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欲張り令嬢とヒカリダマ

作者: 原田 和
掲載日:2025/10/19





 「ここ、どこ…?」


私の目の前には、真っ白な空間が広がっている。上も下も、右も左も、どこもかしこも真っ白。

とりあえず歩いてみるが、進んでいるのか戻っているのかさえ分からない。

何もない。ただ、何もない世界が広がっている。


 「てか、私フツーに大広間に居たよね?なんで、……あ、そうよ!あの顔だけ王子がいきなり吐血して!ドレスが汚されてそれで……!」


思わず突き飛ばし、彼はそのまま動かなくなり。ヤバい、と思って周りが混乱している隙にこっそり逃げたのだ。必死に走って庭に出た所、何者かに後頭部を思い切り殴られて……、


 「私、あのまま死んだ……?まさか嘘でしょぶほぅっっ??!」


また後頭部に衝撃。私は耐えられず、初めて頭からスライディングした。痛い。凄く痛い。


 「いったーい、もう何なのどこ見てんだヴォラァァァ」


 「ちょ?!それはこっちのっ……、……たま?」


 「誰がタマよ失礼ねぇ、プンプン。アンタみたいな失礼な奴、あ、いっけなーい遅刻しちゃうぅー」


光の玉が喋ってる。芝居がかった口調で、いやそれより酷い。全然酷い感情の無い棒読み!!

しれっと何処かへ飛んで行こうとする光玉を、私は慌てて捕まえた。訳の分からない場所での、唯一の手掛かり。


 「気安く触んなヴォケが。離せや」


光玉からゾッとするほどの威圧。私は身の危険を感じ、距離を取った。

私の行動を見た光玉が、へぇ、と周りを漂い始める。


 「お前、そういう勘は持ってるのな。危機回避能力っての?だからああも上手く立ち回れたのか。ただのお花畑娘かと思ってたわ」


 「……あなた、誰」


相変わらずの真っ白空間。此処には私と、この漂う光玉しか居ない。

それならば、猫を被る必要もないだろう。でも、場合によってはこの光玉に媚びなきゃならないかもしれない。


 「私はヒカリ・ダマ。ダマ様と呼べ。此処は私が作り出した空間だ。私が許さない限り、出られない」


 「死んだ訳ではないの?」


 「現実世界では仮死状態ってとこかな。お前、やけに冷静だな。普通は取り乱したりするもんだが」


 「時間の無駄よ。なんで私を?何の為に?貴方を怒らせるような事、したかしら?」


 「ほーん、それがお前の素か。あんなきゃぴきゃぴ天然娘演じるのは、さぞかし辛かっただろうなぁ、常に痛かっただろうなぁ精神が。自分が気持ち悪すぎて自室に籠って吐いてたもんな。お前、そうまでして何がしたかったん?苦行?自分に苦行を課してたの?悟り開きたかったの?解脱したいの?だったらもっといいものおススメするよ?私が最近気になっているのはね、ドーバー海峡。お前、泳げる?」


何を言っているのか分からないが、嫌な予感しかしない。私は首を横に振った。高速で。

幸い、光玉……ダマ様は興味を失ったようだ。ふよふよとまた、漂い始めた。


 「浮き輪あればいいよな。少しずつ空気抜けてくやつで」


 「私本当にダメでして!!太陽光と海水が体に合わなくて潮風当たるだけでも過呼吸起こしちゃうんで!!」


 「え?バナナボートがいい?」


 「もう塩と紫外線のダブルアタックで私瀕死なんで!!!」


 「分かった、アヒルさんボートね。オラ行くぞソイヤッッ」


 「イヤアァァァァァァァ!!!!!」











……青い空、白い雲。照り付ける太陽。そして、何処までも広がる青く透き通った海。

誰も居ない静かなそこに、アヒルさんボートに乗って光玉と戯れる少女…。

パシャ、と光玉が海水をはじくと、少女の明るい悲鳴が上がる。


 「きゃーっっ!もぉ、やめてくださいよぉダマ様ったら!」


 「ほほほー!よいではないかよいではないか!」


 「きゃあ!ダマ様はしゃぎすぎー!」


 「ふふ、楽しいな!こんなに遊ぶのはいつぶりだろうか!」


ダマ様はポンポン海の上を跳ね、はっちゃけている。

…ふん、口ほどにもない。私は心の中でニタリと笑った。

私はこの自慢の顔と体で男どもを落とし、成り上がってきた。ちょっと間の抜けた隙のある女を演じれば、面白い程コロッと騙されてくれる。偉そうな光玉も、例外ではなかったという事だ。この妙な空間から、私は脱出してみせる。無事出られたら、こんな玉なんか握り潰してやる。


 「いやー、楽しかった楽しかった。こうして息抜きするのも大事だなぁ。君に言われなければ、予定通りに粛々と、この海峡を横断させている所だったよ。空気穴開けた浮き輪お供で」


 「や……や、やだぁダマ様ぁ。全然陸が見えない、こんな所に私を放り出す……の?」


 「そんな事はしないよ。君は大切な事を教えてくれた、私の人魚姫(マーメイド)。お礼と言ってはなんだけど……私からのプレゼントを受け取ってくれないかい?」


ダマ様が優しく笑うように、フワと柔らかく光る。……勝った!!

