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【連載版】雑な扱いが信頼の証だと言ったのはあなたでしょう?  作者: ぽんぽこ狸


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5 問いかけ 短編の続きはこちらから


 ロミルダは転がり込むように自室に戻った。


 そうして扉を背に、うるさい心臓の音にどうにか収まれと、念じるけれどもどうにもならない。


「っ~……もうっ!」


 そのままいらだって、自分の胸を拳でどんとついた。それと同時に、使用人用のドアから侍女のエイミーが入ってきてぷんすこと怒った。


「お嬢様! 何をしていらっしゃるの?_まったく、戻ってきたならすぐにベルをならしてくださいませ! 土埃で部屋を汚すつもりですの!?」

「……」

「さぁさぁ、お着替えを。汗をかいたままでいるなんて優雅じゃありませんわ!」

「……は、はい」


 エイミーが、勢いよくロミルダに詰め寄って、手を引く。


 その圧力に押されてロミルダは、彼女にされるがまま普段着のドレスに着替えさせられたのだった。

 

 普段着と言っても、ロミルダは騎士である。


 当然、常に帯剣しているし、ドレスはスリットの入った二重構造になって居て、騎乗もできるスタイルだ。


 エイミーは外で訓練してきたロミルダが汚いと思っただけで、訓練を出来る格好が優雅ではないと言ってるわけではないのである。


 着替えが終わると手持ち無沙汰になり、訓練が終わったらリストの中から新しい婚約者の選定を行う予定だったため、とりあえず机についてエイミーにリストを出してもらった。


 書類綴りをぺらりとめくると、とてもわかりやすい位置にアレクシスの名前があった。


(ある……)


 ロミルダは短くそう思った。


 もちろんあるだろう。いや、そもそもあってもなくても彼がいいそう思ったのだから、あろうがなかろうが父に直談判に行くつもりだった。


 しかし問題はその先だ。


(私、そうしてお父さまにお願いして、アレクシスと婚約することになったとして……私の気持ちってどうしたら良いの……)


 自分も好きだとアレクシスに告白するべきなのか? それとも、しれっと気にしてないふうを装っていつもどおりに接するべきなのか?


 それがまったくわからない。


(あの人と……結婚してみたい……あの人がいい……でも正直…………全然あの人とむつみ合ってる自分が想像できないのよ……)


 ロミルダは、男女が仲良く想い合ってイチャイチャとしているところを見たことがあった。


 それは、とあるラウレンツとのお茶会の日、ユリーナが同席していたことがあった。


 そこで二人は、お互いに猫なで声でお互いのことを呼び、肩に触れたり見つめ合ったりして甘ったるい空気をまとわせていた。


 今思えばあの二人は、恋仲だったのだろう。


 それ自体はもういいのだロミルダに関係はない。


 和解金ももらって婚約破棄もできたのだし、ラウレンツにギャフンと言わせられたと思う。


 だからいいのだが、ロミルダ自身がやっと恋に目覚めたからと言ってアレクシスとあんなふうに些細な言葉でとろけるように笑ったり、二人だけの世界に入ってうふふあははと笑い合ったり出来そうにないのである。


 ただびっくりするぐらい意識してしまうだけでそれ以上の恋人になるのは厳しい気がした。


 ならロミルダはどうしたらいいのかと焦って、机の上で頭を抱える。するとノックの音がして、エイミーがすぐに対応する。


「あら、まぁ、どうぞお入りくださいませ! もうお嬢様ったら一人で始めてしまっていますのよ」


 そうして、ロミルダの可否も聞かずにエイミーは来訪者を部屋に入れた。


「!」


 それは、ロミルダに対する侮りでもなく無礼でもなんでもない。


 ただロミルダが、朝方彼女と予定をすりあわせたときに、今日は訓練終わりにアレクシスを呼んで新しい婚約者の選定を行うと言ったからだ。


 ただエイミーは気を利かせて確認を取らずに急いで入れただけ。


 ロミルダが扉の方へと視線を向けると華やかな金髪と品のある紫の瞳を持つアレクシスと目が合う。


 しかし、アレクシスと会う心の準備など出来ている訳もない。


 ロミルダは、彼がやってきた驚きと戸惑いで、目線をやったまま固まった。


 アレクシスは気にせずロミルダの座っている机のそばにまでやってきて、机に手をつき、のぞき込んで聞いた。


「一応呼ばれてたんで来たんだけど……それで俺の名前はあるんですか? お嬢」


 いつもならこの程度の距離感などなんとも思わないはずなのに、なぜか喉が詰まってぎゅっとまた小さく拳を握る。


「……それと、ありがとうってどういう意味なんだ?」




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