第43話 油断と分断
ちょっと短いです
第43話 油断と分断
鬱蒼と茂る木々に、息が詰まるほどの蒸し暑さ。
よく見ればその木々も現代には存在しない物ばかり。
まさに古代の密林。
そこに声が響く。
「〈岩石壁〉」
地面から岩がせり上がり、突進してくるものの進路を塞ぐ。
だが、突進する者はその3本の角でもって、岩の壁を破壊し、そのまま突き進んでくる。
「ちぃっ!かてーな、くそッ!」
突進の進路から外れる為に、横に飛び退く事で避ける。
通過する時に、強固な前面とは裏腹に脆弱な側面が露わになる。
それを逃すはずも無く、袈裟掛けに切りつける。
「ブモオオッ!?」
3本角は思わぬ痛みに鳴き声を上げるも、着いた勢いは止められない。
「フィラム!」
「わかっている!」
3本の角が突進する、ちょうど正面に降り立つフィラム。
このままでは跳ね飛ばされその小柄な体は宙を舞う事になるだろう。
だが、もちろん考えも無くそこに現れた訳ではない。
「蜘蛛の捕獲網!!」
両手を合わせ、それを勢い良く広げると巨大な蜘蛛の巣が一瞬で張り巡らされる。
だが、それだけでは3本角の突進は止められない。
何より巣をかけられた木々が持たないのだ。
バキバキという音を立てて木々がへし折れて行く。
だが、
「まだまだ!もう1つ!これでどうだ!」
2つ、3つ、4つと巣をかければどうだろうか。
フィラムは後ろに下がりながら計4つの巣をその進路に張った。
楽々と木の根元からへし折られた1つ目。
速度を少し落とすに留まり、やはり折られた2つ目。
大きく速度を削ぎ、ギリギリで折られた3つ目。
そして突進の威力を完全に押しとどめた4つ目。
この結果は必然だ。
糸が切れる前に木が折れ、そのまま引きずって進むのだから。
通過するに連れて速度の減少量は輪をかけておおきくなる。
何より既に何度もこの3本角の魔物とは戦っているのだ。
対策はしてある。
3本角も糸が絡まり既に動けない状態にある。
後は止めを刺すだけ。
「主!こっちの三本角恐竜は抑えた!早くライムの方へ行ってくれ!」
「わかった。気を付けろよ、フィラム!」
「主もな!」
一瞬で姿の見えなくなった自分の主から視線を戻し、3本角に目を戻す。
三本角恐竜。
3本の鋭い角を持ち、盾のように堅い頭殻を持つ魔物だ。
主が言うにはトリケラトプスなる生き物に似ているそうだ。
ともあれ、糸から逃れようとする3本角。
生き残る為に全力を費やすもここは非常なる弱肉強食の世界。
「悪いが倒させてもらう」
そう言葉にしたフィラムは右手に白い鞭を作り出す。
そしてバネのようにたわませ、首筋の後ろに突き出しその命を散らせた。
「戻るか……」
その言葉だけを残し、フィラムは急いでこの場を後にした。
勿論素材は残していない。
バキバキと後ろから木が折れる音が断続的に聞こえてくる。
後ろの脅威から逃れるため、ライムは今走っていた。
「しつこいよ!〈水槍〉!」
後ろから迫ってくる3本角に水の槍を放つ。
頭を狙っても効果が無いので足元を狙う。
それでも効果は微々たる物のようで、せいぜいが一瞬だけ動きを遅くする程度だ。
「もうっ!しつこい男は嫌われるってご主人が言ってたよ!」
「ブモオオオオオォォォォッ!!!」
どうやら雌だったようだ。
ライムの言葉に耳を貸すこと無く進み続けている。
「こうなったら……!〈閃光〉!」
前を向いたまま後ろに魔法を使うと、周囲が真っ白に染め上げられる。
これで止められたかと思い後ろを振り返ると……
「うわっ!?」
止まること無く突進してきた。
とっさに避けるも体勢を崩してしまう。
崩れた体勢を整える間もなく、3本角は目が見えないままに上体を持ち上げ、そして地面を力強く踏みしめる。
「しまった!?」
周囲の地面が大きく揺れ、完全にこけてしまう。
無論、恐竜の体重と言えど踏んだだけではここまでの揺れは起きない。
踏みつけと同時に土魔法を使うことで、揺れを増大させているのだ。
自分の声が聞こえたのだろうか。
3本角がこちらに振り向き突進を仕掛ける。
立ち上がろうとするも間に合わない。
鋭い角が目の前に迫る。
「きゃっ!?」
「高速振動斬撃波」
高速振動する魔力の刃が3本角の側面を勢い良く切り裂き、転倒させる。
「大丈夫か、ライム!」
「なんとかね……ありがとう」
「悪い、1人にして」
3人で歩いている時に出会い頭に遭遇してしまったのだ。
この階層の魔物は大きなものばかりで、更に数も他の階層と同じく少ないので、油断していたのだ。
移動している魔物は足音ですぐに分かる。
それが止まっていて、更に2体一緒にいたので分断されてしまったのだ。
この魔物の突進も止めることは出来なかったので隙を見て各個撃破するしかなかった。
とまあれ、足音でわかるから大丈夫と油断していた自分の落ち度だ。
「ううん、良いんだよ。反対に逃げちゃったぼくも悪いんだし。それよりも早く倒そう」
「わかった」
謝罪は後でするとして先ずはこいつを倒そうか。




