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~クラスまるごと召喚されました~勇者で魔王なので旅に出ます!?  作者: ねむ鯛
第二章 王都 ダンジョン編 
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第33話 遺した者と遺された者

第33話 遺した者と遺された者



『私が奴を引き付ける。その間に逃げてくれ』


「あっ。おい、馬鹿待て!」


こちらに目を向けて言うとそのまま四肢(……いや、八肢か?)に力をこめ飛び上がる。

勝手に特攻しやがった。


「ライム!援護しつつ、一応撤退を考えててくれ」


「わかった。魔法は使っても大丈夫?」


「勿論だ。だが、使いすぎには注意しろ。いくぞ」


蜘蛛はもうすぐで恐竜のそばまでたどり着く。

放っておいたら直ぐに殺されるだろう。

他の蜘蛛の援護があってボロボロにされ、九死に一生を得たのだ。

俺たちがいなければ死んでいた。


……なぜ俺は助けようとしているのだろう。

魔物とは言え……いや、魔物だろうが人だろうが関係ないのか。

1度は助けた奴が目の前で殺されるのは寝覚めが悪いからな。

……俺も甘いのだろうか。

城の奴等に甘い、なんて思っておきながらな。

あいつらに俺が言える立場じゃ無かったってことか。


迷宮の乾いた空気に気を引き閉め直し、戦闘を開始する。


蜘蛛は天井を伝って恐竜に近寄ろうとするが、恐竜が吠える度に土の柱が突き出し、行動を阻害する。


『小癪な……!』


恐らく、多くの蜘蛛はあれに殺られたのだろう。

ひしゃげた部分を以外にも、抉れたような傷を持った蜘蛛が多くいた。

白い蜘蛛は流石と言うべきか全て避けている。

しかし、石柱のあまりの量に近づけないでいた。

このままではじり貧であり、いずれその身に石柱を受けるのは想像に難くない。

それを黙って見ている積もりは毛頭無いが。


「〈螺旋氷槍スパイラルアイスランス〉!」


高速回転をする氷の槍が恐竜に命中する。

表面の金属のせいか、突き刺さる事はなかったものの、撒き散らした氷が体にへばりつき行動を阻害する。


「ガアアア!」


「いまだ!」


蜘蛛のために隙を作り、攻撃を促した。

これでわかってくれると良いのだが……。

逃げろと言ったのに戻ってきた俺たちを見て、不服そうにしていたが諦めたのか攻撃に移った。


『ハアア!』


蜘蛛が天井から足を離して突撃する。

振りかぶった右の前足からは紫色の液体が滴っている。

恐らく毒だろう。

重力に自身の跳躍力を足し、毒を纏った攻撃をする。

とても有効な攻撃だ。

攻撃が通るなら、だが。


『グゥッ!』


ガキンと音を起てて攻撃が弾かれる蜘蛛の攻撃。

恐竜の体の表面は重厚な金属で覆われている。

螺旋氷槍スパイラルアイスランスでも通らなかったのだ。

蜘蛛の前足では通るべくもない。


『クソッ!まだだ!』


攻撃が通らないとわかると撤退の指示に従ってくれるかと思ったが、甘かったようだ。

恐竜の背中に張り付いて、ガキン、ガキンと毒を纏った前足を交互に降り下ろしている。


「まだわかんねーのか!」


意地になっている蜘蛛に苛立ちが込み上げる。

仲間を殺されて許せないのはわからなくもないが、今は引くべきだ。

ここは迷宮の中なのだから、恐竜は逃げ出すことは無いのだから。


最初は体を揺すって蜘蛛を振り落とそうとしていた恐竜だが、どうやら方針を変えたようだ。

ライムも一緒に魔法を放って援護をしていたのだが、効果が薄い。

嫌な予感がした。


「おい!離れろ!」


蜘蛛も嫌な予感がしたのか、それとも知っていたのか。

既に急いで離れようとしていた。

だが、一歩間に合わない。


「ガアアアッ!」


恐竜が吠え、体に力を入れると同時に、背中の金属が形を変える。

さも、針ネズミの棘のように。

最も、威力はそんなに生易しい物ではなかったが。


『ぐあああぁぁぁっ!!』


鋭く尖った金属の針のうちの1本が蜘蛛の体を貫いた。

蜘蛛は貫かれた勢いのまま吹き飛ばされ、地面に落ちる。

