三十五発目 要塞都市と厄介事
作者です。
文章力構成力がないにも書いているので、読みにくい部分も多々あると思います。
場合により加筆修正していくこともあると思いますが御了承ください。
読んでくださったかた、ありがとうございます!
今日も俺とサラ、トランテッタの三人を乗せた馬車は順調に進み、昼前頃には遂に俺たちは魔物の出現報告の多い王国の東側の地方に到着した。
何か街が見えてくる…………って、なんかデカくないか?
塀も堀もバカデカイ!
幅なんて、何キロメートルあるんだって感じだ。
窓から身を乗りだし唖然としている俺の様子に御者席にいるトランテッタが微笑む。
「今見えているのは、東の地方の主要都市、要塞都市プルーシスの城壁ですね。その昔、魔物の進行に備えて建築されたらしく、その現代では失われた技術の粋を集めて建造された城壁の強固さは凄まじいの一言です」
「魔物が攻めてくるって、そんなことがあるのか?」
「大昔はそのようなこともあったみたいですが、大規模討伐が行われてからはそのような話は聞きませんね」
「大規模討伐?」
「あっ、あたしも聞いたことある。昔、戦争のために魔物を倒しまくった時があったって」
サラも思い出したように俺とトランテッタの話に入ってきた。
「ですよね。トランテッタさん」
「サラさんの言う通りです。隣国との戦争を前に、自国内の安全の確保と武具となる素材集めのために腕利きの冒険者と王国軍精鋭との編成で、近隣いったいの主だった魔物を狩り尽くしたんです」
「まじか!」
魔物にとっては大迷惑な作戦だったろうが、人間としてはしょうがない判断だったんじゃないかと思う。
「じゃあ、その大規模討伐とやらで魔物は全滅したんじゃないのか?」
「魔物は魔力の溜まり場『ダンジョン』で産み出されていくので、全て狩り尽くしたとしても全滅ということはないですね」
「ダンジョンって、洞窟とかなのか?」
「様々ですね。私が知っているだけでも洞窟もあれば、古代の遺跡もありますし、何のへんてつもない平原のような開けた場所だったりもします。巨大だったり、力のある魔物が討伐された場合、そのモノの魂がその土地に影響を与えダンジョン化するようです」
「ボスとかいるのか?」
「ボスといいますか、核となる魔物はもちろんいますよ。そのダンジョンの元となった魔物の恨みを一番引き継いだ魔物がそれで、それを倒すとダンジョンは一旦消滅し再び誕生するのです」
「そういうものなんだな」
ゲームとかと違い、ボス倒してクリアとはいかないってことか。
希にダンジョン以外でも何かの拍子に魔力が溜まり、魔物が生まれる場合もあると言うことだが、俺の生まれた南の地方がそれに当たるみたいだ。
通りで魔物の被害も少ないはずだな。
「さて、それでは街に入るとしましょうか」
「おう」
俺たちを乗せた馬車が堀にかかる桟橋を渡っていく。
門も馬車が余裕で三台は並んで通れるほど巨大で驚いたが、街の中はもっと俺を驚かせた。
「ついた~! うわっ、メッチャ賑わってんじゃん」
街の中には明らかに冒険者風の者たちもいれば、身なりのいい商人や一般の物売りもいたりする。
通りに並んで隙間なく建てられた煉瓦作りの街並みは美しく、俺の興味とワクワク感を掻き立てる。
「!?」
特に俺の興味をひいたのは、『エロエロマッサージ、格安中!』とピンクののぼりをはためかせたこじんまりとした店だった。
怪しさもタップリだが、そんなことは関係ない。
マジか! この世界にもそんな大人な店が…………でも、人がいて男女がいれば、そういう店も必然的に生まれるってことか?
