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~クラスまるごと召喚されました~勇者で魔王なので旅に出ます!?  作者: ねむ鯛
第二章 王都 ダンジョン編 
45/108

第40話 家族だから

戦闘描写少なめです

第40話 家族だから




saidフィラム


「はっ!」


地面から突き出してくる金属柱を次々と避け、接近を試みる。

主は『停滞は死なり』などと、ふざけ半分に言っていたがそれは正しいと思う。

もう少し真面目に言ってくれたのなら、もっとカッコ良かったのだが……。

……と、今はそんなことを考えている暇は無い。


「ご主人は?」


先輩であるライムが戦闘の合間に主の事を聞いてくる。

その顔には私に対する怒りはなく、ただ、主に対する心配が宿っていた。


「大丈夫だと言っていた。それに、回復する時間を稼いでくれ、とも」


「そっか、じゃあ頑張らないとね」


そんな言葉をかけてくるライムは笑顔だった。

自らの主に信頼されている喜び。

その笑顔は輝いていて、今の私には眩しすぎるくらいだ。


わからない。

なぜ、怒らないのか。

なぜ、罵倒しないのか。

わからない……。

怒りをぶつけられた方がもっと楽なのに。


そんな気持ちを感じ取ったのだろうか。

ライムが金属柱を避けながら言う。


「ご主人はね、きっと怒ってないよ。『気にすんな』、そう言ったんでしょ?」


金属柱の猛攻をかいくぐり、尻尾の一撃を避け、粘液と化したその腕の打撃を叩き込む。

その技量に素直に感嘆する。


「だが、それは言葉だけで実は怒っているかもしれないでは無いか」


言葉と共に向けてくれた笑顔の下で、実は腸が煮えくり返っているかもしれない。

お前の所為で、と憤っているかもしれない。

また、家族を失うかも知れない。

そう思うと怖かった。


「それは無いよ。だってご主人、ぼく達が悪い事をした時はちゃんと叱るじゃない」


諭すように言ったライムに、そう言われればと同意の感覚が浮き上がる。

たしかに、ルールやマナーを守らなかったら、主はいつも私達を叱っていた。


「それにぼく達は家族でしょ?失敗をしたら、注意しあって、直して。それで良いんじゃないかな」


失敗をしたら、注意しあって、直す。

それが家族。

なんだか胸にストンと落ちた気がする。

そうか……それなら、謝ろう。

主に許して貰えるように。

それが私に出来る精一杯の事だから。


それと、とライムが言葉を続ける。


「ただの家族で終わる積もりも、無いけどね」


同性の自分ですらドキリとする程の蠱惑的な笑みを、その顔に浮かべて言う。

それは……と考えを巡らせる前に。


「〈蒼炎の槍(ブレイズランス)〉」


頼もしい声と共に蒼の槍が恐竜に突き刺さり、一気にライムが距離を詰めた。

言葉は無い。

これも伝心の為せる技だ。

槍の余波である炎を吸収し、殴ると同時にその炎をぶつけ、恐竜が吹き飛ぶ。

その威力に戦慄すら憶える。


だが、今は


「さっきは本当に申し訳無かった!」


謝るのだ。

少しして顔を上げると、主は優しげな目で苦笑していた。




said紫苑



腕の細胞、骨、神経、血管。

それぞれが繋がる所をイメージしながら魔法を使う。


「〈回復リカバー〉」


少しのむず痒い感覚の後、腕に空いていた穴が塞がる。

感触を確かめるため、数回手を握ってみるが、どうやら問題は無さそうだ。

戦闘に支障は無いか。


問題なのはフィラムの方か。

あいつ絶対気に病んでるよな〜。

騎士道と言うか、武士道と言うか。

真っ直ぐなんだよな。

まあ真っ直ぐ過ぎて通路につっかえたりしそうだけどな。


冗談は置いといて。

本当にどう説得したもんか。

ん〜〜……良し、これでいこうか。


取り敢えず、


「〈蒼炎の槍(ブレイズランス)〉」


伝心でライムにイメージを伝え、指示を出した。

恐竜に突っ込み、吹き飛ばした。

暴食でダメージも無いどころか、逆に威力が上がり、拡散する魔力の節約にもなる。

エコ思考は大事。


今の内にフィラムの方へ行く。

会話の間、足止めしてくれるようにライムに頼んだ。

ライムもかなり強くなったよな。

そろそろ基礎ステータスでは負けるかも知れない。

それはマズイ。

どうにかしないと。


フィラムは開口一番謝ってきた。

こういう所がいじらしいんだよな。

俺に怒られると思っているのか少し怯えている。

嗜虐心をくすぐられるがここは我慢だ。


「フィラム、それは違う。俺は自分の失敗を自分で受けただけだ。あの恐竜がそのまま走ってこれたのは俺の所為だからな」


「だが、私が対応出来ていれば主が犠牲になる事も無かった」


どうしても自分の所為にしたいようだな。

なら、これでどうだ?


「ならフィラムはあのまま自分が攻撃を受けたとして、俺の所為にしたのか?」


おそらくフィラムは違うと言うだろう。

……言うよね?

言って!お願い!


「違う!それは私が未熟だったからであり、主の所為では無い!」


良かった。

これで違うと言ってもらえなかったら、死ねた。


……いや、わかってたよ?

フィラムならこう言ってくれるって確信してたよ?

不安なんて微塵も無かったですが何か?


「そうか。なら俺も未熟だったって事だ」


「うっ!」


言葉に詰まるフィラム。

どうにか反論を探そうとしているがもう良いだろう。


「そういうことでお前が気に病むことは無いんだ。持ちつ持たれつってヤツだ」


フィラムの頭をワシワシと少し乱暴に撫でる。


「何をするのだ!」


「その調子だ。ほら、さっさと倒して休むぞ」


ふん!とそっぽを向いて行ってしまった。

子供扱いしすぎたかな?

まあ、今回の件は俺が悪いんだし、これで良いか。


下準備もそろそろ良い具合だろうし、もう直ぐで決められるな。


「せいっ!はあっ!やあっ!」


恐竜に対するフィラムの攻撃が苛烈になってるな……。

そんなに嫌だったか……。

後で謝るべきか。


(主に撫でられたのは嬉しいのだか、子供扱いは……。ぬ〜〜)


実はフィラムが照れ隠しで激しく攻撃していた事を、この後も紫苑が知ることは無かったという。




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