プロローグ
処女作
プロローグ
唐突ですが皆さんは、ある有名な額に傷があるメガネの魔法使いの映画は見たことかもあるだろうか?その映画では主人公が柱に向かって突き進むと魔法の駅のホームにたどり着いてしまうシーンがある。
物理学では極わずかな限りなく低い確率で、柱の分子と分子の間をすり抜けてぶつからずに通り抜けることができてしまうというらしい。映画ではその確率を魔法で操って駅のホームに迎え入れるらしい。漫画で聞いた話だけど。
だけども今現在、自分が置かれている状況については物理学では到底説明がつかないだろう。
俺は6時間の勤務をこなし、22時にバイトが終わって帰路についていた。バイト先と借り部屋まで10分少々しかかからないので位置情報ゲームをしながら歩いて帰るのだ。イケナイイケナイとは分かっていても、ついついスマホを見ながら歩いていた。そしたら案の定、俺は電柱に頭突きをかますような滑稽なことになった。
クラっときて、目の中で火花がチカチカと光るが、人が見ていたら小っ恥ずかしいのでササッと起き上がり、衝撃で落としたであろうスマホを探す。
しかしおかしい、歩道を歩いていたはずだが見えるのはか乾いた土。さっきまで持ってたはずのスマホの光も見当たらない。当たり前に聞こえていた車の喧騒や、街頭の光さえ周りから消えて、白く淡い月明かりだけが当たりを照らしていた。
人は本能的に暗闇を怖がる。何もいないと分かっていても自然と不安を感じてしまうのだ。にもかかわらず、明らかに異常な状況、頭の鈍痛、突然のことに頭が一時停止してしまっていた。
呆然としていると遠くから光が近づいてきた。その光は揺らめきながら少しずつ大きくなっていき、俺の方へ近づいてきている。不安と恐怖で冷や汗をじっとりとかいて、震えることしかできない。
やがて足音が聞こえてきて、松明の火の光が男の人の姿をゆっくりと映し出して目の前で止まった。
「くぁwせdrftgyふじこlp」
・・・なんて?
文字では表しきれないのでこのように表記しておく。
「くぁwせdrftgyふじこlp?」
ポカンとしてると、また何か言われたが聞き取れなかった。辛うじて分かるのは語尾が上がってるところから何か質問されたのだろうと思うが、何語なのかも分からない。まぁ俺は英語すら怪しいが。
一応こちらからも質問をしてみる。
「あのぉ・・・ここは一体どこなんでしょうか?」
我ながらなんの脈絡もなくて答えづらい質問だと思うが、今はこれしか聞こうと思わなかった。
すると男もポカンとして、耳をこちらに向けてきた。やはりあちらも日本語が聞き取れないらしい。
しばらく意味の無い問答をお互いに投げかけていたが、男は何かに気づいて辺りを散策し始めた。
すると私の1、2m後ろで本のようなもの拾って持ってきた。
その本は革の表紙に細かい金の装飾が施されたいかにも高価そうで、表紙には読めない字でなにやら書いてある。最初の数ページを開いて目次を探してみる。すると、何行にも連なり数ページに渡るほどの目次らしきものがあり、1行だけ日本語で「・日本人へ 168p」と書かれているのを見つけた。知らないことだらけの現状に男の存在も忘れ、指定されたページを慌てて開く。
異世界語録
この本は異世界転移者に即座に異世界の言葉の知識、識字をさずける世界の理が授ける翻訳本なり。この本は1度しか渡すことが出来ないため盗難、紛失には十分に注意すること。
使用方法は、この本を自らの手で燃やすこと。途中で火を消すようなことあれば、記憶に甚大な障害を残すことになるので絶対に完全に燃やしきること。この本は※※※さん、あなた専用の翻訳本なので譲渡や売却は出来ません。あらかじめご了承ください。
おわり
・・・簡潔に必要なことだけ書きましたって感じの文章があり、もう次のページから他の言語らしきもので同じ説明が書いてあるのだろうと推測できる。
そばにいた男からゼスチャーで松明を借り、早速燃やしてみることにした。どうやらこの男はこの本がどういうものでなんなのか理解している様子で、目をキラキラと輝かせて俺の様子を伺っていた。
本を草のない道の地面に起き、本の端から火をつけてみる。すると本はメラメラと激しく燃えると同時に、頭がぼんやりし、立つのも困難でそのまま座り込んでしまった。本はものの数十秒で燃え尽きてしまって、頭の違和感もそれと同時に綺麗さっぱりとなくなってしまっていた。
しかし翻訳本だから本を焼くのか、これを考えたやつはきっと暇だったのだろう。
完全に焼けきるのを見守ると男が話しかけてきた
「翻訳本を燃やす現場なんてそうそう見れるもんじゃないから得したわ!あ、俺の言葉分かるかね?」
男はにこやかに俺に話しかけてきた。
この男、結構気さくに話しかけてくれていた。聞いたことない言葉なのにどうやって発音すれば良いのか、文字にすればどのように書くのか分かってしまう、なんとも不思議な感覚だ。
「はい、分かります。どうも本を見つけてくれてありがとうございました」
深々と頭を下げて感謝の意を表明する。何せこの人がいなければ本に気づかずに、月明かりの下さまよい歩くことになったであろうからだ。
しかしまだ謎は多く残っている。何故俺はこの世界に突拍子もなく飛ばされてしまったのか。何故服や身につけている物も一緒に来ているのか。翻訳本の原理。etc・・・
どうにも腑に落ちないが考えても仕方がない。
「知らない言葉に見慣れない服装。転移者にあったのは初めてだからまだドキドキしてるよ。この世界に来たばかりなら不安かもしれないがとりあえず、俺が目指してる街まで一緒に来ればいい」
この男かなり親切だ。道を聞かれたら目的地まで一緒に来てくれるようなタイプだ。行くあてもないし、騙されても仕方ない。ついて行くしか道は無さそう。もう暗いし。
こうして、偶然知り合ってしまった男こと、「ケンジ ナカシマ」。異世界転移者と出会ってしまった彼の人生がここから大きく変わることになるとは本人も転移した※※※もまだ知る由もなかったのだ。
設定は色々ねってメモしていってます。拙いながらも地道に頑張ろうと思ってますのでよろしくお願いいたします。