三十七発目 俺とガイアス
今まで読んでくださりありがとうございます。
多分、今まで以上に滅茶苦茶なものになりそうなんで、これ以上は付き合ってられないという方はUターンしてもらってもしょうがないなぁって思ってます。
ということで、久々の更新です。
あとで知ったことだが、今俺たちがいる建物は冒険者組合ってもののものらしい。
ガイアスに冒険者登録の手続きを頼んで待ってる間に宿の手配をしてくれていたトランテッタもここにやって来た。
俺たちも大概だが、トランテッタの黒い執事服も場違いな感じだからよく目立っている。
「おーい、ここだ! トランテッタ!」
「! アルファ様そちらでしたか…………って、どうしたのですか!?」
端正な顔立ちのトランテッタが、俺たちに近寄って来ると同時に眉をひそめる。
「アルファ様、何をどうすればこのような結果になっているのですか?」
トランテッタの視線は、寛ぐ俺の目の前で青い顔をして震える男たちに向けられている。
「説明はしていただけるんでしょうね?」
さすがのトランテッタも状況がわからなかったようで俺に説明を求めてきた。
その笑顔は有無を言わせない威圧感がある。
うん、冗談とかは通じなさそうだ。
「いや~、俺たちはただ冒険者登録しようとしていたんだけど、こいつらに軽く絡まれて何か勝負する流れになったから、これからこの街での生活に何か役立つかなぁと思って、この街を含めたいろんな情報をいろいろ聞き出していたんだ。こいつら『宵の月』ってののメンバーらしい」
「『宵の月』!? アホなのですか、アルファ様」
「あれ? ダメだったか? 一応口止めがわりに脅しもかけておいたんだが」
「そんなことまで! ダメに決まっているでしょう。まったく」
トランテッタがため息をつく。
「『宵の月』はこの街でも中堅クラスの冒険者集団ですよ。代表のツクヨミは精霊の契約者という噂です」
「精霊の契約者!? たしかに、あいつらも自分らの代表は特殊な力を使うって言っていたけど、まさか契約者だったとはな。…………俺にサラにトランテッタも契約者なんだろ。なんか契約者多くね? 精霊の契約者って、そんなにいるものなのか?」
「アルファ様の出身地では珍しいかもしれないですが、こちらの街では、たまに契約者を見かけることもありますよ」
「そうなのか!」
俺はけっこう文献を漁っても見つけられなかったっていうのにこんなに多いとは以外だった。
そりゃ、仕事で領地外にも出かける機会の多かった俺の父親のレイナードが契約者って単語を知っていたのも当然か。
「まあ、一般的な冒険者は武器で戦う前衛職が一番多く、次に後衛を担う弓使い、魔導師と続きますが、契約者も数は少ないですがそれなりにいますよ」
「その契約者たちって強いの?」
「それはもう。アルファ様や私、サラさんのようにそこまで戦闘に特化していない契約者もいますが、中には個人で魔物の群れとやりあえるような猛者もいるはずですよ」
「すごい!」
トランテッタの説明を聞き、サラが瞳を輝かせる。
うん、サラのやつ、契約者とすごく戦いたいんだな。
そんな気持ちがヒシヒシと伝わってきた。
前から強くなりたいとは言ってはいたが、最近その傾向がより強くなっている気がする。
白いメイド服がいつの日にか真っ赤に染まっていそうで怖いな。
若干バトルジャンキーになりつつあるサラについては今は触れないでおいた方が良さそうだ。
別な話題を振っておこう。
「因みに、そのツクヨミってのはどんな奴なんだ? あいつらも新入りで、まだ代表の顔を見たことはないってことだったし」
「それはさすがにわからないですね。面識もないですし。でも部下たちに、ここまでのことをされたのなら組織の代表としては動く可能性が高いと思いますよ」
「それなら今は大丈夫だ」
「あっ、ガイアス」
「あいつらなら夕方までは外にいて街にはいないし、代表不在で好きにやっていたこいつらにもいい薬になっただろ」
俺たちの冒険者登録を終え戻ってきたガイアスがフォローをしてくれた。
「ガイアス、あなたって人は」
「トランテッタ、ガイアスのことを知ってるのか?」
俺の言葉をきき、ガイアスがガハハと笑う。
「おうよ。ワシはこいつのオムツも換えてやったことがあるんだぞ」
「昔の話です。ガイアスは私の父の親友だったんですよ」
「こいつの父親が生きていた頃は、他の気の合う奴らと組んでいろいろなダンジョンを荒らし回ったもんよ。こんな体になった今ではこんな仕事をさせられているがな。あの頃が懐かしいわ」
昔を懐かしみ、悲しそうな顔をするガイアス。
両足が健在だった頃を思い出しているのだろう。
そんなに戦いたいのなら無理しなくてそうすればいいんじゃないだろうか?
