表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜色の罪  作者: 小菅銀吉
1/10

序章、或いは破滅の前兆。

「その探偵は、『名探偵』である。」

その探偵にあった人は皆、そう言う。


年齢も、性別すらも不明なその探偵について、わかっていることはただ一つ。


「彼(もしくは彼女)は、()()()推理を外さない」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


窓の外の景色が後ろに流れていく。

俺は、ただぼんやりとそれを眺めていた。

太陽の光が黒いタクシーの車体に跳ね踊る。

開けた窓から春風が入り、俺と、途中から乗ってきた同乗者の少年の髪を揺らした。

誰も、何も、喋らない。タクシーの走る駆動音が車内に虚しく響く。

その時、少年が、イラついた声で俺に言った。

「おじさん、寒いんだけど?」

茶色に染めた髪を弄びながら少年が舌打ちする。

十二、三といったところか。

親に髪を染めるのは反対されなかったのだろうか。

幼い少年の顔立ちに茶髪はアンバランスだ。

「さっさと閉めろよ」

…にしてもコイツ、言葉遣い考えろよ、腹立つな。

「ごめん、今すぐ閉めるよ。」

スイッチを押した。

うぃぃいん、と音を立てて上がっていく窓。

窓と車体で切り取られた景色の中に、チラリと鮮やかな桃色のかたまりが見えた。

「あ。」

と声を上げると、運転手が微笑む。

「あそこですよ。」

少年があっそ、と言ってそっぽを向いた.

俺はそうする代わりにため息をついた。

このタクシーが地獄へ向かっているような気がしてならない。


まあ、実際に向かっているのはただの寂れた山の中の屋敷だが。


はじまりは、祖父の死だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