第96話 知らぬが仏
遅れました、すみません。
真剣な表情のガザルに連れてこられたのはギルドの訓練場だった。
その時点で俺にはガザルの目的がわかってしまった。
「そうか、それで連れてきたのか……」
「は?」
突然何かに気づいた様子の紫苑にガザルはポカンとした表情を見せた。
全く話が読めなかったガザルの頭の上には?マークが飛び交っている。
真面目な話をしようとしたところで相手が謎の解釈をし始めたらそうなる。当たり前だ。
「あいつらここでやってしまったんだな……」
紫苑は遠い目をした!
「は?」
ガザルは困惑した!
「あいつらに悪気はなかったんだ。ただ一心に己の過ちを正したかっただけなんだ」
「……ちょっと待てお前はなんの話をしているんだ?」
「穴掘り土下座だが?」
「なんの話だよ!!?」
「俺にあいつらが掘った穴を埋めろって事じゃないのか?」
「ちがうわ!!」
なんだ違うのか。ほら、床土だし、間違ってもおかしくないだろ?
日本では良く埋めさせられたからな。校庭にあいたたくさんの穴を埋めるのは辛かった。
だから全員呼び出してもう一度させてから埋めさせた。次からはもちろん埋めるまでセットだ。
大きく吠えて息を乱したガザルが落ち着くのを待ってから改めて問いかけた。
「それでこんな所に連れてきてどうするつもりだ」
「……お前は明日ここを立つつもりか?」
ガザルは俺の質問には答えず質問を返してきた。
穴掘り土下座のことで何か言われるかと思ったんだが違うのか。
「まあな。元々ギルドに登録した後はすぐに出るつもりだったし。あんまり長く居るつもりはなかったからな」
それに、日本には妹がいる。
必ず帰る方法も探さないといけない。
「そうか、実はその前にやっておきたいことがあってな」
「やっておきたいこと?」
「そうだ、訓練場に来たのは他でもない。お前と手合わせするためだ」
「手合わせね……」
前回ガザルと戦ったときは軽くあしらわれただけっだった。
だが今の俺はその時の俺ではない。
度重なるレベルアップによってステータスは底上げされ、スキルも多数獲得。
魔法だって使えるようになって、戦闘の幅が広がった。
何より……、今の俺のステータスはあのとき見たガザルのステータスを大きく上回っている。
鑑定。
ステータス
ガザル・ジーク 46歳 男 人族
レベル:167
HP :5461/5461
MP :3778/3778
筋力 :5293
耐久 :5164
魔力 :3422
魔耐 :4079
敏捷 :4837
運 :30
スキル:ユニーク―強者の誇り
戦闘術―聖剣術Lv3・槍術Lv8・格闘術Lv7・盾術Lv9・戦斧術Lv6・魔装術Lv5
身体術―気配察知Lv10・魔力察知Lv10・魔力操作Lv6・危険察知Lv8・隠密Lv7・身体強化Lv9・瞑想Lv4・高速思考Lv8・並列思考Lv3・予測Lv5・天躯・瞬歩
能力強化―視覚強化Lv6・聴覚強化Lv7・精神強化Lv9
耐性―全属性耐性Lv8・毒耐性Lv7・麻痺耐性Lv5・睡眠耐性Lv2・石化耐性Lv1
エクストラ―上級鑑定Lv3・自然治癒Lv10
魔法 :大地魔法Lv1
称号 :強き者・鍛練の鬼・ギルドマスター
ガザルのステータスは初めて会ったあのときから変化がない。
対して俺はダンジョン脱出時にはレベル1の時点で、運以外の全てのステータスが一万を超えていた。
スタンピードで再び大幅なレベルアップを果たした現在では……
ステータス
七星 紫苑 17歳 人族
レベル:102
HP :26438/26438(14506up)
MP :28957/28957(16874up)
筋力 :24606(13044up)
耐久 :23949(12628up)
魔力 :28175(15873up)
魔耐 :21851(11097up)
敏捷 :26940(14822up)
運 :150
スキル: 伝説級レジェンド―追憶の回廊・メニュー
ユニーク―王の器・勇者の卵・魔王の卵・言語理解
戦闘術―剣術Lv9(2up)・格闘術Lv7(2up)・魔装術Lv8(1up)
身体術―気配感知Lv1(new!)・魔力感知Lv2(new!)・魔力支配Lv2(new)・危険察知Lv4(1up)・罠察知Lv7・身体強化Lv5(2up)・分割思考Lv9(3up)・隠密Lv3・回避Lv6(4up)・天躯・瞬歩・瞬天・限界突破
耐性―火耐性Lv3・水耐性Lv2・風耐性Lv3・土耐性Lv4・光耐性Lv1・闇耐性Lv4(3up)
エクストラ―上級鑑定Lv6(1up)・上級隠蔽Lv4・上級偽装Lv4・振動操作Lv9(4up)
魔法:無魔法Lv4(2up)・火炎魔法Lv1(new!)・水魔法Lv9(2up)・風魔法Lv7(2up)・岩石魔法Lv2(1up)・光魔法Lv5(1up)・闇魔法Lv6
称号:王の器・未熟な勇者・未熟な魔王・異世界人・迷宮ダンジョン攻略者
こうなっている。
スキルはあまり伸びてはいないが、ステータスの伸びが凄まじい。
シェリー達に会ったときに『王の器』の『大器晩成』を『大器早成』にして貰ったのもあって、レベルが上がりやすかったのが理由の一つとして挙げられるだろう。その上でスタンピードを処理したことがここまでのステータスの強化につながった。
一部のスキルは上位スキルに変化している。
ここまで来てはガザルとの差は4倍では利かないほどだ。
ステータスを見ただけでは負ける理由が見当たらない。
それよりも気になる事がある。
「何で今更手合わせを?」
「なに、ただの説教さ」
「は?……説教?」
なんだそれは。何かしたのか。
「やはり穴掘り土下座か……」
「だから違うって言ってんだろ!いい加減にしないと冒険者資格剥奪するぞ!?」
それはこまる。
「迷宮の帰り道で言ってただろう。お前が途中で転移したからなくなったけどな」
迷宮でか?……なんかそんなこともあったような……。
「ちょっと待てそれって一ヶ月も前の話じゃないか!時効だろ?」
「俺からしたら一週間ほどだ。残念だったな」
くっ、なんて横暴だ。
「悪いが既に決定してる。お前も別に怪我も大した疲れもないだろう?」
「まあな」
限界突破も使ったがその疲労ももう回復した。最初の頃よりも慣れたからな。
体調的には問題ない。まあ、そういう話では無いが。
「今回は実剣でやる。お前も自分の剣を使え」
訓練用の剣じゃないのか。
まあステータスでは勝っているんだし、問題はないか。
「さて、色々勘違いしているお前のためにも始めようか」
そう言ったガザルは何もない空間から巨大な剣を引き抜いた。