39話白酒とマジックボックス
「……でかい。」
完成した酒造りの道具を前にして、俺はため息をついた。
「これじゃあ、修道院に持ち帰るのが大変だな。」
エスメラルダが腕を組んで頷く。
「そうね。普通の荷馬車じゃ運びきれないし、盗賊に襲われる危険もあるわ。」
「どうするの?」
フェリシアが首をかしげると、ベアトリーチェが不敵に笑った。
「なら、マジックボックスを作ればいい。」
「おお、なるほど……!」
マジックボックスは、魔力で内部空間を拡張できる特殊な収納箱らしい。
「でも、そんなもの作れるのか?」
ギルドの職人たちも驚いているが、俺たちには必要な素材がすでに揃っている。
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マジックボックスの素材
マジックボックスを作るには、以下の素材が必要だ。
•ダマスカス鉱石(外装の強度を上げるため)
•魔石(空間拡張の魔力源)
•魔獣の皮(内部の魔力循環を安定させる)
•銀の糸(魔法陣の刻印用)
「全部、この国で手に入ったな。」
「じゃあ、私たちで作るわ。」
三姉妹はやる気満々だ。
「頼んだ。俺はその間に、新しい酒を仕込む。」
「何を作るの?」
「**白酒**を試してみようと思う。」
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ギルドの一角、石造りの小さな工房。
静かな空間に、淡く蒸気が立ち込めている。
「……よし、始めるか。」
ケンイチは静かに息を吐いた。目の前には、先ほど準備した材料たち。
米、小麦、高粱――白酒の魂ともいえる原料だ。
「まずは麹を作る。」
彼は、蒸した米を大きな木桶に広げて冷まし、丁寧に手でほぐす。
温度が適温になったところで、麹菌を均等に振りかけた。
「混ぜすぎても駄目、偏っても駄目……ほんと繊細なんだよな。」
しっとりとした手の感触と香り。
発酵の神秘が、目に見えないところで動き出す。
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麹作りを終えたケンイチは、次に**発酵用の甕を準備した。
麹を仕込んだ米と、蒸した高粱、小麦を混ぜ、清潔な水を加えて発酵させる。
「ここからが勝負だ。」
工房の一角に静かに甕を並べ、ふたを乗せた。
「酒聖スキル――発動。」
ケンイチが掌を甕にかざすと、甕の中からふわりと温かな香りが立ち上る。
微細な泡がプツプツと湧き、発酵が加速する。
「よし……順調だ。」
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数時間後。
発酵を終えたもろみを、特製のダマスカス製蒸留器に移し替える。
「蒸留開始。」
薪をくべ、ゆっくりと熱を入れていくと、
器の先端から一滴、また一滴と透明な液体が滴り始めた。
「これが……白酒。」
ぽたり、ぽたりと垂れる液体は、まるで雫の宝石。
ほんの少し口に含むと、米と穀物の芳醇な香りが鼻を抜け、
そのあとに強烈なアルコールが舌を刺す。
「うん、これはいい。」
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白酒は高アルコールでありながら、雑味が出やすい酒。
ケンイチは時間をかけて、蒸留の終わり際の部分は分けて別保存にし、
最も香り高く純粋な中間部分だけを「神への献上酒」として瓶詰めした。
「完成だ……。」
工房に漂う甘く力強い香り。
それは、まさしくこの異世界における“神の酒”。
扉の外で待っていたミコが、にこりと微笑む。
「ケンイチさま……とても、いい香りがいたしますね。」
「神に捧げるには、ちょうどいい出来かもしれないな。」




