6 まだ早いのは分かってる
少し、誠の昔の回想が入ります。
僕が由美子ちゃんに出会ったのは6歳の時だ。
初めての引っ越し、知らない土地。
不安で仕方なかった俺の前に彼女は現れた----
「誠くん、私由美子って言うの。この街で初めての友達になってくれる?」
「う、…うんっ。あのっ····大きくなったら僕と結婚してください!」
「ん…?結婚…?」
不安が一気に吹き飛んで、ドキドキが止まらなかったのを今でも覚えてる———
一目惚れだったと思う。
いつでも由美子ちゃんが何してるのか気になって、会えた日はその日一日が幸せになる。
小学校に入っても、この気持ちは変わらなかった。
好きって気持ちは誰にも負けない自信があった。
この頃、俺はまだ由美子ちゃんより全然背が低くて。自信なんか持てなくて。
俺の目線が由美子ちゃんに追いついた頃、彼女は社会人になっていた。
中高大と女子校だった頃とは状況が変わってしまった。
(会社には、身近に歳の近い男がいるんだろうな)
身長が高くなっただけではダメだ、まだ早いのも分かってる。それでも———…
ピピピピピ
部屋にアラームが鳴り響く。
(…夢か…起きなきゃ…)
〜〜〜
「いってきます!」
家のドアを開けると、いつも通り、門の前で誠くんが立っていた。
「おはよう、由美子ちゃん」
「おはよ、誠くん」
「由美子ちゃん、今日って何時くらいに仕事終わる?」
「あー、今日は約束があって結構遅くなるんだ」
由美子ちゃんの返答にギクッとした、まさか···。
「もしかして…男の人と食事にいくとか?」
そうだったら、立ち直れない。誠はそう思いながら由美子に問いかけた。
「ち、違うよ、私に彼氏いないの知ってるでしょ?」
「うん…そうだけど…」
「ほらっ!もう学校だよ!今日日直なんでしょ?いってらっしゃい!」
私は納得言っていない様子の誠くんを急かして送り出し、自分も駅に向かって歩みを進めた。
——て、私今否定しちゃったけど、合コン行くって言った方が諦めてくれた…?!あぁ…私ってば何やってるんだろ…。
「 ···· 」
誠は、歩みを止め、由美子の後ろ姿を不安そうに見つめていた。