社長と書いてじじいと読む
それからしばらく経つと社長が奥からスーツ姿でやってきた。
「座りたまえ」
社長がソファーに座ったところを見ると多分、わたしにもソファーに座れと言ってるんだろう。
「し、失礼する」
「違う!」
えっ!? 何? 何!? わたしなんか変な事言ったの!?
「君の席はここだ」
そう言って社長は自分のひざをトントンと叩いた。
「じじい、テメーの席はここだ」
お姉さんがハイヒールで地面を床を2回叩くと、社長はそこに座るどころか這いつくばった。
なんか社長……(じじいでいいかな)なんかじじいの顔が赤い。喜んでるみたい……。キモい。
「それじゃあ、面接を始めようか」
じじいは体制を変えることなくそう言った。
……っていうか。
「めんせつ~!?」
ええっ!? 聞いてない聞いてないよお母さん!
「そんなに緊張しなくてもいい。ワシの個人的な趣味だから」
「ほぇ?」
「まず最初の質問だ」
「は、はい」
「君は攻めと受けどちらかね?」
「答えなくていいのよ?」
そう言いながらお姉さんが笑顔でじじいをハイヒールの踵でグリグリしてる。
どうやらお姉さんは攻めらしい。
「つ、次の質問だ」
「はい」
なんかこの雰囲気にも慣れてきたかな?
「君の長所と短所を教えてくれたまえ」
うわー! なんか、いきなり普通の質問だ!
どうしよう……わ、わたしの長所!? え、えっと。
「ち、長所は睡眠時間です! 1日12時間は普通です。短所は……友達の数です! あっ、だけどネトゲの中では結構人気者です!」
よし! 完璧!
「うむ。君には調教よりも先に、義務教育をせねばならんみたいだな」
「調教はいつまでたってもいりませんよ?」
「カ、カレン君! もうちょっと強く……」
面接って初めてだけど、結構楽しいなぁ。なんで皆嫌がるんだろう? わからん。
「うおおおおおお! そうだカレン君……」
「じじいは無視して私から質問させてもらってもいいかな?」
「は、はい」
「それじゃあ遅くなったけど、軽く自己紹介をしてもらっていいかな?」
「はい! ア、アリア=ハーメンツ19才です! 趣味は……読書。好きなものは自分の部屋で、嫌いなものはそれ以外です!」
よし! 完璧!
「よく出来ました! 後で私がいっぱいナデナデしてあげるわね」
「わーい……って私そんなに子供じゃないですよ……」
「ナデナデ嫌い?」
「嫌い……じゃないですけど……」
だけど19にもなってナデナデなんて……。
「じゃあいいじゃない。社会ではよくあることよ」
そ、そうなのかな!? よく分かんないけど……お姉さんが言ってるんだからきっと、本当なんだろう。
「わ、わかりました! そう言えばお姉さんの名前って何ていうんですか?」
確か本で名前を聞かれたら聞き返すって書いてあったし、間違っては無いはず!
「カレンよ。姫路カレン」
なんか、めっちゃ似合ってる! やっぱお姉さん……じゃなかった、カレンさん可愛い!
「その他に何か質問はある?」
「ほぇ!? えっと……そうだ! そういえばここって何やる所なんですか?」
「何だ? 知らなかったのかね?」
さっきまで黙っていたじじいがまた喋りだした。
「ここはワシのハーレムじゃ」
「真面目に答えろ家畜。」
じじいが家畜にレベルアップした。でもさすがに家畜とは呼べない……。
まあでも、こんなじじいが社長なくらいだからどうせ大した会社じゃ――。
「ここは異世界にいる召喚士達に召喚獣たちを派遣する『召喚獣派遣センター』じゃ」
…………いくら待ってもカレンさんがじじいに突っこむことは無かった。