作者が見た二つ目の夢のお話
多少は脚色を加えましたが、基本的には夢の内容を言葉にしているだけなのでよく分からない話です。ご了承下さい。
男は閉店後のスーパーに一人でいた。三十代くらいだろうか。疲れ切った顔をしている。彼は一人で片付けをしていた。
彼は不意にそれを見つけた。無色透明なコップだ。何処にでもありそうな見た目だが、説明しようのない独特な雰囲気を感じ取った。ただのコップだとは思えなかった。彼は別段それで何をしようと思ったわけでもなく、ただ好奇心からそれを手に取った。それは蛍光灯の光を涼しげに反射させて光っていた。
彼は手の中でくるくると回転させ、光の反射を楽しんでいたが、それでは物足りなくなった。水を入れて眺めたいと思い、ペットボトルのある場所までそれを持って向かった。あまりにコップをじっと見ていたので、彼は転んでしまった。コップは彼の手を離れて空高く舞い上がり、綺麗な放物線を描いて二リットルのペットボトルの上に口を下にして落下した。
その刹那、逆さになったコップの中になみなみと水が満ちてきた。ペットボトルの水はどんどん減っていく。コップの容積分などとうになくなり、それでも水は減り続け、最後には何も残らなかった。ペットボトルには一滴の水もないどころか、僅かな水分も残らなかった。コップの水も徐々に減っていき、最後には全くの空になった。
「どういうことだ?」
彼は恐る恐るコップを手にした。中を覗いてみると、水気が全くない。彼は不思議に思い、隣にあったペットボトルに手を伸ばした。ペットボトルの上にコップを置いてみた。何事も起きない。
「何だ、気のせいか。」
彼は呟いてみたが、腑に落ちない。先程の状態を思い出し、コップの口にペットボトルを置いた。途端にコップの中には水がなみなみと溢れ出した。先程のように、凄まじい勢いで水が消えていき、二リットルのペットボトルが空になった。相変わらずコップは涼しげに光っている。彼には、コップがまだ水が欲しいと言っているように見えた。
彼は面白くなって、お茶のペットボトルにもコップの口を当ててみた。お茶がコップの中に溢れ出した。どうせ全て廃棄しないといけなかったから、これは楽だ。彼は飲料を全てコップに押し当てた。空になったペットボトルが積み上がる。
彼はふと野菜に目を留めた。コップに野菜を乗せたらどうなるだろう。彼はまだみずみずしいキャベツを手に取った。コップの上に乗せると、透明な液体が溜まり始めた。後にはパサパサになったキャベツが残った。乾燥させたように水気が完全になくなっている。その後も彼は野菜や果物をはじめとして、様々なものを乗せていった。
「どうしよう。もう何もない。」
彼は焦った。コップに水を与え続けなければならない。何故か分からないが彼はそう思っていた。辺りを見渡し、何かないかと探すが、見当たらない。彼はコップを握りしめ、店内を駆け巡った。不安から足がもつれ、手が震え始めた。彼は再び転んだ。
コップは彼の手を離れ、空中で優雅に回転しながら、ゆっくりと落ちて行った。口を下にして、ようやく動きが止まった。そこは彼の首筋だった。あっという間にコップの中に赤々とした液体が満ちてきた。彼はコップを引き剥がそうとするが、出来なかった。やがて、その手は床に落ちた。
暫くしてコップは空になった。それと同時に、コップは床に転がった。ガラスのような、冷たい音がする。コップは床に静止すると、口の方から細かく砂のようになっていき、空中に溶けて消えた。
この夢に至っては教訓めいたものさえない、本当に意味が分からない夢でした。作者は基本的に寝つきがいいので、夢を見ることも稀ですし、内容を鮮明に覚えていることはもっと稀です。これで夢の話は終わります。余談ですが、これらの夢を見た日は一日中頭がボーッとして眠かったです。もう見たくないです。