2. ちょ、ちょっと待った!
一瞬思考が停止する。
ん?え?今なんて?彼女がどうとか・・・あ、あぁ言い間違えたのかな?
「彼女ができたの?」
「どうやったらそう解釈できるの?!由美子ちゃんに、俺の彼女になって欲しいって言ったんだよ!」
「え・・・えーと・・・?」
嘘だ・・・え、えー?さっきの大好きって・・・私を異性の女性として好きって意味だったの?
「俺、由美子ちゃんに初めて会った、小さい頃から由美子ちゃんの事が好きだったんだ。でも、まだ小さかったから・・・、だから由美子ちゃんの身長を抜かしたら、由美子ちゃんに告白するって決めてたんだ!」
子供の頃からご近所の、幼馴染から「小さい頃から好きだった」と告白された
―――――そんな、漫画でよくある王道話。
今朝、考えていたことが現に、たった今、起こっているのだ。
まさか、社会人になってから経験することになろうとは・・・、誰が想像できただろうか?
9年前からだから幼馴染ってところは少し違うけれど。
ん?9年前・・・・って——————
「いやいやいやいや!ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ、誠くん!!」
私はふと冷静になって、いや、まぁ、発言と声色は動揺しまくって冷静とは程遠いのだが。
ようやく、「ある問題点」に気づいて、盛大にツッコミを入れた。
「誠くん、貴方まだ14歳でしょうが!!!!!!!!」
—————そう、
私は一瞬学生の頃、夢にまで見たシチュエーションを目の前にして、14歳の子相手に雰囲気に飲み込まれそうになっ・・・・・・
ともかく!
誠くんは9年前の当時の私と同じ14歳、中学2年生なのだ。
未成年だよ、高校生でさえないよ!私····23歳だよ?!
年の差とかの問題じゃない・・・・犯罪になるわ・・・・・!!!!!
私は一気に現実に引き戻された。
「誠くん、落ち着こう?」
「俺はいたって冷静だよ」
「いやいやだって。私9歳も年上よ?」
「年の差なんて関係ないよ、それに由美子ちゃんさっき僕の事大好きって言ってくれたよね、あれは嘘だったの・・・?」
誠くんが潤んだ目でこちらに訴えかけてくる。
「う、嘘じゃないよ。でも!さっきのは家族とかみたいな感覚での好きの方と思って言ったのよ。まさか・・・」
まさかLikeでなくLoveだなんて、14歳の子に言われるなんて誰が想像できるだろうか?
しかも9年前から知ってる男の子に。
「家族・・・・。嫌だよ、僕は家族なんかじゃなくて本当に由美子ちゃんを愛してるんだ!」
「あ、愛·····。
誠くん、ちょ、ちょっと落ち着いて。今はたしかに歳の差なんて関係ない世の中よ?でもその時の年齢ってすごく重要なの。」
「そう、だけど。でも、僕の気持ちは伝えておきたかったんだ。会社には男の人もいるでしょ?いつ先を越されるか分からないし」
「今現在、いい感じになってる人は特に居ないけどね····」
自分で言ってて悲しくなるわ。
···は!いやここはいい感じになってる人がいるって言ったほうがよかったのか?!
「そんなのいつ現れるか分からないじゃん。あと、付き合うのだって、高校を卒業するまではキスまでしかしないようにするし、踏み越えなきゃ良くない?」
「キ····」
いやいやいや、キスまでして我慢できるのか?思春期ボーイが?!無理でしょうよ。いや、てかキスまで想定してるの?恋愛偏差値0の私には刺激強いって————!
「突然、びっくりしたよね、ごめんね。今日は母さんの使いと俺の気持ちを伝えに来ただけだから。じゃあ、お邪魔しました。俺、由美子ちゃんに振り向いてもらえるように頑張るから。」
————パタン
さっきまでの熱意はどこへやら。言うだけ言って急にスッと帰ってしまった。
家族ぐるみの付き合いをしてる以上、誠くんに会う機会は多い。
「私、これからどうすればいいの···」
人生で初めて受けた告白は、なんとも衝撃的なもので···頭の処理が追いつかない私は暫く立ちつくしていたのだった。