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第13話 理由

第13話 理由


「少し聞きたいんですが……どうしてシオンは冒険者になろうと思ったんですか?」


俺がガザルの説教から逃れるべく言い訳を考えていると、サリーが俺に冒険者になった理由を尋ねてきた。


「冒険者になった理由?」


「そうです。えと……言いたくない理由とかがあったら、別に言わなくていいですけど」


「理由ね……」


サリーの言葉に、天井を見上げて考えを巡らせる。


実際なった瞬間に理由は無い。

と言うか俺の意図したものですらない。

ただの、成り行きだ。

……でも、そうだな、今は楽しんでる。だって面白いじゃないか。


「楽しくないか?」


「え?」


「俺の目の前に知らないことが、今までじゃあり得なかった事がここにはゴロゴロ転がってるんだ」


せっかくの異世界だ。楽しまなきゃ損じゃないか。

未知を、未体験を、不可思議を。あらゆる物に挑み、楽しむ。それが冒険であり、冒険者だろう。

――でも、やっぱり、そうだな。


「帰らないと……な」


「どうかしましたか?」


どうやらつぶやいた言葉はしっかりと聞こえなかったらしく不思議そうな顔をしていた。


「いや、なんでもない」


俺は元いた世界に帰らなくてはならない。

俺の両親は訳あって他界している。今では妹が唯一の肉親だ。

そんな妹を一人で放っては置けない。

俺の明確な目標が決定した。

帰る方法を探しながらこの異世界をめいいっぱい楽しむことだ。


「ありがとう」


「どうしたんですか、藪から棒に。私、何か感謝されるようなことしましたか?」


「いや、こっちの話だ」


サリーのおかげでいろいろと決めることができたからな。その感謝だ。

魔王を倒して帰る方法を手に入れるってのはあいつらに任せれば良いだろう。

悪いが、俺は俺でこの世界を楽しませてもらう。帰る方法は、世界を回りながら同時進行で探せば、楽しみつつ、効率的に探せるだろう。我ながら素晴らしい考えだな。

見つからないなら最後の手段として魔王に会いに行けば良い。

ただでさえ強いと言われている魔族の王だ。きっと楽しめるだろう。

それにしても……


「戦うのも楽しいからなぁ……」


そうだ。

今思い出せば日本でも喧嘩をしているとき、少なからず楽しんでいた。


「しっかり気付いたのはガザルと戦ってたときだな。あの時は楽しかった。なんか、ワクワクしたんだよ」


戦いでワクワクってどこの戦闘民族だよ。

まあ、仕方ないよな。

楽しんじまったんだからな。


「冒険も戦闘も楽しいからな。だからこその冒険者かもな。でもまあ、戦闘狂ってのはやっぱ危ないよなぁ……」


今はこれがサリーの質問に対する俺の答えになるだろう。


「そうなんですか……。でも、そんなこと無いですよ。戦いを楽しむ人はたくさんいますし、私は獣人です。力が全て……とは言いませんがそれなりに強さを好む傾向にあります。それに、シオンは優しい人ですから」


告げられた言葉に俺は驚いて勢いよくサリーに顔を向けた。

優しい?俺がか?優しいと思われる様な事した覚えは全く無いんだが。


「俺は別に優しくないぞ?寧ろひどいやつかもな」


人を馬鹿にするのが楽しかったりするし。

主に優とか、優とか、優とかだな。

あれ?案外俺優しいんじゃね?


サリーは俺の言葉を信じていないのか微笑している。


「そう言えば、サリーは何で冒険者になったんだ?」


「私ですか?私は……家への仕送りですね。父は魔族との戦いで亡くなって、母は病気がちですから。弟もいますし」


「そっか」


また、ここで魔族か。

魔族からの被害も目に見えるとだいぶ違うもんだな。

俺は召喚された時に聞かされた魔族との問題は、どこか別の場所の事の様に感じていた。

だが、被害者は確実にいるのだ。

ふと、俺はこんなところで勝手な行動をしていて良いのかと思った。


だがその考えも直ぐに捨てる去る。

俺は俺にやれる事しかできない。

魔族はかなり強いと聞いている。

いくら初期のステータスが高かろうと今の俺は魔族より弱い可能性が大きい。と言うよりもほぼ負けているだろう。

魔族について考えるのは強くなってからだ。

俺は俺の大事な物を守れればそれでいい。ついでに困ってる奴をちょっと手助けできて、戦闘を楽しめるくらいだったらなおいい。


「おい、シオン……」


声をかけられ考え事を止めて前を見ると(ガザル)がいた。


「ひッ!」


つい情けない声を出してしまった。

よく見るとサリーもデニスも部屋にいない。

裏切り者!


「魔力切れには注意しろって言ってたよな?」


ガザルはニコニコ笑っているが目だけは笑っていない。


「はい、そうあります」


「じゃあ、何で魔力切れ起こしてんだ……?」


「いやぁ、それは練習に集中し過ぎて……」


「MPの枯渇は体に悪い。気絶することもあるし過ぎれば死ぬ。そう、言ったよな」


ガザルの怒気の中にこちらを心配する気配を感じた。

さすがに申し訳なく思ったので俺は謝罪を選択した。


「すまない」


俺の返答に「はあぁ……」とため息をついたガザルは


「まあ、良い。気を付けろよ。あと、明日から三人でMPを使用したスキルの訓練だ。良かったな」


ガザルは、そう言って出ていった。


やっと三人で訓練ができる。

寂しかったんだよな~。


――――――――――――――――――――


明けましておめでとうございます。

新年一発目の投稿です。

ストックが無いってきついですね……


とりあえず、もうすぐ本編の訓練も終わりますのでどうかお付き合いください。


最後になりますが今まで、読んでくれてありがとうございます。

稚拙な文書ですが、今年もよろしくお願いします。


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