拳を高く天に突き上げ、高笑う。そんな内心をおくびにも出さず、私は頬を染め微笑んでやる。


 「まぁ……何かしら?」


 「水中酸素破壊剤」


 「あら?何だか重々しい名前。それってなぁに?」


 「かの科学者が偶然にも生み出してしまった、最悪の大量破壊兵器」


 「た、……え?」


 「あの初代、黒き破壊神すらも耐えられなかった」


 「え、何?はかいしん?」


 「またの名を、オキシジェン〇ストロイヤー」


 「オキ、え?」




瞬間、眩い閃光。

世界はまた、白になった。私の記憶は、そこで途切れた。




 「バーニングな黒き破壊神とジュニアの絆は胸アツでした……」




それが、私が最後に聞いたダマ様の言葉だった。












 「どうだった?」


ふよーっと漂うダマ様に、国王はどう答えるのが正解なのか分からず、内心で苦悶する。

ダマ様が突如現れ、見せてきた映像。あの娘との戯れの後、閃光に包まれ死の海となって終わっている。一体何を見せられたのか。

はっきり言うならば、茶番である。しかし恐れ多くもダマ様にそんな事言える訳もなく。国王の眉間の皴は深くなるばかりだった。てか、ダマ様に捕まっていたのか。道理で見付からん訳だ。


 「どうだった?」


ダマ様は此方の苦悩には一切意に介さず、感想を求めてくる。どうしたらいい。

国王は、隣に立つ王妃に助けを求めた。王妃は頷き、ダマ様に向き合った。


 「ダマ様、私からよろしいですか?」


 「お、いいよ。どうだった?」


 「茶番でしたわ」


国王の呼吸が止まる。


 「今まで見たことがない、どうしようもない程の茶番でしたわ」


力強く頷く王妃を見つめ、この国終わったわと走馬灯を走らせる王。


 「せやろー、すんげぇ茶番だろ?流石王妃、分かってんね」


 「ありがとうございます」


 「茶番も茶番。もうどうしたら茶番の中の茶番になるかなぁって、頑張って考えたのよー。嬉しいなぁ、分かってくれてー」


ダマ様の声も動きも弾んでいらっしゃる……。王は走馬灯を止め、胸をなでおろした。


 「ですがダマ様、このような事を何故…?」


 「そこの元バカ王子の婚約者のご令嬢がね、ざまぁしてやろうかしらって言ってたものだから。やめときなって意味も込めて」


国王夫妻は、赤くなった侯爵令嬢を揃って眺める。


 「あの娘は欲まみれだし、自分が一番可愛い。バカ王子を誘惑したのも、楽して贅沢三昧して暮らしたいって理由だったしな。権力持たせたらアカン人間だ。あいつは国を食い潰す」


 「…厄介な娘だったのですね」


 「そう、厄介。ああいうのに逆恨みされると長引くぞ。なんせ全部、悪いのは相手で自分は正しいから。それこそ、どっちかが倒れない限り終わらない。私はそこまで気は長くないし、しばき倒したかったのも事実だから、私がやった。これでいい?」


話している間も、映像は流れ続ける。欲張りな令嬢の悲鳴が上がり、そして消える。

どーんどーんと音を響かせ、オキ〇ジェンデストロイヤーが破壊の限りを尽くす。


 「……ダマ様、これはいつまで続くので…?」


 「私の気が済むまで。あのご令嬢は、生半可なやり方では更生はしないだろうし。私の怒りも生半可ではないからさ、まだ出すつもりはないねー」


国王夫妻と、元婚約者の侯爵令嬢の背に、冷たい汗が流れる。


 「いつになるかなぁ。私の気が済む前に、壊れてしまわなきゃいいんだけど」


そんじゃ帰るわ。と、ダマ様はふいっと消えてしまわれた。

…恐ろしい方だ。

守る王族相手でも厳しいのに、それ以外だと。況してや、敵ともなれば。

ダマ様は、誰であろうと容赦はしないのだ。

国を潰すような真似は、してはならぬ。彼らは静かに、心に誓った。







 「あ、城の隠し通路諸々をばらした第二王子、許さねぇからな」


 「えっっ」





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