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聴覚障害者の日常

聴覚障害者の日常 〜人生は奇なもの粋なもの〜編

作者: ぷかぷか

夫とは、大学の同級生で、卒業後は遠距離だった。

アタシは関東、夫は四国。

遠距離なのでそう会えないし、電話でも込み入った話しもできないし、それぞれ仕事が大変だった。

遠距離3年目の春だと思う。関東に実家のある夫が帰省したときに日比谷公園で会った。

夫から「友達に戻らないか?」と言われた。(すぐ後に、夫は激しく後悔したとかしないとか…。)

だから、それ以後は、アタシは友達関係だと思っていた。その年の夏にバッサリと髪の毛を切ったのを覚えている。

友達宣言されても、夫は相変わらず電話をくれたし、会いにも来た。


遠距離4年目の冬、夫が夜行バスで帰ってきたその足で、スケートに誘われた。

夫の表情に違和感を感じ、それを伝えた。


「あなたの顔、変だよ?」


「変な顔で悪かったな!」


その時の夫には自覚はなく、こちらからは何がどうおかしいのか、うまく説明できず、言葉のやり取りの難しさを痛感した。

夫は疲れもあったろう、機嫌が悪くなり、そのまま後味わるい別れになった。

その夜、夫から電話があった。


「ごめん。本当に顔がおかしい…。」


たまたまアタシの職場の同僚が『顔面神経マヒ』という病気になっていたので、それではないかと思ったのだ。

その同僚に相談したら、その可能性は高いから耳鼻科にかかること、MRIで検査できるような総合病院がよい等を教えてもらった。

顔の神経が死んでしまい、顔の表情、まばたき、口の開閉ができなくなる。適切に治療すればまた新しい神経が出来てもとに戻る。

夫の場合、左側だけのマヒだった。


この時に、夫が『うちに来ないか?』と実家に初めて誘われた。

1日だけでかなりマヒ症状が進んだのに戸惑って、深く考えずについていったが、まさかの展開になるとは思いもしなかった。


実家につくなり、夫の母に迎えられ、歓迎された。

もうアタシのことをしっていて、聴覚障害があることも問題にしなかった。


「で…、いつにするか決めたの?」


は?……夫の母に聞かれた言葉は読み取れたが、意味がつかめなかった。

何が、いつって…?

アタシは困惑した。


「来年にしようかな、と思うんだ。」

と、いきなり、夫が口を挟んだ。


はぁ?!何が来年?

全く話が見えませんってば!


「結婚式は春?」

と、夫の母に聞かれたアタシの胸中を察して欲しい。


プロポーズをすっ飛ばして、あろうことか、夫の母から結婚式の話。

いつ友達から関係が進んだんだ?

困惑から混乱へと、脳内では大恐慌のような状態で、なにをどう話したか覚えていない。


その後はトントン拍子に話が進み、そのまま結婚したが…。

病気のことがなければ「もう会うのはやめよう。」と思っていたなんて、義母には口が避けても言えない。

後から聞いたのだが、夫も病気がきっかけで結婚を意識したというから、本当に人生なにがあるかわからないものだ。


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