私の犬
私は、犬が大好きだ。
可愛らしいし、主人に忠実なところがいい。
今も、犬を一匹飼っている。
ふわふわの金の髪と、キラキラした瞳がゴールデンレトリバーを思い起こさせる。
私の姿を見るだけで、眼には見えない尻尾を振っているのも可愛らしい。
何より、私の言葉や願いに、絶対服従のところが素敵だわ。
よく
「犬扱いするだなんて最低!彼は人間よ!」
だとか、
「思い通りに動くのがいいのなら、本物の犬にしておけばいいのに。」
だとか言われる。
……なぜ、人のことに口を出したりするのかしら?
私と犬の問題なんだから、私と犬がそれでいいのなら、問題はないと思うのだけれど……。
告白してきたときに、ちゃんと了承はとったわよ?
もし、犬が犬扱いを嫌がるのなら、ちゃんと犬扱いはやめるわよ?
犬は、了承してから、本当に犬らしく過ごした。
私の姿が見えると、嬉々として駆け寄り、
私の言うことには従順で。
よい仔だったときは、ちゃんとご褒美もあげたわ。
躾の基本ですものね。
ちゃんとよい仔に育っていたはずなのに……
「みいちゃん、俺、みいちゃんが嫌なのは分かってるんだけど、どうしても行かなきゃいけない飲み会があるんだ!一時間だけだから!」
犬が、私以外の人間の命令で動くというのが非常に気に食わない。
ましてや、飲み会となったら、私の犬に他の人間がベタベタ触るので、不愉快になる。
私の犬が言うことを聞くのも、触らせるのも、飼い主である私だけでいいのだ。
たとえ、この犬が、センパイに誘われたんだとしても、ゼミの飲み会でも、私との約束より優先させるなんて。
私が嫌がるだろうと知っていて、それでもしようとするのが許せなかった。
……約束したのに。
……大事にしたのに。
……可愛がったのに。
……キスや、それ以上も許したのに。
それもこれも、彼が、私の可愛い犬だったからだ。
でも、ああ…………残念ね。
「……ふうん。……いいんじゃない?」
「本当!?」
「好きにするといいんじゃない?……別に私に許可をとる必要はないわ?」
「え?」
「バイバイ。」
にっこり、綺麗な作った笑みを見せつける。
これで、やっと気付いたようだ。
でももう遅い。
私は、自分でも驚くぐらい、切り替えが早い。
一瞬前まで大切だったはずのものも、あっという間にどうでもいいものに変わってしまったりするのだ。
私の言うことを聞かない生き物は、犬じゃあないわよね?
犬扱いが嫌ということ?
じゃあ、犬扱いはやめましょうか。
可愛い犬だったのに、可愛さの欠片もない、人間にみえてきてしまった。
あんなに好きだったはずなのに、スーっと感情が冷えていく。
……可愛い犬との思い出も、さらさら砂のように消えていく。
私が欲しいのは犬。
犬じゃないあなたは要らない。
さようなら、私の可愛い犬だった人。
そう思った瞬間、大切だったはずの犬が、どうでもいいものに変わってしまった。
さっ!ペットショップへ行って、可愛い、新しい犬がいない探しにいかなくっちゃあ。




