5.ギルド長
「ケンイチさん!先日は申し訳ありませんでした!」
「いえ、大丈夫ですよ」
「私お酒に飲まれるタイプでは無かったのですが。お恥ずかしい...」
「本当に気になさらないで下さい」
「あのー、よろしければあの2種類のお酒も納品したいのですか...よろしいですか?」
「ええ、良いですよ。でもそうなると造酒時間がかなりかかってしまいそうですね」
「それもそうですね...しばらくの間は新しいのは少しずつの納品して、いつも通りのをメインで作りましょう」
台所にある火を使える場所は1箇所のみ。他はパンを焼く釜があるだけだ。同時進行で作るにはあともう1口は欲しい。
「ケンイチさん、朝の作業も終わりましたので納品へ行きませんか?」
「それでは準備しますね」
今日は2樽あるため担ぎやすいようにロープで縛る。
エールを飲んで体力をすこし強化。
2人でギルドへ向かった。
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「ケンイチさん、今日は納品手続きも一緒にやってみませんか?」
「いいんですか?俺がやっても?」
「構いませんよ?」
ギルドに入ると周りの厳つい人達がコソコソ何か小言を言っている。
危害を加えてくるわけでは無さそうだ。
気にせずギルドの奥の方へ樽を運ぶ。
奥は以外にも広く武器や食べ物も置いてある。
端の方で、怪物の様な生き物を解体している人もいる。
「さすが異世界…」
「ローカスさん今日の納品持ってきました」
「おう!嬢ちゃん!今日もありがとな!それと…」
「えっと健一。酒井 健一です。よろしくお願いします」
「おう!俺はローカス・ガル・ハーバルドだ。なんだ兄ちゃん。変なもんでもみた様な顔して」
「いや…あの、初めてみたもので…」
ローカスと呼ばれたヒト?は、狼の様な顔で体が2メートルほどある大男だ。
「ケンイチさん獣人の方と合うのも初めてですか?」
「ええ。故郷にはいなかったもので…驚いてしまってすみません」
「なんや、そんな事だったんか。何にも気にしてへんよ?逆に俺がギルドの厨房管理長ってことの方が驚かれるがな!」
「厨房管理長なんですか!?」
「ああそうだとも。それでも昔は…」
「ローカスさん!またギルド長に怒られますよ?」
「それもそうだな。早速納品確認するとするか」
ローカスさんはそう言うと樽を開け匂いを嗅ぎ始めた。
「嬢ちゃん、一つは昨日新しく持ってきたエールで、もう一つはいつもとさらに違うエールか?さっぱりとした匂い…野草や果実が入っているような匂いがするぞ?」
驚いた。蓋を開け匂いを嗅いだだけでそこまでの事がわかるとは。
「そうなんです!ケンイチさんが先代の作り方に近い方法を教えてくれただけじゃなく。今までのエールの改良もしてくださったのです!」
「そうだったのか。いやーよかった。俺も匂いはわかるが、エールは何をどうしていいかよくわからなかったからな。兄ちゃん助かったぜ」
「いえいえ、力になれてよかったです」
「このエールは昨日も人気があってな、スグに完売しちまったんだよ。ちょっと待てな今代金を…」
ローカスが後ろから袋を持ってきた。
受け取りセラフィーナさんが袋の中身を確認すると…
「こんなに頂いてもいいんですか!?」
「おうよ。お二人さんが作ったエールは人気すぎてな。このくらいは払わせてくれ」
「銀貨30枚ですよ…私1人だった頃の数十倍…」
放心状態になっているようだ…そんなに大量なのだろうか…この世界のお金について全くわからない。買い物の時に勉強しよう…
「お二人さん。ギルド長と俺から話があるんだがちょっといいか?」
ギルドの奥へ通され、くらい扉を開けるとそこに男女2人いた。
「初めまして。私はバルザック・グレインフォードだ。ここのギルド長をしている。」
「わたくしは、カトリーナ・メイヴァスです。お久しぶりですセラフィーナさん」
「初めまして、酒井 健一です」
「ギルド長初めましてセラフィーナ・アリアです。カトリーナさんお久しぶりです」
なんだろう、ギルド長からの圧がすごい…オーラ的な何かを感じる。
「いきなり本題なんだが……もっとエールを作ってくれないか…」
「え?……エールですか?」
「あのエールをたくさん飲みたいんだ…」
とても険しい感じに話したことがエールを作ること…どう言うことだ?実は暗号だったり…
「えっと…カトリーナさん?ギルド長どうしたんですか?」
「バルザックったら、昨日飲んだエールを忘れられないみたいで。他の人からエールを奪い取ろうとするほどだったのよ?ふふ」
「仕方ないだろ…あれほど美味しいエールに出会った事がなかったんだからよ…」
あ、なんの裏もなかったのか。よかった…殺されるかと思った…
「ケンイチさん、大量に作ることは可能でしょうか…?」
「不可能ではないですが人手が問題ですね…」
普段は5リットルの納品。多い日は10リットルの納品。
納品以外に、畑や造酒の作業などなど。2人だと厳しい。
少しの間沈黙が流れた。
人手不足はどこの業界もある話だよな…
「そうだわ! セラフィーナさん、昔のように孤児の受け入れしてみない?そうすれば、子供たちの仕事にもなるし、シスターも増えるかもしれないわ」
「嬉しい提案ですが…私にはシスターとしての実力が…」
「セラフィーナなら大丈夫。もし、凄く不安って言うなら、私が住み込みでサポートするわ」
「…わかりました、少し頑張ってみようと思います」
俺がエールを改良してしまったせいで、大変な思いをさせてしまっただろうか。
「セラフィーナさん大きな決断ありがとう。本当に私も手伝える範囲で手伝うから」
「ギルド長として、俺個人としても感謝申し上げる。早速なのだが、孤児の受け入れをするにもボロボロの建物だと困るだろう。修繕について話し合おう。お金に対しては気にしないでくれ、ギルドが…」
「バルザック ギルド長?」
カトリーナさんは笑顔なのに心が笑っていなかった
「お金は…俺が出す…から…。」
「ギルド長、さすがに申し訳ないですよ!私の修道院なんですから私が…!」
「いいんだ。その代わりと言ってはなんだが、あのエールを3分の2払うから俺に買わせてくれないか?1リットルだけでいいんだ…頼む!!」
大の大人が酒の為に全力で頭を下げている…
「それだと申し訳ないですよ…」
「いいのよセラフィーナさん。ギルド長に甘えてしまいなさい」
「…それでしたら…」
その日のうちに話がどんどんと進み……
1週間ほどで改修工事が終わった。