7 パーティー
ロミルダは今日ばかりは、アレクシスからもらった剣をしまって、華やかなドレスに身を包む。
ロミルダの栗毛色の髪を侍女がいろいろと試行錯誤してかわいらしいハーフアップにして、薄く化粧を施されていつもよりも、金の瞳がぱっちりとしていた。
ロミルダからすると普段とたいして変わっていないがエイミーは「とっても素敵ですわ!」と喜んで、ロミルダとともに近くの公爵家で行われるパーティーへと足を運ぶ。
父にエスコートされて入場し、主催者などへの挨拶を終えると後は自由な時間だ。
同世代と歓談するもよし、ダンスを踊るもよし。
さてどうしようかと大きなホールの中を見渡すと、いつもならラウレンツとともにユリーナたちのもとへと行っていたことを思い出す。
「あら、ブロムベルク辺境伯令嬢。ごきげんよう」
「久しぶりね。ブロムベルク辺境伯令嬢」
どうしようかと躊躇していると、二人の女性に声をかけられた。
彼女たちには見覚えがある。たしかシルヴィアとスーザンだ。
家名も覚えているけれど、彼女たちはそう呼ばれていることが多くて、ファーストネームの方がしっくりきた。
「ごきげんよう。たしかに久しぶりだけれど……」
彼女たちとはたいして仲がよいと言うわけでもない。
と言うかよく考えると、ロミルダは、社交をするようになってからはラウレンツにエスコートされていることが多かったので、社交界での自分の交友関係というものがそもそもなかった。
一方、騎士団を介した繋がりは大いにあって、騎士になるための訓練も長く厳しい物だったので子供時代も社交よりもそちらに重点を置いていたのだ。
今も、社交など月に一回するかしないかと言った感じなのである。
それなのに、そんなロミルダにわざわざ声をかけてきた二人がロミルダは少し不思議だった。
「さぁ、こちらにいらして?」
「皆首を長くして待っていたのよ?」
言いながら彼女たちはニコニコしつつロミルダの手を取った。
驚きつつも、拒絶する理由もなくロミルダは、二人に導かれてとあるソファーセットへと向かった。
そこには、ラウレンツと婚約していた時に社交でともに過ごしていた貴族たちがいる。
と言っても、このあたりの地方の貴族の子息などたいして人数が多くない。
他に同世代の輪があるわけではなく、同世代では彼らのグループだけが存在している。
そしてその中心にはもちろん、ユリーナが優雅に腰掛けているのである。
「やだ、シルヴィアとスーザンったら、連れてきてしまったの? 気にしなくて欲しかったのに」
「いいえ、ユリーナ様! この人には自分がいかに非道なことをしたのか思い知らせなければ鳴りませんわ」
「そうですわ。わたくしたちがわたくしたちの責任で連れてきたんですもの」
ユリーナは、口元に手を当てて、目を見開く。
その隣には、ソファーの肘掛けに肘をついているラウレンツの姿があり、彼は不機嫌そうにロミルダへと視線を向けた。
「そう? それなら仕方ないわね」
「ええ、ええ」
「そうですわ」
ユリーナはやってきたロミルダのことを仕方なく、受け入れたようだったけれどその態度はなんだか芝居がかっていて、本当に仕方なく思っているようには見えなかった。
ただ、どちらにしろロミルダはここにいるつもりはない。
どうやら最初にシルヴィアとスーザンが言っていたように待っていたと言うわけでは無いようだし、今日は体を動かせない分、片っ端からダンスの誘いに乗って踊り明かすのがいいだろう。
「……あの、私――」
もう立ち去ろうと思っていると告げる前に、ユリーナがかぶせるように話し出した。
「まぁ、仕方ないから話の続きをするけれど、わたくし悲しいの。まさか、ラウレンツがあんなことをされるなんて考えてもみなかったから……」
ユリーナの涙声のような悲しげな声音、そして潤む瞳は周りの同世代の貴族たちに向けられている。
その言葉や表情に感化されるように、周りの貴族たちは同調する。
「……嫉妬なのでしょう? 見苦しい……」
「大きな権力を持っているからってやっていいことと悪いことがあるよな」
そうして貴族たちはユリーナに同調しながらロミルダには敵意のこもった視線を向ける。
「そうなの! ラウレンツとわたくしの関係は男女のそれを超えるもっと美しい関係なのに、勝手に嫉妬して、勝手にラウレンツを追い詰めて……」
「酷いわ」
「ユリーナ様……」




