第6話 冒険者登録
第6話 冒険者登録
1日目
「……着いた」
ようやく俺は冒険者ギルドに着いた。
城を出てから2時間が経っていた。
リリーには30分で着く距離だと言われた。
……仕方ないだろ、迷ったんだから。
帰るのは簡単だ。ここから城が見える。
……確かに30分の距離だな。
チクショウ!
なんかこれからの旅が不安になってきな。
この世界の文字で冒険者ギルドと書かれた看板の下にある扉をくぐる。
言語理解のおかげでちゃんと理解でた。
もしかしたら、ここに来て文字の読み書きを覚えなくてはいけないかも、と思っていた俺には嬉しい限りだ。
中は朝ながら冒険者で溢れ帰っている。
いや……逆に朝だからなのか?
5人程でテーブルに座り前日の成果であろうか?を称えあって酒を飲み交わしたり、たくさんの紙が貼られたボードの前で話し込んでいる者もいる。
それぞれ自由にしているようだ。
……そういえば思わぬ形で自由に動ける様になったな。
怪我の巧妙ってやつか?
俺はそれらを視界の端に入れながら、受付カウンターに足を運ぶ。
リリーには、まず受付で冒険者登録をするように言われた。
よって直行する。
冒険者の列が出来ていたのでそれに並ぶ。
「次の方、どうぞ」
俺の順番が来て、受付の女性がそう促す。
……別に女の人が良かったからとかじゃないんだからねっ!?カウンターは皆女の人だから仕方なくなんだからねっ!
「あの……どうしましたか……?」
どうやらボーっとしていたようだ。
受付の女性がこちらを怪訝な表情で見ている。
「いえ、大丈夫です。冒険者登録に来たんですが……」
「……はい。承りました。銀貨一枚になりますが宜しいですか?」
どうやらさっきの事には触れないで居てくれるようだ。
ありがたい。
俺は腰の袋から銀貨一枚を取りだし、彼女に渡す。
……何で俺がお金を持っているかって?
王女サマから貰ったんですよ!ええ、貰いましたとも!
無一文なんだから仕方ないだろ!?
俺の今の所持品は、リリーからもらったこの世界の服。
装備一式、腰の袋とその中のお金、そしてアイテムボックスの制服だけ。
装備一式は、腰にさげた片手剣・身につけた軽鎧・背負った盾。
資金は、大銀貨一枚に、銀貨十枚、大銅貨十枚だ。
この世界のお金は、銅貨(100円)・大銅貨(1000円)・銀貨(1万円)・大銀貨(10万円)・金貨(100万円)・大金貨(1000万円)・白金貨(1億円)らしい。
今俺は20万持っていることになる、銀貨一枚渡したからな。
「あとこれも。ギルドマスターって人に渡してください」
俺が渡したのは手紙だ。
ラブレターじゃないぞ。
リリーから貰ったものでギルドマスターに渡すようにと念押しされている。
「はあ、解りました」
一瞬驚いた様だが、そこはプロなのか即座に平常運転に戻り、後ろで控えていた子に手紙を渡した。
「それでは、登録に移ります。この紙に必要事項を記入してください。名前だけでも結構です。代筆も承っておりますがどうしますか?」
「自分で書けるので大丈夫です」
とりあえず当たり障りの無いように名前だけ書いておく。
「シオン・ナナホシ様で宜しいですね?」
俺は頷く。
「それではギルドカードの準備をする間、冒険者についての説明を受けますか?」
「お願いします」
「冒険者とは基本的に自由な職業です。
ギルドは国から独立しているので、国からの強制的な干渉はありません。ただし、クエストとしての形で依頼を受けることはあります。勿論参加は自由ですが。
ランクに関しては実績ににより上昇します。ギルドカードの色が変化しますのでその時に試験を受け、合格することでランクアップとなります。特例もありますが今はそれはいいでしょう。
クエストはランクの上下2つを受けることができます。勿論上のランクのクエストの方がランクアップまでは早いですが、無理はしないようにしてください。
ギルドカードの再発行には大銀貨5枚が必要になりますので注意して下さい」
「わかりました」
高いな再発行。
「それでは、準備が出来ましたのでカードを作ります。このカードに魔力を流してください」
そこで俺は焦った。
魔力の流し方なんて知らんぞ!
そんな俺に気付いたのか生暖かい目で助け船を出された。
「カードに触れるだけでも結構ですよ」
またその目か……、またその目なのか……!
カウンターの上にカードが置かれている。
恐る恐る俺はそれに触れてみた。
すると、俺の中から何かが流れて行くのを感じた。
これが……魔力。
さっきまでは解らなかったが、今は解る。
元の世界では全く感じなかった物だが、気付いていなかっただけで転移後からあった力。
「どうしましたか?」
「いえ、何でもありません」
どうやら考えすぎて、不思議に思われたようだ。
……いいね?不審にじゃないよ?断じてないよ?
「これで登録は完了しました。頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうごさいます」
そう言ってカウンターから離れようとしたとき太く響く声に引き止められた。
「お前か?シオンってのは」
そう言ったのはさっき渡した手紙を右手でヒラヒラさせた筋肉質の大男だ。
……そうですが何か?