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第七話 新参者

「あー狩魔が棲蝋泣かせたー」

不意に乱屠の声が背中から聞こえた。驚いて振り向くと何やら大量の荷物を軽々しく背負って立つ乱屠の姿があった。

「なっ...!」

「まだ班も決めてない下っ端が班長泣かすのはどうなんだー?礼儀がなってないなーぁ?」

その言葉に反して乱屠の目はこの状況を楽しむかのようにニヤニヤと笑っていた。

「い...いや!俺が泣かせたわけじゃ...いや俺のせいではあるのかもだけど...」

狩魔は必死に言い訳をした。必死な狩魔に反して乱屠は意地悪くさらに口角をゆがめる。

「狩魔のせいじゃねーか。なんだぁ?この期に及んで言い訳ー?とんでもない新人だなー」

「はぁー?てか何勝手に名前呼び捨てしてんだよそんなに仲良くなった覚えはないぞ」

「いいじゃんかー、しゅーさんに「仲良くしろ」って言われてんだしー、な?これからはお互い名前で呼び合おうよ?あ、さん付けしろよ?」

「絶対やだね。...まぁ乱屠で呼ぶぐらいはしてやんよ」

「敬えよ先輩を!」

「敬わねーよ人殺しクソガキが!理屈は理解はしたけど納得はしてねーかんな?」

病棟の鬼達は我を忘れて大声で暴言を吐きまくる二人を注目し始めていた。視線が二人と棲蝋に降りかかる。

「お...落ち着け二人共。かなり目立ってるぞ」

集まる視線に感傷の涙が引っ込んだ棲蝋が未だ喧嘩中の狩魔と乱屠を仲裁する。二人は周りを見渡した後、ばつの悪そうな顔でおとなしくなった。

「...さて、大体は話したから後は手合わせしてから色々決めようか」

棲蝋は背中に背負う剣を撫でて微笑んだ。


「あの...ここどこですか?」

三人は屋敷の前に立っていた。老舗の旅館の様な佇まいの屋敷はどこかしら不気味なオーラを放っている。門の前に立つ門番の鬼は現れた三人に一瞬の警戒を示すものの、すぐに溌溂とした笑みに変わり「棲蝋さんと乱屠でしたか!おかえりなさい!」と門を開けた。その鬼は青い怪物の様な口で耳元まで裂けていた。笑うと鋭利な歯がきらりとこちらを覗く。

「やっ、もしかしてそちらの青年は新しい神従鬼メンバーですか!ここに連れてきたという事は我が班への新参者ですかな?」

と狩魔をジロジロと見る。温和な眉と目とは対照的に青黒く光る二本の角とヴェノムの様な口が狩魔に本能的な威圧感を覚えさせる。よく見ると青く分厚い皮膚は首筋を通り左手まで浸食していた。狩魔は笑顔を保つよう心掛けるがどうしてもぎこちないものになってしまう。

「顎兜、狩魔怖がってるよ。いつも来た人怖がらせちゃうんだからー気を付けなよ」

乱屠が興奮状態の顎兜を窘める。顎兜ははっとしてすぐさま離れる。

「ははっ。怖がらせたな!気にすんなよ!いつもの事でもう慣れてる!こんな顔して子供好きだからな、毎回小鬼を泣かせてしまうんだわ!」

がっはっはと顎兜は豪快に笑う。その声量は中々の大きさで、近くで安寧の時を過ごす鳥達を一斉に飛ばしてしまうほどだった。

「...相変わらず凄い肺活量だな顎兜は。あぁ、後こいつは狩魔。まだこの班の新参者と決まったわけじゃないんだ。これから道場で簡単な手合わせをする」

顎兜はますますニッコリと笑う。

「ほう、それは楽しみですなぁ!おい、狩魔だっけか!頑張れよ!棲蝋さんは見た目に反してかなり訓練でも滅茶苦茶しごくからなぁ!がっはっは!」

「いっつも気だるそうなのに訓練の時の棲蝋さん生き生きしてるからなー。俺らいじめるの楽しんでんのかなと思うくらいにねー」

 乱屠と顎兜は笑い合う。苦笑いを浮かべる棲蝋の事が急に恐ろしくなってきた。乱屠との戦闘でもまだ神力を使ったことなかったとはいえボコボコにされていたのに恐らくそれよりも強い棲蝋は何の神力を持っているのだろうか。

 その時不意に棲蝋と乱屠の顔が曇る。そして同じ方向を見たかと思うと、いきなり棲蝋が「顎兜!」と叫んだ。その声色は今までと違う気迫に満ちているものだった。

「おぉ気付かなかった!じゃあ行きます!」

顎兜が素早く呼応し、息を肺にたっぷり吸い込む。二人が見ていた方向を見ると数十メートルほど前の雑木林に全長三メートルほどの泥の塊の様な怪物が辺りに泥をまき散らし木々をなぎ倒しながらこちらに迫ってきている。

「まさか...これが厄鬼か?!」

狩魔は厄鬼と思われる物体の突然の襲撃に慄いていた。しかし乱屠が「いや」と否定する。

「まさかこいつ......」

何かを察した風な乱屠が呆れたように額を抑える。そして怪物に駆けだした顎兜に指示を飛ばす。

「顎兜ぉーばっちいから止めるだけでいいよー。こいつ多分土鬼の奴だー」

その瞬間、顎兜が怪物に向かって飛び出し拳を突き出す。顎兜は何の躊躇もなく左手を泥の怪物にねじ込んだ。

「暴停ぃぃぃぃ!!」

顎兜が叫ぶと荒れ狂う泥塊は何かに縛られているようにその動きを止めた。怪物はしばらく形を保ったまま固まっていたがやがて魂が抜けたかのようにただの泥となり地面に広がった。

「また土鬼かよぉー。仁鬼も大変だなぁー全く。そろそろ二人で来るぞぉー」

乱屠は地面にできた小山を見ながら笑った。

「また土鬼か...。まぁいい、今日はどうせ狩魔の挨拶回りもしようと思ってたからな。あっちから来てくれるんだから都合良いさ」

棲蝋も呆れた様子で小さく微笑む。混乱している狩魔に顎兜が説明をする。

「狩魔は初めてか!そりゃそうか、はっはっは!俺達神従鬼は基本は班【チーム】と呼ばれる小さい組織を作って任務をするんだけどな!今のバケモンは恐らく坐鬼班の土鬼の神力だ!近くに坐鬼班の事務所があってよく神力を訓練してるみたいなんだがさっきみたいに暴走してよくうちの事務所に謝りにくるんだよ!おっ、噂をすれば来たな!ついでに挨拶しとこうか!よぉ!土鬼、仁鬼!今月4回目だな!」











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