蠱毒
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
なんでも許せる方向けの、ドロっとした小説です。
「過密地帯で良いところは、蠱毒になるところ」
彼女はそう言って、紅茶を飲みながら言った。
彼女は基本的に控え目で、影が薄い。誰かと食事に行った時にも、自ら発言する事はなく、ただ無言で箸を進めているような。兎にも角にも存在感がなく、居ても居なくても同じ様な人だった。
それでも彼女はそれを良しとしている様で、無闇矢鱈に目立つ真似はしなかった。ただある一点を除いて。
「目立つの嫌いな癖に、自らの作品を公表する真似はするんだな。それもコンテスト系統のタグまで付けて」
彼女の趣味は創作である。小説から絵描きに至るまで、一人で黙々と作業出来るのを好む。前は小さな投稿サイトに所属していたが、今は大型サイト。彼女に似合わなさそうな、多くの目に晒されるものだ。あまり目立つのを好まなさそうな、彼女らしからぬ行動だった。
彼女は延々と筆を走らせながら、俺の話を聞き流す。暫く返事はなかった。けれども一区切り着いたのか、漸く顔を上げて此方を見た。大人数に埋もれてしまいそうな、特徴のない顏。けれども目だけがとろりと溶けて、此方を見る。
「矛盾してるって思ってる?」
「あぁ」
「矛盾してないよ。だって蠱毒だもん」
彼女は俺の返答に、表情一つ変えることなくそう言った。それからまた、延々と筆を走らせる。
「だってこんなに大勢多数の中で、高々コンテスト用のタグ付けたって、私の作品、誰も見ないもん。この世界で唯一勝残れるのは、選りすぐりの作品だけ。有象無象はその頂点に座する者の玉座になる」
「……」
想像するのは、数多の屍の山に座した、輝かしい王だった。数多の名もしれない作品を排した中で、全ての視線を総取り出来る唯一の存在。お前はそれになりたくはないのか。
「大型サイトの無名の作家。大都会の凡人。それでいい。誰も彼も他人。私はそれが良い」
「ネットに書いた文字は確かに消えないし、収集なんて付かないよ。でも、それをかき消せしてしまう程、文字に溢れている。まるで蠱毒の様に」
大都会ってね、蠱毒なんですよ。
勝ち抜いた人しか、皆見てくれないんです。
あの場所は確かに温かったけれど、全てが筒抜けでした。
まぁ、今もある意味では同じですね。
思考に制約を掛けます。何時だって。
作家になるつもりも、売れる気もないのに、何故毎日投稿を続けるかって、お思いになれると思うんですけど、
大多数の中で自分がどれくらいか客観的に見る為です。
これで勝ち抜いたら、きっととてもいい物なのだろう。
でもそれは億が一にもありはしない。
どれだけ書こうとも、きっと作家になる事はない。
という思いからです。
そう言った意味で心地が良い。
重たい話になってしまったので、軽い話でも
有象無象という言葉が好きなんですけど、その言葉を知ったのって、小説からなんです。
白蛇の女の子がブチ切れて言い放った台詞。
『有象無象!!』
ギャップで美味しいお米が3杯食えます。