金属の針の痛みが残っているのか起き上がれないでいる。

恐竜がだめ押しとばかりに大きく息を吸い込んだ。

これは不味い。


「ライム!」


王の器のお陰で、意思の疎通は比較的楽にできる。

今回はそれに救われた。


俺の声を受けたライムが急いで蜘蛛に駆け寄る。

蜘蛛を担ぎ、離脱しようとするライム。

だが、このままでは間に合わない。

だから俺がいる。


「おらあああぁぁぁああッ!!」


限界突破の青を身に纏い、瞬歩による全力の突撃を敢行する。

今まさに攻撃を放とうとしていた恐竜の顔を、剣でおもいっきり弾き飛ばす。

切れ味抜群の魔装剣でも切ることは出来なかったが、衝撃は伝わる。

顔の向きを無理矢理変えることに成功した。

顔の向きを戻すことが出来ないまま、恐竜は攻撃を放つ。

口から大量の砂が放射される。

所謂ブレスと言うやつだ。

ライム達がまともに受けていたらただではすまなかった事は、大きく抉られた迷宮の床がから想像することは難しくない。


間に合ってよかった。

正直、少し焦った。


「おい、蜘蛛!起きてるか」


『……何とかな』


「このまま撤退する。ライムに着いていけ」


『まだ……私は戦える……!』


「何が戦えるだ!ボロボロじゃねえか!別に倒すのを諦めるんじゃねぇ。作戦をたてて、もう一度挑戦するってだけだ!」


『だが、私は逃げるわけには行かない!』


ここで、ブレスを放った恐竜が硬直を終えた。

クソッ!蜘蛛が意地張ったせいで逃げられなかったか。


「逃げる訳じゃねぇ。戦略的撤退をするだけだ!」


『それは逃げることと同意だぞ!?』


頑固なくせに変なところで頭が回るやつだな。


噛みついてきた恐竜の攻撃をステップで避け、おまけとして足元を切りつけながら考える。


「うおっ!?」


思考が飛んでいたためか、尻尾で凪ぎ払ってきたので咄嗟に剣で防ぐも後ろに体を流される。

そのまま恐竜が頭を下げ突進する。


「ぐはっ……!?」


トラックのような突進を避けきれずにまともに受けてしまった。

吹き飛ばされた俺は壁にぶつかってやっと止まった。

いてぇな、畜生……!!


「ご主人!!」


駆け寄って来ようとするライムを左手で制し、立ち上がりながら言葉を紡ぐ。


「おい蜘蛛……。お前はここにいた黒い蜘蛛達に命を懸けて守られたんだよな……?」


『そうだが……今はそれよりもお前の傷を……』


「うるせぇ!黙って聞け!」


俺の怪我の事をごちゃごちゃ言い出した蜘蛛を怒鳴って止めさせる。

再び恐竜が突進の格好を取る。

俺はそれを無視して蜘蛛に語りかける。


「蜘蛛達は何のためにお前を守ったんだ?1人で死んでもらう為か?それとも仇討ちと称して殺される為か?違うだろう……。お前に生きて欲しいからだろう!?」


『それは……』


「お前を守って死んだ蜘蛛達の思いを汲んで生きるか、自分の下らないプライドの為にその思いを踏みにじるか!!どちらか選べ!!」


突進してきた恐竜を避けながら言う。

直後凪ぎ払われた尻尾を今度は叩き落とす。

周囲に砂ぼこりが舞う。


『私は……私は……!!!』


気持ちが揺れている。

後一押しだ。


「なら、もっと簡単な質問だ。しがらみとか、変に凝り固まった考えとか、全部捨てて答えろ!お前自身の自由な答だ!!」


視界が砂ぼこりに覆われて動きが止まった恐竜に、下から何本もの石柱で突き上げ、体を浮かせる。


「こいつに踏み潰されて死にたいのか、こいつをぶっ飛ばして生きて人生を楽しみたいのか!どっちだ!!!」


体が浮いた恐竜を、瞬歩で勢いを付け、その側面を蹴り飛ばす。


『私は……生きたい!!こいつを倒してこの人生を楽しみたい!!!』


恐竜の巨体が吹き飛び、大きな風圧が起こる。

――砂ぼこりが吹き飛び、視界が開ける。


立っているのは願いを言わせた者。

悪戯に成功した子供のような笑みを顔に浮かべ、笑う。


「いいぜ。その願い、叶えてやる。」






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