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「だが断る」


「ここは異世界にいる召喚士たちに召喚獣を派遣する『召喚獣派遣センター』じゃ」

 

 ……そうか! これも面接の1つの課題かなんかなんだ! そうと分かればいっちょ……。

「黙れじじい!」

 よし! 完璧!

「うむ。どうやら君には性的洗脳教育の前に言葉遣いの方から教えねばならんみたいだな」

「言い方を変えてもダメですよじじい」

 あれ? ……これで良かったのかな?

「アリアちゃん。もしかして知らずに来たのかしら?」

「ほぇ?」

 何だろう……お姉さんめっちゃ真剣な顔してわたしの方を見てる。

「じじいが言った事は本当よ。ここはそういう会社なの」

「ほぇ?」

 やばい……意味が分からん。

「いいわ。じゃあアリアちゃん、お姉さんにちょっとついてくれるかな?」

 そう言ってお姉さんはわたしの手を取ってエレベーターの方へ歩き始めた。

 エレベーターの中に入ると、お姉さんは階数のボタンをカチャカチャといじくった後、いきなり現れた鍵穴へ鍵を入れた。

 何これ!? なんかロボットの秘密基地みたい!

 ……だけどエレベーターは一向に動かなくて、故障かなぁと思ったその時、エレベーターのドアが開いた。

「さあ、着いたわよ」

 

 そこには東京ドームよりも遥かに広い巨大なワンルームと見た事もないような生物がいた。

 


 ……気づくとそこはベットの上だった。 

「気づいた?」

「ほぇ? カレンさん?」

「ええ、突然気を失ったから急いで医務室に連れてきたのよ」

 ああ、そうか……あれは夢だったんだ。そうだよね、いくらネトゲのやりすぎだからってあんな夢見るなんてわたしもどうかして――。

「……カレン、その子起きたの?」

「ああ先生、ちょうどいい所に。今さっき起きたばかりで」

 カレンさんの視線の先には幼稚園児くらいの小さな子供がいた。

 さらさらの金髪に、透き通った白い肌、そしてまるで天使のような翼……翼?

「……大丈夫?」

 そう言って天使の女の子はわたしの方にふわふわと飛んでくる。

 ……そうか! 夢だ! これはわたしの夢なんだ!

 夢ならいっその事、抱きしめちゃえ! えい!

「かわいいいいい!」

 抱きしめると、その子の体は思っていたよりとても小さくてそして柔らかくて、ほっぺプニプニで、どうしよ~! この子めちゃ可愛い!

「……離して! 離して!」

「ふはははは! 良いではないか、良いではないか!」

「こら、やめなさい!」

「いたっ!」

 カレンさんに頭を軽く小突かれた。でも……痛いって事はもしかして?

「ゆ、夢じゃないの!?」

「そう。これは現実よ」 

 げ、現実!? こんな可愛い天使がいる世界が!?

「分かったらミカエル先生に謝りなさい」

 さっきまで手元にいた天使の女の子はいつの間にかカレンさんの後ろで隠れていた。

「ご、ごめんなさい」

 よく分からないけど、とりあえず。

「ミカエル先生、この子は新人さんでまだよく知らないの。許してくれるかしら?」

「……うん」

 すると、天使の女の子ミカエル先生はふわふわとまたこっちに飛んできた。

「……あなた名前は?」

 心なしか、さっきよりちょっと距離が遠い。

「アリア! アリア=ハーメンツです!」

「……私はミカエル。見ての通り天使です。ここで皆さんの怪我を治したりしてます……よろしくアリア」

 照れているのかミカエル先生はちょっと頬を赤く染めていた。

 めちゃ可愛い!

「ミカエル先生は人間でいうとアリアちゃんくらいの年なの。仲良くしてあげてね」

 こんなちっさいのに!? 大人になってもわたしより小さいのかな?

「じゃあミカエルちゃんって呼んでもいいかな?」

 ちょっといきなりすぎたかな?

 だけどミカエル先生はわたしの提案に無言で首を縦に振ってくれた。

「やったー! これからよろしくねミカエルちゃん!」

「……うん。アリア」

 やった! リアルで始めての友達かもしれない! ……これって、リアル……だよね。

「それじゃあアリアちゃん、そろそろお仕事にいきましょうか」

「は、はい!」

 そうだ、忘れてた。わたし仕事しにきてたんだった。

 名残惜しみながらも、医務室を出てさっきの大きな空間に戻ると、真ん中に小さく受付がポツンとあることが分かった。

「あれ……ですか?」

「そうよ。あれがあなたの仕事場よ」

 近づくと、パソコンが1台と、資料がいっぱいあって、1階の受付とよく似ている事が分かった。

「あなたの仕事はここに来る召喚獣の方たちの案内をする事よ」

「ほぇ? あ、案内?」

「あれを見て」

 カレンさんが指差す方を見るとそこには「1番」と書かれた巨大なドアがあった。

 よく見渡すと2番や3番もある。

「あれが異世界へと繋がっているゲート。1番から10番まであるわ」

「そ、そんなに!?」

「もっとあるわよ。だけど私たちが担当するのはこれくらいね」

 私たちっていうことは、ここの他にも会社があるんだろうか?

「それじゃあ、1つ1つ説明していくわね。分からないところがあったら訊いてくれてかまわないから」

「は、はい!」

 それからわたしはカレンさんに仕事の基本的なことを教わった。

 カレンさんから渡されたマニュアルにはこんな事が書いてあった。


 

 その1   

 パソコンに送られてくるデータを元にその召喚獣さんがどこに向かえばいいのか案内する。

 その2

 召喚獣さんからの出発連絡と到着連絡を受け、それをパソコンに打ち込んでいく。

 その3

 召喚獣さんが戻ってきたら、勤務時間や休憩時間、残業があるようなら残業時間も詳しく聞きデータを打ち込む。

 その4

 社員は社長に対して『ご主人様』と呼び、忠実に仕える事。



「あっ、4は無視していいからね」

 慣れた様子でカレンさんがそう言った。何でじじいが社長なんだろうか? カレンさんがやればいいのに。

「それじゃあ何か質問はあるかな?」

 えっと……多分……。

「大丈夫です」

「まあ、わからない事があったらいつでも聞いてね。内線の3番を押せば私に繋がるから」

「は、はい! ……って、ほぇ!? ここわたし1人でやるんですか!?」

「そうよ。 私は会社の経営とか営業とか事務とかやらなきゃいけないから」

 それってほとんど全部なんじゃ……。

「じじ……社長は何やってるんですか?」

「あれの事は忘れてかまわないわ。役立たずのゴミだから」

 じじいはとうとう生き物扱いされなくなりました。

「社長って仕事出来ないんですか?」

「いえ、ここを建てたのも実質社長1人の力だし、正直仕事はかなり出来る人よ」

「なら、何でしないんですか?」

「私も一度聞いてみたのよ? 『社長どうしていつもカスみたいな生活を送ってるんですか? たまには仕事手伝ってくださいよ』って」

「社長は何て答えたんですか?」

「そしたらね『だが断る』ですって。むかついたから社長のHなビデオを全部チンパンジーの交尾特集に変えてあげたわ」

 なんか社長がちょっとだけかわいそうに思えた。フリスク1粒くらいちょっとだけだけど。

「それじゃあ私はそろそろ戻らないといけないから」    

 そう言ってカレンさんは足早に戻っていった。

 これからわたし……どうしよう?

 

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