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神様が紐解く怪奇事件ファイル  作者: 星見流人
1章:金の瞳の少年
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1-1:狂気の学校

「このグズ! 何度言ったら分かるんだい!」

 罵倒と共に母の平手が私の頬を打つ音が安アパートの一室に響く。

「今月はこれだけの稼ぎしかないなんて、本当に使えない子だね」

 数か月前に父と離婚してから、母は人が変わったように荒れ果てた。酒におぼれ、不特定多数の男とのセックスにおぼれ、そして暴力を振るうようになったのだ。その矛先は一人しかいない娘の私に向かう。

 定職に就いていない母は高校生の私に生活費を稼げと言ってきた。そこで、私は早朝と放課後にアルバイトを掛け持ちしている。

「稼ぎが上がらないって言うんなら、身体を売りな。お前くらいの小娘が好きな男なんて、ごろごろいるんだからね」

 この頃頻繁に発せられる、そんな辛辣な言葉にも耐えた。もちろん、そんなことはしたくないし、初めては好きな人に捧げたいと思っていた。

 一通り怒りが収まると、母は外へ出ていく。私は制服のままで粗末な机に向かって勉強を始めた。学業成績を落とすわけにはいかないからだ。

 何としても、この生活から抜け出して、母を救ってあげたい。そして、私のような女の子を守れる大人になりたい。

 そのために私は勉強している。

 あれ?

 そういえば、私は元々あまり勉強が好きではなかったのに、どうしてこんなに頑張るようになったのだろうか。

 宿題の手を止めて、そんなことをふと考えてみた。

 すぐに、一人の男の子のことが頭に浮かぶ。

 彼は物知りだった。

 いや、学校の勉強が出来るというわけではなく、色々なことを常に考えていた。自分のこと、未来のこと、私のこと。

 その子は普通の日本人とは違った髪の色をしていた気がする。とても優しくて、そばにいるだけで安心できた。

 いけない、いけない。

 早く宿題を終わらせて、母に夕食を作らなくては。

 そういえば、最近になって雪見市ゆきみし――私の暮らしている町だ――で奇妙な自殺事件や突然奇行に走る人が増えているとニュースで報道していた。

 母が被害にあっていなければいいのだけれど。



 私は家庭環境がこんなこともあり、早朝に新聞配達、夕方はコンビニでアルバイトをしている。

 稼いだお金はすべて家のために使っているので、携帯を持てず、女子との付き合いも苦手である。そのせいか、私はいじめの対象になっていた。

「ちょっと男子に人気があるからって、いい気になってるんじゃない?」

「携帯持ってないような時代遅れが人気あるなんて、不思議よね。あんた、身体使って媚売ってるんじゃないの?」

 こんな言葉のいじめはまだ軽い方で、殴る蹴るはもちろん――顔を殴ったりしない分、狡賢いと思う――下駄箱の中に鳥の死骸が入っていたり、体操服が切り裂かれていたりするのが普通である。先生にも相談したが、全然取り合ってくれない。いじめをしている筆頭の子が地元議員の娘だから、らしい。

 そういえば、このいじめは突然二か月前、十月ごろから起こった。それ以来、ずっとである。

 まだ耐えられるからいいやと思っていた。

 私が我慢すれば解決するからいいやと思っていた。

 私一人が犠牲になればそれで済むのなら……。

 


 期末テストを来週に控えた、十二月のある日のこと。いつものように、新聞配達のアルバイトを終えて、登校した。クラスで一番早く教室に入るので、多くの生徒が登校してくる様子を三階にある教室から見下ろすことが出来るのだが、今日は雰囲気がいつもと違っていた。

 そう、まるで生徒も教師もブリキ人形みたいにぎこちなく動いている。いや、動いているのではなく、動かされているかのようにも見える。

 教室に入ってきたクラスメートを見ても、誰もが虚ろな目をしている。生気を抜かれた人形のようだ。

 一時間目の神学特別授業の担当者、奥山先生はいつもの無駄なハイテンションぶりを忘れたかのように静かに授業を始めた。軽音楽部の顧問で、職員室でエレキギターをかき鳴らしてたまに歌っている姿からは想像できないほどに。

「えー……今日は神と、この世界の成り立ちについて授業します。この世界は神が作ったもので、我々人間は神の作った歴史通りに生きています。それが最善かつ最良の選択であると……」

 小学校や中学校で習った知識を延々と、淡々と説いていく。これは私たちの常識なのだ。

 不気味なくらい音の少ない授業が進んでいく。

 二時限目の英語の平川先生も、三限目の虎山先生も皆が皆そうだった。

 休み時間は、皆誰とも会話しない。

 ぼんやりと椅子に座っているだけなのである。

 いつもニタニタと嫌な笑顔をまき散らして、暴言や暴力をばらまくクラスの女子たちがこの状態なのはかなり異常に思えた。

 そんな非日常的な午前中が過ぎ、昼休みとなった。

『二年三組、霧生きりおさくら。職員室まで来なさい。繰り返す、霧生桜。職員室まで』

 学年主任の大島先生の声が教室内にあるスピーカから流れる。私が先生から呼び出しをくらうことは珍しい。

 あたりを見渡すと、放送音がまるで聞こえないかのようにクラスメートは黙々と食事をしていた。

 私は開けようとした弁当箱をそのまま机に置いて、教室から出る。

 異変がすぐそこに迫っていることは、この時気付いていなかった。

おはようございます、jokerです。

これが掲載される頃には多分大学でひーこら言いながら論文試験に向けて汗を流している頃だと思います。


さてさて新作です。


プロットがとりあえず形になったので、こちらで掲載させていただきますが、どうなることやら。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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