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黄泉の河  作者: ののろ
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この世

臨死体験というものは不思議なもので、一種の共通点があったりする。

たとえば九死に一生を得た人は川の夢を見る、川の岸は花畑であったり、いい香りに満ちて楽園のような場所であったりする、そして大概は対岸に身内が居て「お前はまだ早い」とか言われ追い返される。

不思議とそれは日本人だけではなく、海外で臨死体験をした人に綺麗な川や花畑に行ってたと語る人が居るのだ。


三途の川、その少し不気味でユーモアあふれる話は誰でも一度は聞いたことがあるだろう、聞いたことのない人は身近なお年寄りに聞いてみてはくれないだろうか、きっとその人は面白おかしくあの世の世界を語ってくれるはずだ。



もし身近にお年寄りが居ないのなら、これから俺が語る長い長い臨死体験について聞いて欲しい




- 黄泉の河 -




自分が「ああ、これ死ぬな」と思った時にはもう俺の乗っていた車はガードレールを突き抜けて、数十メートル先の崖下へダイブしていた。


それは大型連休を実家で過ごした帰り、山越えをしていた最中に起こった。

突然のスコールのような激しい雨に運転中の視界はほぼゼロになる。ステレオから流れる流行の曲すらかき消すような激しい雨音に、まったくワイパーが追いつかない雨量。

このまま運転するのは危険だと思った俺は仕方なく車を左へ寄せ、ハザードマークをつけた。


ここは狭い山道、車がやっとすれ違えるスペース分しかない。左手には白いガードレール、その向こうは斜面になっていて今は見えないが木々が生い茂っているはずだ。

そんな場所で、俺は後続車にたぶんノーブレーキで追突された。

火花を散らせて車体を削りながら向かったのは生憎にもガードレールの先だった。

ああ、俺の30年も生きてない人生よさらば、父さん、母さん、兄ちゃん、ばっちゃん、じっちゃん、愛犬のゴロ助、最後に会いに行けてよかったよ。数か月前に喧嘩別れした元カノの敦美、こんなんなら喧嘩なんかしなきゃよかったな、なんて。

空中に放り投げだされながら、俺は走馬灯のように24年間過ごした人生を振り返り、そして意識はぷっつりと途切れた。




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