1.酒好きのおじさん異世界へ
俺は酒井健一。51歳独身。
酒類マスターの称号を持ち、世界各国のホテルや資産家のもとを周りその場面に合うお酒をチョイスする仕事をしていた。
50歳になったことをきっかけに、世界を回るのをやめ日本へ戻った。
その後は、造酒の資格をとり世界一のお酒作りに励んだ。
造酒作りがスランプになり今日は、久し振りにお昼からの飲み歩くことにした。
気になっていたピザのお店に行く。
赤ワイン白ワイン。チーズの甘さと合うこのぶどうの酸っぱさがとても美味しい。
お腹も膨れ、近くのお店を転々とはしごした。
日本酒が美味しいお店。色々な国のビールが飲むことができるお店。カクテルを即興で作ってくれるお店。地酒の店。
今日もまだ見ぬ美味しい酒に出会うことができた。
でも、いつもより飲み過ぎた気がする。
すごくふらふらする。
「今日飲んだ日本酒も美味しかったな。次はどのあたりの店を攻めようかな。」
ガン!
という大きな物音と共に突然歩道に車が突っ込んできた。
深酒しているふらふらの体では交わすことができなかった。
やばい…体の感覚がない…
救急車を呼ばないと………
だめだ…手が思うように動かない…
あぁ…もうダメなのか…
こんな何も無い人生…
もっと色々なことをやりたかったな…
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目を覚ますと知らない場所に横たわっていた。体を起こすと、俺以外にも若い男の子と若い女の子もいた。
確か、一緒に事故に巻き込まれていたような。
にしても、まるでゲームやアニメに出てくる宮殿みたいだ。
「ここどこ?ナオ君…こわいよ…」
「大丈夫だ…何かあれば僕がさなを守る。一体ここはどこなんだ!!僕たちは死んだのか…?」
こんな見知らぬ場所に突然きたのだ。若い子達が怖がるのも無理はない。
玉座に座っている王らしき人が話し出した。
「我はクレヴィニア王国17代国王 クレヴィニア・ルーラルだ。あなた方勇者にこの国を救って頂きたくお呼びいたしました。」
「クレヴィニア?」
全く俺の知らない国だ。
「救うってどういうことなんだ!!僕たちにそんなことできるわけ…」
「この世界は魔王軍、魔獣によって攻撃されて衰退してしまっているのです。民も安心して眠ることができないのです。どうか勇者様方にはこの国、世界を救って頂きたいのです。」
「質問なのですが、俺たちは帰ることができるのでしょうか?」
「言い伝えですと、勇者がこの世界に安寧をもたらした時帰還のゲートが開くとあります」
「それなら…」
若者達はとても不安そうだ。女の子にいたってはずっと涙ぐんでいる。
考えてもしょうがない…
「とりあえず俺たちはこれから何をすればいいんだ」
後ろからローブに包まれた老人が現れた。
見るからに賢者っぽいな…
「まずは勇者様方はこちらをつけてくだされ。特殊なブレスレットで勇者様専用装備でございます。『ステータス』と唱えると本人にしか見えない窓が現れると伝承にはありますじゃ。何か、書かれていませぬか?」
「僕は…スキル勇者…」
「おお!!本当に!あの伝説の勇者が!なんと喜ばしいことか!!」
周りにる兵隊も驚いているようだ。
「私は…大賢者です…」
「大賢者ですと!? 大賢者は全ての属性を使うことができ、我々人間には使用することができない神の魔法をも使うことができると言われている…なんと素晴らしい!!」
「「「ウォーー!!」」」
周りの歓声が次第に大きくなっている。
そろそろ俺も確認してみよう。
「ステータス」
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【酒井健一】 Lv.1 職業:なし
体力 :6
筋力 :5
耐久力:5
敏捷性:5
魔力 :1
【スキル】
なし
【特殊スキル】
『酒聖』
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なんだこれ。
「俺は酒聖ですが」
歓声が湧かなかった。
「酒聖何て聞いたことがあるか?」
「俺は一度も聞いた事ないぞ」
「いやそもそも、伝承では勇者は2人だったはずだが?」
「ハズレだったんじゃないか?」
「それもそうだ。俺達よりもおっさんだぞ?」
周りの小言が耳に痛い。
俺だってガッカリしているさ。昔読んだ漫画の主人公に俺だってなれるかも、なんてお前らに言われなくても少しは考えたさ。
「さてさて勇者様方にはこの世界のことと、これからについてお話があります。まずは休息とってくだされ。大臣。2人を。」
王がそう言うと若者2人が連れて行かれる。
「あ、あのー王様?。俺は?」
「忘れとったは。お主は見るからに勇者ではないだろ。帰っていいいぞ」
「先ほど帰還のゲートの話をしていたじゃないですか…」
「そーだったの。だが帰還のゲートを使えるのは勇者のみ。お主は勇者では無いのじゃろ?」
「そんな…じゃあ!どうしたらいいんですか!」
「ええい!うるさい!もう出ていくが良い!兵よ、奴をつまみだせ!」
「待ってくれよ!俺はどうやって過ごしたら……」
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問答無用に追い出された。
「おいおい、本当にどうしろって言うんだ…」
ステータスを何度見てもパッとしない。酒聖なんて一体なんなんだ?酒の聖なんて…
街の中をひたすら探索することにした。
看板を見ても何を書いているか全くわからない。が、街の人たちが話している言葉はわかるのは唯一の救いだろう。
外国に地に言葉もわからず放置されるのは辛すぎるからな。この状況でもだいぶ辛いが。
半日ほど街中を歩いたが、なんの状況の変化もない。
お金なんて持っていないからしょうがない。
暗くなる前に街の外も見ることにしよう。
近くには草原と背の高い木々が並ぶ森があった。
森に木の実があることを信じて向かうことにした。
木々が太陽を隠しとても暗い。
木の実どころか食べることができそうな物はどこにもない。
奥に進んでも景色は全く変わらない。
目の前の茂みが大きく揺れた。
「熊じゃないよな…」
現れたのは、ゲームでよく見るゴブリンだ。
俺は素手。ゴブリンは鉈を持っている。
「どう考えてもまずい気が…」
唸りながら近づいてくる。
街の方へダッシュした。こんなにも全力で走ったのは何年振りだろうか。
何とか捕まらず帰ってこれた。
「なんでこんな目に…腹へったな…喉も乾いた…」
蛇口どころか休めそうな公園なんて見つからない。
「あのー。大丈夫ですか?」
綺麗な金髪のシスターが話しかけてきた。