2章:舞い踊る水
不思議な力を手に入れてから早五年。シェルは相変わらず起こる魔法の様な力に悩まされていた。
しかし、常時起こる現象に驚く反面、このような力を手にしたおかげで現実上の不可能を可能にできるようになった。
例えば、触れたものを自由自在に操る魔法や、指から火の粉や水を出すなど、とにかくすごい技を手に入れた。
シェルは今、十歳になった小学生。もう他の小学生とは全然違う。
もはやシェルは魔法使いといえる。もうシェルは普通の人間ではない。
まるで神様がシェルの体にいたずらしたみたいだ。 一生魔法使いとして人生を歩むことになると不安が募るが、その分他人は絶対に真似する事が出来ない力を授かったとなると、ものすごくいい事だ。
シェルはいつも通り学校へ行った。
学校に着くと、シェルは普通に授業を受け、休み時間には友達とサッカーをしたりと、ごく普通の小学生を演じていた。
学校が終わり、シェルは帰るため学校を出た。
その途中、シェルは火事現場を見かけた。ふと見てみると残酷なことに普通の家が赤い炎で包まれていた。
消防車が数台来て消火作業をしているが、火が消える気配は全くない。
そこでシェルは火事現場の近くを流れる大きな川の岸辺に行き、川の水に触れた。
そして、シェルは川に向かってこう言った。
「水よ!水柱を落とせ!」
そう言うと、川の水は、炎上し続ける家に、滝のように降り掛かった。
近くにいた消防士や、通りすがる一般人は唖然とした。もはや、この魔か不思議な光景を目の当たりにして、平然としていられた者は、誰一人いなかった。
しかも、この現象が小学生によるものだとは誰も考えなかった。
3回水柱を落とした末、炎で包まれていた家は、消火された。なんとか、全焼は免れた。
シェルは何もなかったかのような顔をして、家に帰った。
家に帰るとシェルは、おやつにメロンパンが出された。
しかし、シェルはメロンパンよりもシュークリームが食べたかったらしく、試しに指を鳴らしてみた。
すると驚くことに、おやつのメロンパンが一瞬でシュークリームに変わった。 どうやらシェルは、欲しいものを、心で思うだけで身の回りにあるものと取り替えられる秘技を身に付けた。