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未来都市ギアヘイヴン

転移陣が展開された瞬間、空気が変わった。


竹林でも丘陵でもない。

視界に広がったのは、幾何学的に切り取られた空。


鋼鉄の塔群。

空中を走る光のレール。

重力を無視するように浮遊する搬送ユニット。


未来都市――ギアヘイヴン。


足元の地面は石ではない。

金属と複合素材が織り込まれた路面。

わずかな振動が、規則的に伝わってくる。


(……静かだ)


騒音はある。

だが、自然音ではない。


すべてが一定周期。


視界の端に、プレイヤーの姿が見える。

重装甲。機械義肢。ドローンを従えた魔導技師。


そして、空を横切る影。


機械兵。


都市外縁の警戒ユニット。


中枢区画へ入るには、

まず外縁クエストをこなして“貢献度”を上げなければならない。


(環境が違う)


尾が、静かに揺れた。


生物相手の曖昧な予兆ではない。

動作フレームが分解されるように視界へ展開される。


機械兵が三機、上空から降下。


同時。


間を置かない。


レーザー照準が展開される。


(速い)


違う。


速いのではない。


迷いがない。


尾が三つの予測を示す。


回避。回避。回避。


だが。


(足りない)


身体が動く。


地面を蹴る。


だが、以前の丘陵と同じ違和感。


“追いつく”が、“噛み合わない”。


一機目の斬撃は通る。


だが、二機目の射撃が肩を掠める。


三機目の突進。


(遅い)


そう思ったのに。


回避が半歩、足りない。


衝撃。


地面を転がる。


(ズレてる)


尾の未来は正確だ。


だが、自分の身体が――


最適化されていない。


安全側に寄せるだけでは、

ここでは削られる。


必要なのは、


“未来へ追いつく”ことじゃない。


“未来に到達する”こと。


その瞬間だった。


都市全体の振動が、

鼓動のように感じられた。


演算。


同期。


処理。


(……そうか)


尾は予測を示す。


なら。


その予測へ行く最短経路を、自分が選べばいい。


足の裏に伝わる振動。

機械兵の駆動音。

射線の角度。

空気の圧。


すべてが、一本の線になる。


――踏み込む。


初動が消えた。


いや。


初動という“概念”が消えた。


気づいた時には、機械兵の懐にいる。


最短。


無駄なし。


斬撃。


一機目、崩壊。


振り向かない。


背後の射撃は、

撃たれる“前”に位置が変わっている。


二機目のコアを貫く。


三機目。


突進。


その未来を、尾が示す。


だが今回は違う。


示された未来に、

“身体が追いつく”のではない。


示された未来へ、


“先に到達している”。


視界が、静まる。


尾の根元が灼けるように熱い。


一本だった尾が、揺れる。


影が、重なる。


違う。


影ではない。


――二本目。


確かな質量。


確かな存在。


背後で、空気が裂けるような音。


都市の光が、わずかに屈折する。


視界の端に、システム表示。


《第二尾:迅尾 解放》


妖力が暴走しない。


荒れない。


流れが、滑らかだ。


まるで最初からそこにあったかのように。


機械兵の残骸が地面に転がる。


静寂。


ギアヘイヴンの光が、無機質に瞬く。


テラは、ゆっくりと息を吐いた。


(……これか)


速くなったわけじゃない。


強くなったわけでもない。


ただ。


未来へ至る距離が、縮まった。


幻尾が揺れる。


その隣で、


迅尾が、静かに脈動している。


噛み合った。


ようやく。


力と制御が。


遠くで、都市中枢へ続く巨大ゲートが開閉する音が響いた。


入場条件。


貢献度。


都市攻略。


やることは山ほどある。


二本の尾を揺らしながら。


ギアヘイヴンへ。

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