人間ストレスを溜めるのは良くないはずだ。
「ふーん、だったら俺たちと一緒に来るか?」
「何!?」
「俺たちもダンジョンに行く機会もあるし、ダンジョンの経験者は多い方がいいだろう」
俺の言葉を聞いてガイアスが目を丸くしている。
いや、よくみるとガイアスだけではなく、トランテッタとサラも驚いている。
そんなに以外だっただろうか?
「おいおい、嬢ちゃん、ワシはこんな足だし冒険者はもう無理だぞ」
「そうか? そこいらの中途半端な奴よりは、よっぽど戦えそうだけどな」
俺に中途半端な奴と言われ、俺にやられた男たちの顔がビクッとなる。
「ガハハ、そりゃさっきお前が倒した、そこの若造たちよりは戦えるだろうがな」
「だったら十分だろ。トランテッタはともかく俺とサラは戦いはまだ素人同然だし、いいと思うんだがな。それに、ひょっとしたら俺たちと一緒にいることでお前も何か得られるものがあるかもしれないぞ」
俺はガイアスに笑いかける。
「アルファ嬢ちゃんが契約者っていうのはわかっているし、実力も認めるが、ワシが求めるものを用意するのは無理だろ。
もう誰にも与えることはできないさ」
「その斧を振るう場なら俺たちが用意する。すぐは無理かもしれないがガイアス、お前のその足の代わりもいづれ用意してやるよ!」
「なっ!?」
ガイアスが目を見開くが、それは喜びというよりは怒りからきたものだろう。
「おいおい、あんまりおっさんをからかうものではないぞ。期待させるだけさせて、もし裏切りでもしたら下手したら怪我だけではすまんかもしれんぞ」
「別にいいんじゃね」
「お前は己の言葉に命をかけるというのか?」
「だから、そう言ってるだろ?」
俺はニヤリと笑いかける。
「…………………………………」
まあ、俺もこんなお嬢様姿だし、俺の言葉が信じられないのも無理はないだろう。
勧誘は無理かな。
そう思ったのだが、
「いいだろう。お前たちについていこう」
「あれ?」
すんなり受け入れすぎじゃね?
「何を驚いとるんだ。誘ったのはそっちだろう」
「それはそうなんだが、簡単すぎねぇ? ここはもうちょい決闘とか盛り上がりがあってもいいような…………」
「盛り上がりが必要なら、別の奴が用意してくれるだろうよ」
「?」
「じきにわかるさ。それで、お前ら今日はこれからどうするんだ?」
ガイアスが俺ではなく、トランテッタに声をかける。
なぜ俺ではなくトランテッタにと思うが、そこは信用度の問題だろう。
俺も逆の立場で同じ状況ならトランテッタに聞くだろう。
「本当ならこのまま休みたいところなのですが資金調達のため、今日これから私たちはダンジョンにいって一狩してこようかと思っています」
「ほう」
ガイアスが目を細める。
「この時間から行けるダンジョンといえば限られてくるな。『獣たちの草原』、『常夜の洞窟』、『大樹の森』…………そして難易度は高いが『巨人の足跡』くらいか」
「私たちは『巨人の足跡』にいく予定です」
「ガハハ、あそこは余程の馬鹿か自殺志願者くらいしか行かないぞ」
えっ、ガイアスみたいな純粋なバトルジャンキーが止めるようなところに行って大丈夫なのか?
「なあ、もっと簡単なところにいった方が良くないか?」
「アルファ様、誰も行かない場所だからこそ、稀少な価値ある素材がとれるんです」
「まあ、頭のいいお前なら何か手はあるんだろうが大丈夫か?」
「アルファ様のお力があれば問題ないかと」
「ほほう、たいした信頼感だな」
優雅に微笑むトランテッタと対照的に粗野に笑うガイアス。
よくわからないが、とりあえず一つ言えることは俺たちに仲間が増えたということだろう。




