。
さて………
ジーバを見てニヤリと笑う。
「これで最後だな。説明を先伸ばしにした件についても詳しく教えて貰おうか」
「う、うむ」
額から冷や汗を流しながらジーバが頷く。
順番的には2番手の筈なのにわざわざ最後に持ってきたってことは、なんかあるんだよな?
「さあ、70層の扉が開かなかった件について説明をしてくれ」
ジーバが諦めたような表情をし、紫苑が再びニヤリと笑う。
ここまでおちょくってくれやがって。
ざまあ!




