わたし<越えられない壁<ドラゴン
エレベーターを降りて、一本道の廊下を歩くと社長室の扉があった。
えっと、確か扉を軽くノックして……。
「し、失礼する!」
よしっ! 完璧!
「……入りたまえ」
社長らしき人の声を聞いたわたしは思い扉を開けて中に入った。
部屋の中には、真っ黒の長いソファーや、部屋の奥にある社長デスク! そして壁一面の窓! そしてその窓の前に後ろ向きで立っている白髪でちょっと太ってる……全裸の社長!?
……えっと、ここを押せば電源が入るのかな?
「失礼する!」
「ぬおおおおお!?」
わたしの投げたスタンガンは社長(?)の背中に当たり、社長は全身を震わせながら倒れた。
よし! 完璧!
「それより……」
これからどうしよう!? わたしクビ!? どうしよ~!
「お姉さーん!」
結局、どうにもならないと思ったわたしは泣きじゃくりながらお姉さんのところに戻ってきた。
「待ってて、もうちょっとで終わるから……」
「うわああああん!」
お姉さん、そりゃないよ! そりゃないよー!!
それから5分後、お姉さんはやっとパソコンから目を離した。
「……はい。終わったわ。どうしたの?」
「し、社長が、裸で、お尻汚くて……怖くてスタンガン投げたら、社長倒れて……怖くてそれで」
「もういいわ。大体分かったから」
そう言うとお姉さんは席を立ち、私の手を取ってエレベーターの方へと向かった。
「変な事された?」
エレベーターの中でお姉さんはそう聞いてきた。相変わらず手は握ったまんまだ。
「い、いえ変なものを見ただけでそれ以外は……」
「そう。……社長命拾いしましたね」
隣でお姉さんがなんか呟いたけど声が小さくて全然聞こえない。
エレベーターを降りて社長室に行くとそこにはさっきまでと同じような社長の姿があった。
戸惑うわたしを無視して、お姉さんは社長に近づいていき。
――社長の背中をヒールの踵で踏み始めた。
「起きろ」
その言葉に反応した社長はいきなり目を覚まし、元気よく飛び上がった。
「カレンちゃーん!」
「きゃあああああああ!」
悲鳴を上げたのはお姉さんではなくわたし。
だって! 黒いのが! なんかもじゃもじゃの黒いのが! いやあああああああ!
「お姉さん! おねえさあああん!」
「服着ろ」
「はーい!」
いやああああ! もうやだ! 帰る帰る!
あれ? 何だろうこの感触?
「大丈夫だから落ち着いて」
「お姉さん?」
見上げるとお姉さんの顔がすごく近くにあって、その気時、わたしは自分がお姉さんに抱きしめられてるという状況を理解できた。
お姉さん、めちゃ胸でかい……。
「……落ち着いた?」
「は、はい」
そう言ったのに、お姉さんは何故かわたしを離さず抱きしめたまま動かない。
きっとわたしが無理をしてると思ってるんだろう。お姉さんは優しいなー。
「……今日からアリアちゃんはわたしのもの」
なんかお姉さんが呟いたけど声がちっちゃくて聞こえなかった。