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転移前夜、機械の匂い

 転移門はまだ起動していない。


 だが、空気が違った。


 新航路用転移施設。

 国家間クエストの中継点でもある場所だ。


 石造りの広場の中央に、巨大な円環。

 古代式ではなく、最新式の転移装置。

 魔法陣ではなく、幾何学的な光学ラインが幾重にも走っている。


 未来都市ギアヘイヴン行き。


 プレイヤーたちが列を作っていた。


 装備は重装、機械系、対魔特化。

 明らかに普段とは違う準備をしている者も多い。


「中枢に入るなら貢献度500は必要だぞ」

「外縁エリアだけでもレアドロップは出るらしい」

「核心エリアの到達者数はまだ100にも満たないらしい」


 ざわめきの中、テラは少し離れた場所に立っていた。


(……空気が硬い)


 幻尾が、微かに震える。


 敵意ではない。

 危機でもない。


 “未知”だ。


 これまでの戦場は、生物相手だった。

 殺気も、気配も、読み取れた。


 だがギアヘイヴンは違う。


 機械都市。


 魔力と歯車。

 演算と鋼鉄。


 尾が示す予測が、曇っている。


 視える。

 だが、鮮明じゃない。。


「……環境補正か」


 プレイヤー間では有名な仕様。

 特定フィールドでは、能力が“噛み合わない”ことがある。


 予測系は特に影響を受けやすい。


 理由は簡単だ。


 機械は、殺気を持たない。


 演算は、感情を持たない。


(読みづらい)


 だが同時に。


 尾の根元が、熱を持つ。


 第二の尾。

 未安定のままの追随能力。


 これまでの戦闘では、未来に追いつこうとしてリズムを崩していた。


 だが――


(ここなら)


 リズムが存在しない環境。


 生物的な“間”がない場所。


 ならば、噛み合う可能性がある。


 テラは転移門を見上げる。


 上空に浮かぶ金属構造体。

 そこから伸びる無数の光線。

 青白い粒子が、空間を削るように揺れている。


 転移開始まで、あと三分。


 周囲のプレイヤーたちがパーティを確認し、最終装備を整える。


 テラは一人だ。


(強くなりたいわけじゃない)


 ただ――


(噛み合わせたい)


 幻尾が示す未来。

 身体が追随する現在。


 その二つを、重ねる。


 そのために、環境を変える。


 アナウンスが響いた。


『ギアヘイヴン行き転移、準備完了』


 円環が光る。


 空間が歪む。


 幻尾が、強く揺れた。


 危険?

 違う。


 “変化”。


 確実に、何かが動く。


(ここで、安定するか)


 あるいは――


(壊れるか)


 光が強まる。


 身体が粒子へと分解される感覚。


 尾の根元に、明確な熱。


 一瞬だけ、

 二本の尾の感覚が完全に重なった。


 まだ解放ではない。


 だが――


 境界線に、立っている。


 視界が白に染まる。


 金属音が、遠くで鳴った気がした。


 次に目を開けたとき、

 そこは歯車の都市だ。


 未来都市ギアヘイヴン。


 妖狐の力が、試される場所。

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