第34話 撤退
睡魔に負けて更新遅れました。
申し訳ありません。
第34話 撤退
「それじゃあ撤退するぞ」
『え……?』
蜘蛛が思わずといった風に聞き返してくる。
「どうしたんだ?早く逃げるぞ」
『え……?あいつを倒してくれるんじゃ……?』
再び疑念の声を上げる蜘蛛。
「ん?なに言ってんだ?」
その蜘蛛に対して、ニヤニヤと人の悪い顔で笑っている紫苑。
「さっき言ってたじゃないか、『あいつを倒して人生を楽しみたい』って」
『そうだが……』
「つまり、自分で倒したいって事だろ?」
『なっ!?』
どうやら気付いていなかったようだな。
半分くらいは狙ったんだが……。
「まあ、俺も言わせた以上しっかり手伝うかもな」
『なぜそこで断定しないんだ!?』
「この世に絶対は無いからだ」
どや顔できっぱりと言いきる紫苑。
『そうかもしれないがお前の気持ちだろう!?責任感を持ってくれ!』
「責任は嫌いだ。面倒くさい」
『おい!!』
「冗談だよ、じょ~だん。そう、カリカリすんなって」
『くっ!何だか釈然としない!』
蜘蛛の抗議の視線を無視して、撤退を急かす。
「そう言う訳だから、早く撤退するぞ。撤退の理由も後で説明する」
『はぁ、わかった……』
ため息を吐くと幸せが逃げるって言うぞ?
蜘蛛に睨み付けられてしまった。
怖い、怖い。
「ご主人、危ないよ~」
その時、蜘蛛と一緒に後ろで待機していたライムから声が届く。
危機感の欠片もない声で注意換気をするライム。
うん、声がマイペース過ぎて、やっぱり危なく無さそうに感じるな。
「ガアアアァァァッ!!」
既に恐竜が起き上がっており、咆哮を上げる。
撤退には少し間に合わなかったようだ。
「ちっ、誰かさんがうるさかったせいで間に合わなかったな」
『私か!?私のせいなのか!?』
後ろでぎゃーぎゃー言ってる蜘蛛を無視して指示を出す。
「お前とライムは通路まで下がっていろ。こいつを足止めしていく」
「わかった、気を付けてね」
『切り替えが早すぎる……!』
「必ず追い付く。俺の事は気にするな」
『……?頑張れよ』
くっ!わかるやつがいないのはこんなにも苦しいのか。
まあいい。
フラグブレイクをしてみたかったからちょうどいいか。
恐竜に向き直った俺は早速魔法を使う。
「〈凍結する床〉」
部屋の中の床が一瞬で凍りつき、周囲の温度が下がる。
慣れない氷の床で上手く動けない様子の恐竜。
そのまま動くなよ?
「〈風圧砲〉」
圧縮した空気に指向性を持たせ、思い切り恐竜にぶつけた。
発生した風圧に吹き飛ばされ、転倒して氷の床を滑る。
くるくると駒のように回っている姿はさぞ滑稽だろう。
「〈落槌の天井〉」
部屋の反対らへんまで行ったところで次の魔法を発動。
天井の一部が柱形に落ちて、恐竜の体を床と柱で挟み込む。
「ガアアアァァァ!」
剣虎の時の罠を参考にしたこの魔法は、洞窟などの特定条件下でしか使えないが、その分強い。
恐竜はもがいているが抜け出せないようだ。
「〈氷薔薇の棘蔓〉」
氷の床から棘の生えた蔓が伸び、恐竜の体に巻き付くと、美しい薔薇の花を咲かせる。
これで大分時間を稼げるだろう。
押さえつけた恐竜を放置して振り返る。
「よし、逃げるか」
通路の方に戻ると蜘蛛が糸を使って巣のようなものを張っていた。
下にだけ、通れるスペースが空いている。
『これで更に足止めが出来る。3つ程張ったから大丈夫だろう』
「へぇ、やるじゃないか」
蜘蛛の糸は、同じ太さだと世界中で一番強いとの評価を聞いたことがある。
足止めには有効だろう。
くぐり抜けて蜘蛛に言うと
『これぐらい普通だ』
と言って進み始めてしまった。
照れているのだろうか?
それは良いのだがもっと重要なことがある。
「進むのはそっちじゃなくてこっちだ」
『早く言ってくれ!!』
まったく、からかいがいのあるやつだな。
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30分程の時間を掛けて離れた場所に、新しい拠点を造った。
1人増えたから、部屋のサイズも拡張した。
3人はランチバックから出した食べ物を食べていた。
勿論、蜘蛛に渡す前に俺達が食べ物を出すことでバリエーションを増えさせた。
食べ始めて少したった頃……
「それじゃあ、そろそろ情報交換と行こうか」
『ああ、そうだな』
皿の上の乗っているステーキにかぶり付きながら蜘蛛が答える。
蜘蛛だから仕方ないとは言え、行儀が悪いな……。
「まずはあいつの事からだ。あんな恐竜がこの層には現れるのか?」
まず最初に一番の疑問をぶつけてみた。
一体で50ものモンスターを葬れる者が同一層にいるのはおかしい。
『いや、私がこの迷宮に生まれてから始めての事だ。元々この層には蟲型の魔物しかいないはずだ。いままでそれ以外の魔物を見たことがない』
そこで、はたと気付く。
70層では獣、80層では蟲。
10層毎に出現する魔物の種類が変わっているのだ。
そう考えると、あれは何かのイレギュラーだとわかる。
「そうか、わかった」
『じゃあ私の番だな。これは勿論、撤退の理由だ』
まあ、そう来るだろうな。
当たり前か。
「簡単だ。今のお前では攻撃が通らないからだ」
断言する。
これは重要だ。
攻撃さえ通らなければ、数の暴力でさえ役に立たない。
極論を言えば、疲れたら休むことが出来る。
それも敵の目の前で。
これが蜘蛛達が勝てなかった理由だろう。
蜘蛛達にとって、あいつは硬すぎるのだ。
『だが、お前が倒してくれても良かったのではないか?』
その疑問にも理由はある。
全てを言う訳ではないが。
「お前は、自分で『倒す』って言ってたじゃないか。それに、仲間の敵は自分で討ちたいだろ?」
実は少し違う。
こいつがこのまま自分で恐竜を倒さなければ、どこかで心に残り、解決することの出来ないしこりとなる。
なにせ、倒そうとしても、相手がこの世にいないのだから解決は不可能だ。
『そうなのだが……』
「心配すんな。絶対お前に勝たせるから」
『……わかった』
「勿論、私も手伝うよ」
聞きに徹していたライムが笑顔で声を掛ける。
彼女も、仲間の事で苦悩する蜘蛛を放っては置けないのだろう。
……ライムには虎の事で心配をかけてしまったからな。
状況は大きく異なるが、仲間への気持ちは自体はそう大きく異ならないはずだ。
ライムの為にも頑張ろうと思うのであった。
……蜘蛛の事もちゃんと考えてるよ?
ほんとだよ?
遂に総合PVが10万、ユニークが2万を越えました。
ありがとうございます。
もっと楽しんでいただけるようにがんばります。