俺は拓也時代にもそのような店にいったことはなかった。
いや、正確にはいけなかったというべきか。
いっとくが、度胸云々の話ではない。
拓也時代に初任給を握りしめて初挑戦を試みたことはあるのだが、俺の来店に気付いたマネージャーらしき人に別室へ通され、「お願いしますからこれで帰ってください」と現金を握らされ懇願されたのだ。
話を聞くと、俺を見た店の女の子たちがショックで退店したら困ると言われた。
ああ、あのときは自分の不細工さに気づかず、失礼な!と思ったさ。
ネット画像での自家発電の回数も増えていったさ。
だが、この世界での俺は完全無欠の美少女だ。
性別はともかく、容姿で来店拒否される心配はない。
いつか一人で行ってみよ。
賑わう大通りを抜け、二階建ての煉瓦作りの建物前で馬車が止まる。
トランテッタに手をとってもらい馬車を降りる。
「腰いてー!」
降りてすぐに体をほぐす。
「なあ、トランテッタこれからどうするんだ?」
「とりあえず、路銀も乏しくなってきていましたので、アルファ様たちにはここの集会所で冒険者登録をしてきてもらってもよろしいでしょうか。時間があれば、今日中に依頼の一つも受けてみてもいいかと思うので」
「その間にトランテッタはどうするんだ?」
「私は、馬車を預けて、今夜の宿の手配をしてから来ます。アルファ様たちは目立ちますので、くれぐれも無茶や厄介事を起こさないようにしてくださいね」
「わかった」
「もちろん」
俺とサラが頷くとトランテッタは優しく微笑み馬車を走らせていく。
さて、ちゃっちゃと用事を済ませますか。
「サラ、いこうぜ」
「うん」
建物の中にはいっていく。
中には冒険者らしき人間がちらほら見える。
思っていたより人数は少ないな。
まあ、昼間のいい時間で依頼も引き受けずにこんなとこで燻っている奴らはそう多くないってことか。
そのまま通路を進み、窓口カウンターらしき場所に座っている厳ついおっちゃんに声をかける。
「こんちわ」
「こんにちは」
「…………何か用か?」
おっちゃんはこちらを見ずにぶっきらぼうに問い返してくる。
「…………」
俺としては用があるから声をかけたんだが……とは思わずにいられない。
受付カウンターの中の席はどう考えても普通可愛くセクシーな女の子が座る場所のはずだが、そのおっちゃんは歴戦の戦士の風格漂う壮年のおっちゃんだった。
浅黒い肌にはいくつもの傷があり、ドワーフのように剛毛の口髭を生やしている。
そんな厳つい人物が受付の中にいて、受付係が似合いそうな美少女の自分達がカウンターの外にいる。
おかしな状況だ。
対応といい見た目といい人選ミスってね?
責任者がいたら俺は胸ぐらつかんで問いただしていたかもしれない。
俺は深呼吸して用件を告げる。
「あの冒険者登録したいんだけど、ここでいいんですよね」
「こんなところに女の子二人組とは珍しいな…………っ!」
俺とサラを見ておっちゃんの動きが止まり、若干赤みがかったおっちゃんの瞳が細まった気がする。
まあ、気持ちはわからなくもない。
俺は今、十五歳くらいの茶髪を一つくくりにした美少女姿で服装は黄色のショートドレス。
サラは剣を携帯しているとはいえ、肩で切り揃えた黒髪が際立つ純白のメイド服。
そんな俺たちがいるのは鎧やそれに準じた装備で身を固めた冒険者たちのいる空間。
うん、どう考えても場違いだろうな。
そんなことを考えていると後ろから俺たちに声をかける奴らがいた。
「お嬢ちゃんら二人して冷やかしか?」
「ヒュー、二人とも可愛いじゃん。俺らと組まない?」
軽鎧をつけた軽薄そうな若い男の二人組だった。
「『宵の月』の若造どもか…………止めとけ」
おっちゃんは立ち上がることもなく男たちに声をかける。
俺らの心配をしてくれるなんて、案外優しいおっちゃんなのかもしれない。
そう思っていたのに、
「お前らの技量じゃ殺されかねんぞ」
おっちゃんがそんな言葉で締めくくる。
えっ、心配って俺らじゃなく、男たちのほうの心配だったの?
いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
そんなことを言われた男たちは、きっと…………。
俺は男たちの方を見る。
「舐めやがって!」
「やっちまおうぜ!」
うん、顔を真っ赤にしてすっかり頭に血が上っているようだ。
こんないたいけな少女たち相手にヤル気満々だ。
いや、俺らがこんな見た目だからこそ怒ったのだろうが。
というか、俺たちは男たちに勝手に声をかけられただけで、実際に男たちを煽ったのはおっちゃんだろ。
いくら自分等よりおっちゃんのほうが強そうだからって、こっちに怒りを向けんなよな。
「ちょっと、お前らな。そんな文句は--」
「まあまあ、いいじゃないアルファ。こういうのは口でいうより態度で示すのが分かりやすいって。相手をしてあげようよ」
誤解を解こうとする俺をサラが止める。
せっかくの暴れられる機会を見逃すのはもったいないと思っているようだ。
「では、『宵の月』の若造ども。お前らこのお嬢さんら二人と闘技場にて決闘するということで処理を進めるぞ、いいか」
「おう、頼んだぞ」
「さっさとしろよ、おっさん」
「負けた方がここの闘技場代を払うってことでいいな」
えっ、金とんの?
そんな俺の驚きをよそに話は進む。
「いいぜ!」
「のぞむところだ!」
「絶対に負けられないね、アルファ」
どうしよう。
誰も俺の話を聞いてくれない。
こうして、トランテッタに釘を刺されていたというのに俺は全く予期せぬうちに厄介事に巻き込まれてしまったのかもしれない。




