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4 あれって絶対気にしてるよ

ちょっと長いです。

会社がお昼時間に入ると、同期の女性が声をかけてきた。


「由美子!お昼行こ♪」


「奈々美」


奈々実、彼女は部署が同じということもあり、同期の中でも一番の仲良しだ。


「ねぇ、由美子さ、明日の夜とか暇?」


「暇だけど、どうしたの?」


「聞いて!明日他社の人と合コンなの!うちは既婚者多めで出会いがないでしょー?」


「出会いは欲しいけど……合コンとか行ったことないし不安だなぁ」


「そう言わないでお願い!苦手だと思って誘ってなかったんだけど、1人体調崩して行けそうになくてさ。今別に気になる人もいないでしょ?」



(大好きだよ、俺と付き合ってください)



はっ!いやいやいや、なんで今 誠くんを思い出した?!由美子は脳内の誠くんを必死に追いやった。


「……………、いないけど。」


「なになに今の間は!!まさか、やっぱり告白されたの?!」


「やっぱり?いや、その…」


私はなんだが自分の中でしまっておけなくて、奈々美に誠くんのことを話すことにした。


「えぇ!中学生の子に告白されてる?何その面白い話は!」


「ちょ…!声大きいよ!…小さい頃から知ってる子なんだけどね。最近、付き合ってほしいって言ってきてて」


「そっか。私てっきり……。で?その子のこと、満更でもなかったりして?」


ニヤニヤしながら、奈々美は由美子をからかうように言う。


「ちょっと!中学生だし、ありえないよ」


まぁ、カッコよく成長したな、とは思ったけど。


「ごめんごめん。まぁ、中学生は捕まるから止めときなって」


「なんで私止められてるの?有り得ないって言ったよね?…たぶんね、身近な大人の女性である私に憧れてるだけだと思うの。」


「憧れるって…キミにかい?」


2人で盛り上がっていると、急に私の後ろから男性の声がした。

向かい合って話していたため、その男性の姿を見ることができる奈々美は 少々ポッとした表情になる。


私はこの声を嫌というほど知っている。すぐに誰だか分かり、振り向きながらその男性に返答した。


「…盗み聞きなんて悪趣味ですね、十条とじょうさん」


「君の声がデカイんだろ?」


「そうですか、すみませんね!!」


すぐに憎まれ口ばーっかり!本当にムカつく奴!!年上だし先輩だから強くは言えないのが悔しい。


「———で?君が憧れられてるって聞こえたけど?」


嘲笑しながら問いかけてくる十条とじょうさんにまた更にイラッとする。こんな奴、ちゃんと相手するだけ、無駄なんだから。


「何でもありません。どうぞお気になさらず」


「由美子ったら、中2の男の子にアプローチ受けてるんですって!」


「ちょ、奈々美!」


なるべく私は感情を押し殺し、繕った笑顔で十条とじょうさんにそう返すも、ちょっと湧きだつ奈々美にあっさりネタバレされてしまった。


十条とじょうさんは、切れ長の目で顔も整って短髪のよく似合うイケメンの部類なので、女性社員から人気なのだ。

奈々美もその中の1人。ただ、奈々美は恋愛対象ではなくアイドルみたいな感覚らしい。


なんだ、中学生か……とボソッと十条とじょうさんは呟くと、途端に満面の笑みになった。


「良かったなぁ、君は色気がないから心配してたんだ」


バカにしたように高らかに、はははと笑ってきた。

むっかつくー!

私はカッとなって、相手にするつもりがなかったのに言い返してしまう。


「誠くんは小さい頃から好きだったとか嬉しいこと言ってくれるんですから!色気がないとか失礼なこと言わないんですよ〜?」


「小さい頃?誠くん?……随分親しいんだな。……ま、君のことが魅力的に見えるのも中学生のガキまでってことだな」


腹立つぅぁぁぁ!あぁ言えばこういうとはこの事だわぁぁぁぁ!


「そんなの、分からないですよ!…奈々美、行くわよ合コン!」


「え、ほんと、いいの?」


「合コン…?」


一瞬喜びの表情を浮かべた奈々美は、十条とじょうの反応を見て、すぐに あ、やべっという表情に変わった。


由美子はそんな表情に気づかぬまま、フンッと鼻息荒く十条とじょうの問いに返答してやった。


「そうです、私達明日合コンに行くんです」


「や……、止めとけ止めとけ、君だけ相手されないのがオチだって。」


「ご心配なく。いい報告を差し上げますから」


ちょっと焦った様子の十条に対し、にーっこり笑顔で由美子は返し、そのままその場を離脱した。


「さ、行こ!奈々美」


「う、うん…」


「あっ……、————」


十条さんは何か言いたさげにしていたが、追いかけては来なかった。


「———ねぇ、良かったの?十条さんにあんなこと言って。」


「なんで?いいのよ、ケンカ買ってやっただけだし!いっつも私に突っかかってきてバカにするし、なんなのよまったく!」



でもそれって由美子のこと、気になってるからじゃないの?私、さっき告白されたって聞いたとき、十条さんにかと思ったのよ———


奈々美は喉まででかかっていた言葉を飲み込んだ。いくら、部署の人間の大半が気づいているとはいえ、外野が伝えていいことではないだろう。



「でも十条さんて、社内独身男性の中でも人気じゃない?カッコいいし。」


あとで十条さんに恨まれないように、推しておこう…、奈々美は精一杯のフォローを試みた。


「全然!あんな性根の悪い男!みんな中身を知らないからあぁい言うのよ!」


「あ、そう……由美子が無理なら仕方ないね……」


十条さん、不憫。いや、自業自得か……。奈々美は小さく溜息をついた。

十条要とじょうかなめ26歳


由美子の会社の先輩。

イケメンで気さくな性格で女性社員に人気。

しかし、好きな女性にはからかってしまったり素直になれない。

結果、由美子に嫌われてしまっている(笑)

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